著者
山中 遥 中川 浩美 佐々木 芳恵 原田 裕美 梶原 享子 大盛 美紀 津川 和子 横崎 典哉
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.580-584, 2018-07-25 (Released:2018-07-28)
参考文献数
10

乳児期の発症は稀なEvans症候群の1例を経験した。症例は生後5か月の男児。主訴は発熱と嘔吐であった。近医での血液検査で高度の貧血と血小板減少を指摘された。入院時の生化学検査では溶血性貧血を示し,直接・間接クームス試験はいずれも陽性であった。血小板関連免疫グロブリンG(PAIgG)は高値であった。骨髄所見では過形成であったが,骨髄細胞に異形成は認めずmyeloid erythroid ratio(M/E比)は低下しており,巨核球の増加を認めた。本症例では年齢が低く,膠原病や感染症などの自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia; AIHA)および特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura; ITP)をおこす主な基礎疾患があることは否定的であったため,自己免疫性リンパ増殖症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome; ALPS)の検索も行った。しかし,フローサイトメトリー検査や遺伝子検査からALPSは否定された。以上からEvans症候群と診断し,γグロブリン製剤や各種免疫抑制剤併用による治療が継続されている。
著者
妹尾 啓史 増田 曜子 伊藤 英臣 白鳥 豊 大峽 広智 Zhenxing Xu 山中 遥加 石田 敬典 髙野 諒 佐藤 咲良 Shen Weishou
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.60-65, 2021 (Released:2021-10-31)

水田土壌においては,土壌細菌による窒素固定反応が窒素肥沃度維持の基盤となっている。近年我々はオミクス解析に より,水田土壌における窒素固定のキープレーヤーがこれまで見落とされてきた鉄還元菌である可能性を示した。そして, これまで水田土壌からの単離例が皆無で生理性状が不明であった鉄還元菌を単離し,多くの新種/ 新属を提唱するとと もに,単離した菌株の窒素固定活性を実証した。また,鉄還元菌は酸化鉄を電子受容体として生育し,窒素固定を行うこ とも明らかにした。さらに,水田土壌に鉄酸化物を添加することにより,対照区よりも有意に高い窒素固定活性が検出さ れ,同時に鉄還元菌由来の窒素固定遺伝子の転写産物の増加を確認した。圃場試験において,鉄施用区では土壌の窒素固定活性が対照区よりも高まり,窒素施肥量を減らしても水稲収量が維持された。本技術は窒素施肥量を低減し,環境への窒素負荷を軽減する水稲生産技術(低窒素農業)への応用が見込まれる。さらに,窒素肥料製造に伴う二酸化炭素排出量削減ならびに水田土壌からのメタン排出削減にもつながり,「低炭素社会」実現への貢献も期待される。