著者
亀田 豊 山下 洋正 尾崎 正明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.367-374, 2008 (Released:2010-01-09)
参考文献数
27

The occurrence of sixteen synthetic fragrance materials and nine organic UV filters was investigated in influent, effluent, and excess sludge in 47 sewage treatment plants (STPs) in Japan. Their loads into the STPs and into an aquatic environment via STPs were estimated according to their influent and effluent concentrations. Highest loads in influent into the STPs and effluent into the aquatic environment were 1.79 mg · day-1 · inch-1 for homosalate and 0.31 mg · day-1 · inch-1 for ethylhexyl methoxy cinnamate (EHMC), respectively. Removal ratios of the fragrance materials and organic UV filters in the STPs were also calculated. The removal ratios varied markedly among compounds. The minimums of the removal ratios were higher than 90 % for benzyl acetate, methyl dihydrojasmonate, octyl salicylate, homosalate, benzyl salicylate, isoamyl-p-methoxycinnamate, and octocrylene, moreover, the lowest removal ratio was approximately 50 % for EHMC. The removal ratios due to adsorption onto the sludge to the total removal ratio were evaluated from the concentrations of compounds in the return sludge. The highest ratio of the removal due to adsorption onto the sludge to the total removal ratio was 40 % for 1,3,4,6,7,8-hexahydro-4,6,6,7,8,8-hexamethyl-cyclo-penta-[g]-2-benzo-pyrane and 7-acetyl-1,1,3,4,4,6-hexamethyl tetrahydro-naphthalene. Many of the organic UV filters measured were evaluated to be less removed by adsorption because of the markedly higher adsorption to the influent sludge than to the return sludge. Further research on their adsorption and biodegradation in the STPs is required.
著者
對馬 育夫 小越 眞佐司 山下 洋正 原田 一郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.23-28, 2013 (Released:2013-01-10)
参考文献数
7
被引用文献数
8 8

福島第一原子力発電所事故に伴い飛散した放射性物質が,東北·関東を中心とする多くの下水処理施設において検出されている。本研究では,放射性物質により下水汚泥が高濃度に汚染されるメカニズムを解明するため,関東・東北地方の4箇所の下水処理場を対象に,流入状況の調査および各処理過程における放射性核種分析を行った。さらに,放射性物質を含む下水汚泥の埋立処分のための知見を得るため,下水汚泥焼却灰及び溶融スラグについて,溶出試験を行い,放射性セシウムの溶出特性を調査した。その結果,下水処理場内に流入した放射性物質は主に反応槽内において保持されていること,大部分の放射性物質が浮遊物とともに汚泥側に移行していることが示された。また,溶出試験において,本試験に供した12検体のうち9検体については,溶出液の放射性物質は検出限界値以下であり,残り3検体については,溶出率が0.5-2.7%と極めて小さかった。
著者
北村 友一 阿部 翔太 服部 啓太 山下 洋正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_121-III_130, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
22

本研究では,二次処理水を用いてゼブラフィッシュの胚・仔魚期の曝露試験を行い,ふ化率,生存率と網羅的遺伝子発現への影響,さらに,希釈およびオゾン処理による遺伝子発現影響の低減効果を調査した.二次処理水,オゾン処理水の曝露による遺伝子発現への影響レベルは,河川水の同様の曝露結果と比較した.その結果,二次処理水最大濃度(80%)においてもふ化率や生存率に影響は見られなかったが,遺伝子発現への影響は見られた.二次処理水の割合が減少するに従い,発現変動遺伝子数も少なくなることが確認された.二次処理水曝露により免疫,代謝,ストレス応答,シグナル伝達など様々な影響を受けていることが示唆された.二次処理水は10倍希釈,または,オゾン処理により,遺伝子発現への影響を河川水レベルまで低減できることがわかった.
著者
田中 宏明 花本 征也 小川 文章 山下 洋正
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

抗生物質による水環境汚染は、世界的に解決すべき喫緊の課題となっている。我々は抗生物質の自然減衰に対して先駆的に研究を行い、英国テムズ川では、国内河川よりも抗生物質の減衰が大幅に速いこと、金属錯体形成反応や河床間隙水塊との水交換といった日本では観測されない反応や現象が生じていることを見出した。しかし、これらの反応・現象に対する知見はまだほとんどない。そこで本研究では、英国テムズ川を対象とし、現地調査、室内実験、数理モデルを駆使して、ⅰ)金属錯体形成反応を考慮した抗生物質の底質への収着のモデル化、ⅱ)河床間隙水塊を考慮した河川水-底質間の抗生物質の移動現象のモデル化、ⅲ)抗生物質の水環境中濃度予測モデルの構築を実施する。本研究は、新たな反応・現象のモデル化により、化学物質、特に現在、世界的課題となっている抗生物質管理に資する普遍的な環境濃度の予測システムを構築するものである。新型コロナウイルス蔓延のため、英国への渡航ができない状況が続いている。令和3年度は、これまで英国との交流のコアとなってきた、第23回日英内分泌かく乱物質・新興化学物質ワークショップが11月29日-30日にオンラインで開催され、それに参加するとともに、以下の内容を共同発表した。人に投与された医薬品の水圏への排出源は概ね明らかになっているが、家畜に投与された医薬品の水圏流出経路は国や地域によって異なっており、十分な知見は得られていない。そこで、本年度は動物用及び人用医薬品の河川調査を、全国各地の畜産地域において年間を通して実施した。また、昨年度構築した、畜産場・下水処理場・浄化槽を排出源とした医薬品の水圏排出モデルによる河川負荷量の予測値と、現地調査による観測とを比較することで、動物用及び人用医薬品の水圏流出量の予測可能性を評価した。