著者
中村 真紀 坂田 裕介 小林 秀行 加藤 憲 山上 潤一 米本 倉基
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.106-115, 2021-01-25 (Released:2021-01-26)
参考文献数
7

臨床検査部門のトップマネージャーが,どのような管理職行動をすれば,部下の職務満足度を向上させるかについての科学的な研究はこれまでなされておらず,その手段は他職種のプログラムに依存しているところが大きい。そこで本研究は現場の臨床検査技師長など部門のトップマネージャーの行動が部下の職場満足度に与える影響や,部下が求める優れた管理職行動の特性を科学的に明らかにすることでこれからのマネジメント教育の指標を得ることを目的とした。方法は難波らの先行研究を引用し,管理職行動24項目,職務満足度26項目,性別等の属性を含む計69項目を150名の臨床検査技師を対象にWEBで調査を行い,得られた回答から管理職行動と職務満足度のデータを得点化し分析を行った。その結果,トップマネージャーの管理職行動が部下の職務満足度に与える影響は極めて大きく,臨床検査技師におけるトップマネージャーへのマネジメント教育の必要性が確認できた。また,管理職行動には「キャリア重視」と「働きやすさ重視」の2つの重要な役割行動があり,そのどちらかが欠けると部下の職務不満足は改善されないことが示唆された。とりわけ,トップマネージャーにおいては,性差を問わず若年層が働きやすい職場環境の充実と,役職者に対して職場の良好な人間関係構築のための配慮を同時に遂行することが重要であり,この両者からの期待役割に対してバランスよく応えられるマネジメント教育が必要と考えられる。
著者
高見 千由里 加藤 正樹 松田 佳恵 加藤 喜隆 山上 潤一 早川 美和子 才藤 栄一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】当院は急性期医療を担う大学病院であり,重症例やハイリスク症例にも早期からリハビリテーション(以下リハビリ)を介入し,療法士は適切で万全なリスク管理が求められている。当院リハビリ部ではリハビリ時における事故発生状況について定期調査をおこなっており,今回我々は2009年~2013年度の事故発生状況,中でも転倒事故に着目し,当院におけるリスクマネジメントへの取り組みも含めて検討したので報告する。【方法】2009年4月1日から2013年3月31日の5年間に当院療法士が提出した事故報告書を基にリハビリ中に発生した事故314件を比較検討した。年間単位数から1単位あたりの事故発生率を求め標準化した。調査項目は事故報告書から転倒事故について発生時の動作,介助レベル,場所を抽出し年毎に比較検討を行った。また当院リハビリ室には2012年から安全懸架(Safety Suspension,以下SS)と位置づけられた懸垂装置を導入している。SSは患者の体幹に装着したハーネスと天井のレールにつながる懸垂装置である。今回,SSについての意識調査アンケートを部内療法士対象に実施した。【結果】事故件数及び1単位あたりの発生率は2009年度78件(0.038%),2010年度75件(0.034%),2011年度58件(0.025%),2012年度44件(0.018%),2013年度59件(0.020%)であった。事故のうち転倒は2009年度27件(34.6%),2010年度21件(28.0%),2011年度25件(43.1%),2012年度12件(27.3%),2013年度8件(13.6%)と低下を認めた。転倒事故において5年間合計件数の多い順に動作別では1位:歩行(34.1%),2位:立位(14.8%),3位:車椅子座位(12.5%),介助レベル別では1位:近位監視(49.4%),2位:軽介助(21.7%),3位:遠位監視(12.1%),場所別では1位:PT室(32.5%),2位:OT室(21.7%),3位:廊下(15.7%)であった。年度毎の歩行中転倒件数は2009年度9件,2010年度6件,2011年度11件,2012年度1件,2013年度3件であった。近位監視中転倒件数は2009年度10件,2010年度10件,2011年度14件,2012年度5件,2013年度2件であり,それぞれ2012年度から件数の低下を認めた。SSについてのアンケートでは「転倒事故防止を目的に使用している」との答えが61%であり「歩行練習中の事故防止に効果的か?」という質問では「非常に効果的」,「やや効果的」との答えが94%であった。【考察】当院では部内リスクマネージャーと安全管理室が連携し新人研修や部内勉強会においてリスク管理に関する講義を実施している。事故発生時には管理職療法士,リスクマネージャーから担当療法士に対し改善点についての指導,他療法士への周知徹底が行われ再発予防に取り組んでいる。リハビリ部では2012年度PT室にSSを導入しており,必要に応じて転倒防止ベルトの使用も推奨してきた。そのため2012年度から転倒事故件数の減少が認められ立位,歩行練習時にSSを使用することは事故防止に効果的であることが考えられた。アンケート結果でも転倒事故防止を目的にSSを使用しているスタッフが過半数におよんでいた。またSSについて歩行練習中の事故防止に効果的であると答えたスタッフが94%におよび歩行時の転倒事故防止に対するスタッフの意識向上が認められた。しかしSSは使用場所が限られる為,今後病棟や屋外では持ち運び可能な転倒防止ベルトの使用を今まで以上に推奨し,状況に合わせた使い分けをすることで,より安全で適切かつ効果的なリハビリの提供が必要と考える。【理学療法学研究としての意義】本研究では医療安全に関する要因の検討,スタッフの認識が把握できた。リスク管理の教育におけるシステムの構築に非常に有用と考えられる。また当院と同様の急性期医療施設への情報提供となり,今後の積極的かつ安全なリハビリの普及にも有用と考えられる。