著者
安保 正一 山下 弘巳 河崎 真一 市橋 祐一
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.300-310, 1995-09-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

高活性な酸化チタン系触媒を二酸化炭素と水の存在下で光照射すると, 二酸化炭素の還元固定化反応が進行する。粉末酸化チタンやゾル-ゲル法調製Ti/Si複合酸化物を光触媒とした場合には主にメタンが, イオン交換やCVD法調製固定化酸化チタン (担体: 多孔性ガラス, ゼオライト) ではメタン, メタノールおよび一酸化炭素が生成する。反応収率は, 触媒や担体の種類, (水/二酸化炭素) 比, 反応温度などにより著しく変化する。UV, XAFS, ESR, FT-IR, XPSおよびホトルミネッセンスなどの手法で, 触媒の構造と励起状態のキャラクタリゼーションを行ったところ, 高活性な高分散酸化チタン触媒の活性種は孤立状態で存在する四配位酸化チタン種の電荷移動型励起種 (Ti3+-O-)*であることが分かった。また, 反応中間体の検討などから, 酸化チタン系触媒を光触媒とする二酸化炭素の水による固定化は, 二酸化炭素から一酸化炭素さらには炭素ラジカルの生成を経由する反応であると考えられる。
著者
安保 正一 山下 弘巳
出版者
大阪府立大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

色素ロ-ダミンB(RhB)をミクロ孔やメソ孔を有するゼオライト(ZSM-5、MCM-41)に吸着させ、担体の変化に伴うRhBの光物理化学特性の違いについて検討した。RhBの分子径よりも小さい細孔を有するZSM-5ゼオライトに吸着したRhBは蛍光寿命がnsオーダーのものに加え数百psオーダーの蛍光寿命を示し、RhBがゼオライトの外表面に、モノマー種およびダイマー種として存在することが解った。一方、RhBの分子径より大きいメソ細孔を有するゼオライトに吸着したRhBの蛍光寿命はnsオーダーの長い寿命成分のみが観測され、モノマー種のみでダイマー種の存在は見られないことが解った。すなわち、メソ細孔を持つゼオライトを用いて機能性色素を孤立した分布状態で吸着できることが解った。さらに、Ti種が四配位構造で高分散状態で固定化されているTi-MCM-41ではTi種とRhBが相互作用することにより、高い吸着量の範囲まで孤立した分布状態でRhBが存在できることを見出し、光増感型光触媒系の設計に適した反応場を構築できることが解った。また、Ti-MCM-41触媒は光照射下NOを選択性良くN_2とO_2に分解し、主にN_2Oを生成する粉末TiO_2光触媒とは異なった反応性を示した。以上の結果は、RhB-Ti-MCM-41が可視光照射下で機能し、粉末TiO_2光触媒系と全く異なる触媒選択性を有する色素増感光触媒として作用する可能性を強く示唆するもので、新規な光触媒の設計に重要な知見を与えるものである。
著者
山下 弘巳 森 浩亮 桑原 泰隆 亀川 孝
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

ゼオライトやメソポーラスシリカなどのナノ多孔材料を利用して、細孔空間や骨格内に調製したシングルサイト光触媒(孤立四配位酸化物種、光機能性金属錯体)の機能・特性の評価、ナノ多孔材料の構造・形態制御、表面修飾や他の機能性材料との複合化を通して、シングルサイト光触媒を利用する環境調和型機能材料の開発と応用を試みた。平成29年度では、以下の研究を実施した。1)シングルサイト光触媒の特異反応性の評価と可視光応答性の付与: 複数金属元素からなる多核錯体を前駆体とする可視光応答型光触媒の調製を試みた。 2)シングルサイト光触媒を組込んだ三次元ナノ細孔構造とコア・シェル構造の設計: ヨーク・シェル構造の設計に特化し、サイズ制御した細孔をシェル構造に組み込むことを目指した。 3)疎水性多孔体の創製による光触媒の高効率化: ナノ細孔内表面を機能性炭素や酸・塩基官能基で修飾することで、細孔内の疎水性や酸塩基性を制御し、反応基質の吸着濃縮を進め触媒反応の高効率化を目指した。 4)シングルサイト光触媒を利用する金属ナノ触媒・プラズモニック触媒の調製: 貴金属の使用低減を目指した汎用元素を利用するプラズモニック触媒の開発、幅広い波長域の光を効率利用する光触媒系の開発を目指した。 5)コア・シェル構造触媒設計による高効率ワンポット触媒反応系の設計: ヨーク・シェル構造の設計においてシェル内部空間の反応場環境を制御することで、ワンポット触媒反応の高効率化を目指した。 6)ナノ細孔空間で機能する金属錯体シングルサイト光触媒の設計: 励起電子の移動性が高い高表面積多孔性カーボンやC3N4を利用し、多孔担体表面の化学特性が金属錯体に与える影響を検討した。