著者
青山 道彦 吉岡 靖雄 山下 浩平 平 茉由 角田 慎一 東阪 和馬 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

優れた殺菌/抗菌効果を発揮する銀粒子は,粒子径の微小化に伴い,その抗菌活性を飛躍的に向上させることから,既に直径10~100 nmのナノマテリアル(NM),1~10 nmのサブナノマテリアル(sNM)としての応用が急速に進展している。従って,銀微小粒子の安全性担保に向け,物性-動態-安全性の詳細な連関解析によるナノ安全科学研究が急務となっている。特に近年,NMが生体蛋白質と相互作用し,NMを核とした蛋白質の層構造(プロテインコロナ)が形成されることが報告され,NMの動態・安全性を制御する可能性が示されつつある。しかし,粒子径や表面性状といった物性が,プロテインコロナの形成におよぼす影響は未だ不明な点が多い。特にsNMは,当研究室が昨年の本会で報告したように,分子ともNMとも異なる動態・生体影響を示すことから,粒子径の違いがプロテインコロナの形成に影響を与えた可能性が疑われる。そこで,本検討では,物性-プロテインコロナ形成-生体影響の連関解析の第一歩として,粒子径の異なる銀粒子を用いて,血清存在/非存在下における細胞傷害性を比較解析した。ヒト肺胞癌細胞株(A549細胞)に,直径20 nm未満のナノ銀(nAg),直径1 nm未満のサブナノ銀(snAg)を血清存在/非存在下で添加し,細胞傷害性を比較した。その結果,nAgは血清非存在下で高い細胞傷害性を示すものの,血清の添加によって細胞傷害性の低下が認められた。一方で,snAgは血清の有無に関わらず,ほぼ同等の細胞傷害性を示すことが明らかとなった。以上の結果から,sNMの生体影響に対する血清蛋白質の寄与は少ないことが示唆された。今後は,プロテインコロナの観点から,細胞内取り込み効率を含めた解析を進め,本現象のメカニズム解明を図ると共に,本現象が認められるNM/sNMの粒子径の閾値を探索していく予定である。
著者
山下 浩平 吉岡 靖雄 潘 慧燕 小椋 健正 平 茉由 青山 道彦 角田 慎一 中山 博之 藤尾 滋 青島 央江 小久保 研 大島 巧 鍋師 裕美 吉川 友章 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.O-36, 2012 (Released:2012-11-24)

ナノテクノロジーの進歩により、粒子径が100 nm以下に制御されたナノマテリアルが続々と新規開発され、工業品・化粧品・食品など、多くの分野で既に実用化されている。さらに、近年開発されているサブナノ素材(10 nm以下)は、分子とも異なるうえ、ナノマテリアルとも異なる生体内動態や生体影響を示すなど、新たな素材として期待されている。特に医療分野において、ナノ・サブナノ素材を用いた医薬品開発が注目されており、抗炎症作用などの薬理活性を発揮するナノ・サブナノ医薬の開発が世界的に進められている。サブナノ素材の一つであるC60フラーレン(C60)は、ラジカルスポンジとよばれるほどの強い抗酸化作用に起因する抗炎症作用を有するため、炎症性疾患に対する新たな医薬品としての実用化が待望されている。しかし、非侵襲性・汎用性の観点で最も優れた経口投与製剤としてC60を適用した例は無く、医薬品化に必須である安全性情報も乏しいことから、C60の医薬品化は立ち遅れているのが現状である。本観点から我々は、C60の経口サブナノ医薬としての適用に向けて、経口投与時の安全性情報の収集を図った。異なる数の水酸基で修飾された4種類の水酸化C60をマウスに7日間経口投与し、経日的に体重を測定した。また、各臓器・血液を回収し、臓器重量測定・血清生化学的検査・血球検査を実施した。その結果、各種水酸化C60投与群で、マウスの体重、臓器重量に変化は認められず、白血球数などの血球細胞数や、血漿中ALT・AST・BUN値など組織障害マーカーにも大きな変化は認められなかった。以上の結果から、短期間での検討ではあるものの、水酸化C60は、ナノ毒性の懸念が少なく、安全な経口サブナノ医薬となり得る可能性が示された。今後は、腸管吸収性や体内動態を評価するなど、有効かつ安全なナノ・サブナノ素材の開発支援に資する情報集積を推進する予定である。
著者
山下 浩平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

好中球細胞外トラップ(NETs)は好中球の新たな細胞外殺菌機構として生体防御に寄与するが、強い傷害因子を細胞外へ放出するため、血栓症や炎症性・自己免疫性疾患などの病態形成に関与することが報告されている。本研究では主に以下の3点、①NETs形成機構に活性酸素の一種である一重項酸素が重要であること、②同種造血細胞移植後の重篤な合併症の一つである血栓性微小血管障害(TMA)の病態形成にNETsが深く関与し、血清NETs高値がTMA発症の予測因子になりうること、③高濃度の尿酸が活性酸素非依存性にNETs形成を誘導し、NETsが高尿酸血症による心血管障害に関連する可能性があること、を明らかにした。
著者
山下 浩平 緒方 伸哉 島村 徹也
出版者
社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.1246-1257, 2005-11
被引用文献数
11

copyright(c)2005 IEICE許諾番号:07RB0174 http://www.ieice.org/jpn/trans_online/index.html本論文では, 雑音付加音声の雑音低減の手法であるスペクトル引き算法に, 反復処理とそれに適したパラメータ設定を施した, 新しい雑音抑制技術を提案する. 反復処理とは, 一度雑音低減処理を施した推定音声を再度入力信号とみなし, 音声強調処理を施す手段であり, 残留雑音の低減が見込まれる. 反復ごとにパラメータを調整することで, 音声の劣化を抑えた更なる残留雑音低減が可能となる. また, 提案法を実行する際に, スペクトル引き算のもつリアルタイム性を保持する手法も同時に提案する. 2種類の提案法の特性を, 白色雑音, 自動車雑音, 人混み雑音を付加した実音声を用い, 従来のスペクトル引き算法及びその改良法と比較する. 主観評価及び客観評価により, 各提案法はすべての雑音環境に対して優れた結果を示すことが確認された.