著者
堤 聡 木村 秀 松本 大資 古川 尊子 松岡 裕 木原 歩美 浜田 陽子 湯浅 康弘 石倉 久嗣 沖津 宏 阪田 章聖 山下 理子 藤井 義幸
出版者
徳島赤十字病院
雑誌
徳島赤十字病院医学雑誌 = Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal (ISSN:13469878)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.124-127, 2011-03-25

リポイド肺炎は脂肪を貪食したマクロファージが出現する肺炎であるが,一般に無症状であり胸部異常陰影にて偶然見つかることが多い.今回診断に苦慮し胸腔鏡下肺生検にて診断しえたリポイド肺炎を経験したので報告する.症例は79歳,女性.僧房弁狭窄症に対する弁置換術後のフォローアップ中に,胸部X 線像で右中肺野にすりガラス陰影の出現を認めたため当科へ紹介された.明らかな自覚症状や各種検査での異常所見を認めなかったため経過観察としていたが,初診から8カ月後に肺野陰影の増強と拡大を認めたため胸腔鏡下肺生検を施行した.病理組織像では肺胞内に浸出物と泡沫状マクロファージを多数認め,最終的にリポイド肺炎の診断を得た.症状に乏しい胸部異常陰影の鑑別疾患のひとつとしてリポイド肺炎は考慮する必要がある.
著者
勢井 伸幸 松田 優子 妹尾 彰之 岩佐 美沙 西中 和子 森 節子 上西 知加子 仁木 寛 山下 理子 沖津 宏
出版者
徳島赤十字病院
雑誌
徳島赤十字病院医学雑誌 = Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal (ISSN:13469878)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.56-60, 2013-03-25

フィブリンは末梢血を凝固させプラスミンという酵素で分解される.この時生成される老廃物をフィブリン分解産物(FDP)とその分画をD ダイマーという(D ダイマー分画).D ダイマーは深部静脈血栓症の重要な検査項目の一つである.今回われわれはD ダイマー偽高値の1例について文献的考察を加えて報告する.患者は50代男性.右季肋部痛を主訴に当院紹介受診された.近医の画像検査にて肋骨腫瘤,肝臓の多発結節が指摘されていた.内視鏡検査では,直腸に半周性の病変がみられ,病理組織学的に中分化腺癌と診断された.右肋骨腫瘤も組織学的に同様で,肝,肺の多発腫瘤影も直腸癌の転移と推測された.根治手術は不可能と考えられたため化学放射線療法が開始された.2週毎のD ダイマー測定が行われていたが,来院から8週目に凝固検査機器のSysmex CS-2000i にて“AntigenExcess”というエラーメッセージとともに高値再検となり,希釈再検した値はきわめて低値であった.調査結果では,試薬(リアスオート・D ダイマーネオ)と患者血清IgA 間の非特異反応による偽高値が考えられた.
著者
松岡 重信 山下 理子 沖原 謙
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.155-163, 1994-03-31

先報(1991)では,『生涯スポーツ』概念の形成課程を吟味することと,その概念の実質的イメージについて検討した。そして,それらの作業に基づいて,生涯スポーツ概念と学校体育の機能との関係を問題にした。議論の結果,生涯スポーツや生涯体育の概念が活発に議論されて学校の機能・役割との関係も議論された割合には生涯スポーツの実態もイメージも余り明確でなく,従って両者の関係も曖昧モコとしていることが明らかになった。そして,生涯スポーツ運動に連動する形で,中等教育学校で<習熟度別授業>や<選択制履修授業(以下「選択制」と略す)>を積極的に位置づけようとする働きが,理論的にも実質的にも相当不可解なものと理解された。さらに,こうした実態もイメージも不明確な状況でありながら,それでいて体育の教科内容や教科課程にかかわる問題意識は一般にさほど高くない。少なくとも,日本体育学会や日本教科教育学会でみる限り,こうした学校内外の体育・スポーツの将来構想にかかわる問題意識をもつテーマは,一部シンポジウム等を除けば最近の5年間ほとんど設定されていない事実も認められる。そこで,生涯スポーツに関連させようとする学校体育の趨勢,即ち代表的には選択制の導入等は今日的に,かつ将来的にはいかなる意味をもち,学校教育にどのような影響をおよぼすかについて,改めて予測的に検討したい。その際,スポーツや運動は,<国民的教養>あるいは<国民的権利>とさえ把握されようとしてきた思想や社会的運動そして歴史・伝統に,学校体育が現実にどうかかわっていけるのかという視点を軸としたい。
著者
米田 浩平 日浅 芳一 當別當 洋平 馬原 啓太郎 細川 忍 原 朋子 石橋 直子 尾崎 敬治 後藤 哲也 藤井 義幸 山下 理子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.681-686, 2011 (Released:2012-11-07)
参考文献数
11

症例は16歳, 男性. 発熱, 倦怠感と労作時呼吸困難を訴え近医を受診し, 白血球減少を指摘され, 当院血液科へ紹介された. 精査目的に入院したが, 呼吸困難の増悪を認めたため, 循環器科へ紹介された. 心エコーでは右心系の拡大と中等度の肺高血圧を認め, 造影CTを施行したところ両側肺動脈を中心に広範囲に血栓を認め, 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism; PTE)と診断した. 血小板数が54.5万と増加しており,(腫瘍性の)血小板増加もPTEの原因の1つである可能性が考えられた. ウロキナーゼ, ヘパリンを投与し治療を行ったが, 治療開始後にも呼吸困難は継続していた. 白血球減少については骨髄検査を行い, 20%以上の芽球を認めたため, 急性骨髄性白血病(AML with multilineage dysplasia)と診断した. 入院7日目よりIDA+Ara-Cによる寛解導入療法を開始したところ, 症状は軽快し, 心エコー上も右心負荷の改善を認めた. その後, 同種骨髄移植を行い当院血液科外来にてPTEの再発なく経過観察中であったが, 移植後の再発のため2010年3月死亡. 今回, PTEが初発症状の1つとして発症し, その治療として化学療法が奏功した若年者のAMLの1例を経験したので報告する.