著者
津田 智史 井上 史雄 高丸 圭一 中西 太郎 山下 暁美 林 青樺 梁 敏鎬 椎名 渉子 斎藤 敬太
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

災害時および防災時にいかなる語彙が必要になるのかの調査を、自治体の防災パンフレットや自治体ホームページ、また「平成28年熊本地震」後の地元新聞紙を対象として実施した。そこから、災害時に必要になる語彙およそ110語を選定した。当初、研究期間内でのデータベース構築を目標としていたが、地震以外の災害語彙についての収集もおこなったこともあり、現在もデータベース構築・公開のための作業を継続中である。
著者
山下 暁美
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

日系ブラジル人就労者日本語上級話者のインタビューの収録結果を、好井裕明ほか(1999)と、BTSJ(宇佐美まゆみ、2007)によって文字化した。ただし、BTSJについては現在まだ分析中である。1.あいづちを、(1)感声的(エー・ソウ)(2)概念的(ホント・ナルホド)(3)あいづち的(アー・ウン・エーソウデスネ)(4)繰り返し、言い換え(5)先取り(6)その他の6分類で分類してみると、日系ブラジル人上級日本語話者のあいづちは「感性的」なあいづちが、母語話者にくらべて倍近くに増える。ただし、あいづちの回数は母語話者にくらべて少ない。なかでもfハイ」「ソウ」「フーン」「エー」がよく用いられる。「あいづち的」は、「アー」系に集中する。「概念的」あいづちは用いられなかった。「言い換え、繰り返し」は、聞き取れないとき、用いられる傾向があり、母語話者と内容がやや異なる。以上から、談話中の聞き役としての役割が十分に機能せず、主張ばかりの話し手という印象が強くなる可能性があるといえる。2.敬語は「デス」「マス」以外の表現が用いられない。初対面で日本語能力があっても、「デス」「マス」なしの頻度が高い。3.特定の表現の頻度が高い。例えば、強調は「すごい」、思い返しのポーズは「やっぱり」、説明したい気持ちは「ですよ」、「ますよ」、あいづちは「ア」系、仲間語「〜ちゃうのね」「〜じゃないですか」、古めかしい言い方「商売(ビジネス)」、「やる(する)」「おやっさん」、崩した言い方「どっか」、「来てた」、「ちっちゃい」、付け加え「〜あと」、理由「どうしてかていうと」などで、表現が限定されパターン化している、などの特徴が認められるが、まだ分析は数値化されていない段階である。以上のような結果が明らかになり、目本語母語話者と日本で社会生活を営む上で、日系ブラジル人上級話者は、さらにコミュニケーション能力を高める必要があると考えられる。特に、聞き手の立場の表現、仲間語と公的な場面での表現の使い分け等に重点をおいて教材を開発する必要がある。
著者
山下 暁美
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

「お」・「ご」の使用、「丁寧語の異なる動詞」の使用とともに「性差」、「年齢」と相関関係が見られないことが明らかになった。いいかえれば、「老若男女」に関係なく、言葉が使われている。しかし、「世代」と「母語」については「丁寧度の異なる動詞」の使用との間に強い相関関係が認められた。「世代」をさかのぼるほど丁寧度の高い表現が選択される傾向がある。戦前の国語教育の歴史が垣間見られる。3世のほうに5段階のぞんざいな表現を使用する傾向が見られる。しかし、ぞんざいな表現を使用するからといって、3世には相手に対する顧慮がないということは言えない。親愛の気持ちを表現している可能性は十分にあり、「ね」の使用が見られる。3世に近づけば近づくほど、階層差をわきまえることより、親愛の関係を協調することが人間関係にとって重要であると認識されているように思われる。「コロニア在住経験のある人」のほうが丁寧な段階の表現を使用している。コロニアにおいては戦前から皇民化教育として国語教育がしっかりと行われていた。家庭内で学習された日本語とコロニア内の学校における国語教育の影響が見られる。両親のどちらかが西日本出身である場合は「レル・ラレル」形の使用率が高い傾向があるが、日系ブラジル人全体としても「レル・ラレル」形は今もよく使われ、共通語家の様子がうかがわれる。西日本、なかでも中国、九州地方を中心とした方言が生きていることからもこのことが裏付けられた。