著者
妹尾 啓史 増田 曜子 伊藤 英臣 白鳥 豊 大峽 広智 Zhenxing Xu 山中 遥加 石田 敬典 髙野 諒 佐藤 咲良 Shen Weishou
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.60-65, 2021 (Released:2021-10-31)

水田土壌においては,土壌細菌による窒素固定反応が窒素肥沃度維持の基盤となっている。近年我々はオミクス解析に より,水田土壌における窒素固定のキープレーヤーがこれまで見落とされてきた鉄還元菌である可能性を示した。そして, これまで水田土壌からの単離例が皆無で生理性状が不明であった鉄還元菌を単離し,多くの新種/ 新属を提唱するとと もに,単離した菌株の窒素固定活性を実証した。また,鉄還元菌は酸化鉄を電子受容体として生育し,窒素固定を行うこ とも明らかにした。さらに,水田土壌に鉄酸化物を添加することにより,対照区よりも有意に高い窒素固定活性が検出さ れ,同時に鉄還元菌由来の窒素固定遺伝子の転写産物の増加を確認した。圃場試験において,鉄施用区では土壌の窒素固定活性が対照区よりも高まり,窒素施肥量を減らしても水稲収量が維持された。本技術は窒素施肥量を低減し,環境への窒素負荷を軽減する水稲生産技術(低窒素農業)への応用が見込まれる。さらに,窒素肥料製造に伴う二酸化炭素排出量削減ならびに水田土壌からのメタン排出削減にもつながり,「低炭素社会」実現への貢献も期待される。
著者
土坂 享成 木村 哲哉 今井 邦雄 妹尾 啓史 田中 晶善 小畑 仁
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.393-398, 1999-11-30
参考文献数
14
被引用文献数
1

前報において,カドミウム解毒に重要な役割を果たすと考えられている(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成酵素の性質について,水稲根を用いて検討したことを報告し,水稲根中で(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gを合成している酵素の少なくとも一部がカルボキシペプチダーゼである可能性を示唆した。これを踏まえ,本研究では各種のカルボキシペプチダーゼに(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成能力があるかを検討した。更に,イネ由来のカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現ベクターに組み込み,これを大腸菌に導入してカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現させ,それにより(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成能力が増大するかを検討した。 その結果,全てのカルボキシペプチダーゼ標品において(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成が認められ,その至適pHはカルボキシペプチダーゼの分解活性のそれとほぼ同じであった。また,その合成活性はカルボキシペプチダーゼの特異的阻害剤により抑制されることが認められた。比較のために行ったアミノペプチダーゼ標品では(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成は認められなかった。一方,カルボキシペプチダーゼ遺伝子を導入した大腸菌の抽出液における(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成活性が,導入していない方よりも増大したことが認められた。これらのことから,カルボキシペプチダーゼが(γ-EC)nGを合成している酵素の一つである可能性が更に強く示唆された。