著者
宮本 聡介
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

研究期間中に行われた調査研究から,以下の点が明らかにされた。友人関係の進展過程においてアメリカ人はその成功を努力によるものだと認知しているのに対して,日本人は友人関係の進展は自然に進行すると認知していた。アメリカ人は友人関係の崩壊は,関係継続の努力をしなかったり,お互いの考え方が違ったからなど,必ず何らかの原因をそこに見出しているが,日本人は関係の崩壊においても,それは自然にそうなったと認知する傾向が強かった。こうした研究の結果から,友人関係の形成に対して,アメリカ人は「友人を作る(make friends)」と認識しているのに対して,日本人は「友人になる(become friend)」と認識していることが明らかにされた。
著者
佐藤 環
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

近世諸藩における弓術師範の養成・登用において,業績主義的要素がいかに投影されたかを実態として明らかにすることが本研究の目的である。弘前藩ではまず藩外から高名な射手を登用し弓術師範となした段階,次にその移入師範の教導により弘前藩士による弓術師範の再生産が可能となった段階,そして全国規模の競射会である「通矢」参加によりそこでの成績が弓術師範任用基準として重視される段階へと進んでいった。水戸藩学弘道館では弓の腕前の試験である「見分」が実施され,業績主義的な教育の制度化が試みられている。
著者
中垣 恒太郎
出版者
常磐大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

Popular Culture Association(Texas/Southwest)にて昨年度末(2007年2月)に行った、研究発表と学会参会による研修成果を軸に一年間の研究活動を展開した。アメリカ合衆国での「リアリティTV/メディア・スタディーズ」に関する最新の研究動向を参照した経験に基づき、日本映像学会第33回全国大会にて、主に「アメリカ合衆国におけるリアリティTVの動向」「日米および世界におけるリアリティTVをめぐる状況の比較考察と展望」にまつわる研究発表、さらに文学・環境学会(ASLE)日韓合同シンポジウム(8月)にて「1960年代以降の日本における公害と怪獣の創造」にまつわる研究発表を行った。共にアメリカ・日本・アジアに及ぶ比較文化的観点から、メディアを中心に時代状況とドキュメンタリー表現の関係について考察した成果であり、本研究課題の最終年度をしめくくるにあたり、3年間の研究成果の一端を具体的なケース・スタディの形で示すことができた。若手研究での研究課題であることからも、研究企画を課題期間終了後も発展継承させていく必要性があるだろう。学会での発表原稿を加筆改稿した上で、主要な学術雑誌への投稿論文としてまとめる機会を持ちたい。ドキュメンタリー作品が虚構性に対して自覚的であることをますます強いられていく状況の中で、「作り物の世界」を現出させるためにドキュメンタリー製作を作中に組み込む「モキュメンタリー」表現のあり方について関心をより一層深めるに至った。近年のドキュメンタリー表現において大きな潮流となっている、「セルフ・カメラ」の手法によるアイデンティティ探求の試みについて、さらに焦点を絞った検討を続けていきたい。研究テーマをより限定した形で、次の研究段階に進む足がかりを築き上げることができたことが、本研究期間の最大の収穫である。
著者
中岡 まり
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、中国共産党が指導する選挙過程と選挙民の投票行動を分析し、選挙制度を通じた共産党統治の変容の可能性を明らかにすることを目的としてきた。研究の結果明らかになったのは、主に以下の3点である。第一に、党の選挙過程に対するコントロールが強化される一方で、選挙により得られる支配の正当性は限定的なものとなる傾向にあること。第二にロジスティック回帰分析の結果、投票者が有権者としての意識を持ち始めていること、第三に党のコントロールが暴力的な形を取り始めたことが示すように、多元化する市民の利益言表出要求に対する共産党の柔軟な適応能力が低下していることである。
著者
中原 史生
出版者
常磐大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ハクジラ類における鳴音の個体群変異を明らかにすること、個体群に特徴的な音響パラメーターの特性を把握することを目的として、北海道室蘭市沖、千葉県銚子沖、東京都小笠原諸島父島周辺海域、アクアワールド茨城県大洗水族館、沖縄美ら海水族館において鳴音調査を行った。野外では鯨類の遭遇頻度が低く、十分な調査を行うことはできなかったが、飼育個体から多くのデータを得ることができた。昨年度までに蓄積したデータにバンドウイルカ、ミナミハンドウイルカ、オキゴンドウ、コビレゴンドウ、マッコウクジラの鳴音データを加えて解析を行ったところ、バンドウイルカ、ミナミハンドウイルカ、コビレゴンドウのホイッスルにおいて個体群間で差異がみられた。判別分析の結果、各種とも70%以上の正答率で判別が可能であった。上記をふまえ、平成15年度に数値解析プログラムMATLABを用いて作成したプロトタイプ鳴音判別プログラムの再検討を行った。鳴音判別プログラムを用いた種判別はかなりの精度で行えるようになったが、個体群判別という点では、まだまだ十分な信頼性を得ることはできなかった。今後さらに判別精度を高めるために、継続して研究を行っていく必要がある。これまでの研究成果について、日本動物行動学会、海洋音響学会「声を利用した海洋生物の音響観測部会」において発表を行った。また、これらの成果はFisheries Science誌、Marine Mammal Science誌へ投稿準備中である。
著者
山下 暁美
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

「お」・「ご」の使用、「丁寧語の異なる動詞」の使用とともに「性差」、「年齢」と相関関係が見られないことが明らかになった。いいかえれば、「老若男女」に関係なく、言葉が使われている。しかし、「世代」と「母語」については「丁寧度の異なる動詞」の使用との間に強い相関関係が認められた。「世代」をさかのぼるほど丁寧度の高い表現が選択される傾向がある。戦前の国語教育の歴史が垣間見られる。3世のほうに5段階のぞんざいな表現を使用する傾向が見られる。しかし、ぞんざいな表現を使用するからといって、3世には相手に対する顧慮がないということは言えない。親愛の気持ちを表現している可能性は十分にあり、「ね」の使用が見られる。3世に近づけば近づくほど、階層差をわきまえることより、親愛の関係を協調することが人間関係にとって重要であると認識されているように思われる。「コロニア在住経験のある人」のほうが丁寧な段階の表現を使用している。コロニアにおいては戦前から皇民化教育として国語教育がしっかりと行われていた。家庭内で学習された日本語とコロニア内の学校における国語教育の影響が見られる。両親のどちらかが西日本出身である場合は「レル・ラレル」形の使用率が高い傾向があるが、日系ブラジル人全体としても「レル・ラレル」形は今もよく使われ、共通語家の様子がうかがわれる。西日本、なかでも中国、九州地方を中心とした方言が生きていることからもこのことが裏付けられた。
著者
松原 哲哉 原田 憲一 椎原 保 中路 正恒 上村 博 水野 哲雄 森田 実穂 曽和 治好 藤村 克裕 坂本 洋三 寺村 幸治
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

芸大と過疎地域の連携を目指す研究メンバーと芸大生が、地域の小中高生用の芸術系総合学習プログラムを作成するため、始原的な創造力を持つ「お窯」の制作やその実際的な活用を含む「ものづくり」の実践を京都市右京区の黒田村で展開。この試行をもとに、過疎地域の潜在的な価値を大学生と地元の子ども達が協働し、4種の「お窯」を使って再発見する「お窯プログラム」を開発。