著者
山口 不二夫
出版者
日本会計史学会
雑誌
会計史学会年報 (ISSN:18844405)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.40, pp.16-31, 2022 (Released:2023-11-04)

本稿は19世紀初頭の東アジアで活躍した英国商人Country Traderの帳簿のデータの検討を行う。前稿で1799年から1814年までの帳簿とそのデータの変化を検討した。本稿は 1815年から1825年までの間の変化の鍵となる1819-20年のLedger, Journal, Cash Bookの構造と, この間の帳簿の変化と盛り込まれたデータの変化さらに経営の変化を明らかにした。本商会では初期にはLedgerのみが残されている。1819年頃までにLedger, Journal, Cash Bookの3帳簿制となり役割が分割された。1799年から1825年にかけて総資本は4.5 倍に増加,出資額は18万ドルから50万4千ドルへ増加する。この期間の平均の出資金利益率は18%程,自己資本比率は2割程で, 総資本利益率は4%程である。収入は当初Interests,Commissions,Factoryが中心であった。すでに1812-13年期にはFactoryを売却し,Raw Silkの取引やOpium取引が主な収入となっていた。これは商会のビジネスが仲介あるいは取引相手に資金を貸出して金利を稼ぐビジネスを基本にしているが,自分でリスクをとって商品を購入販売するビジネスを取り入れたためである。ただ1825年まで棚卸資産の金額はそれほど大きくないので,手数料ビジネスや資金を貸付けるビジネスを基本にしていたと推察する。
著者
山口 不二夫
出版者
日本会計史学会
雑誌
会計史学会年報 (ISSN:18844405)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.39, pp.31-44, 2020 (Released:2022-07-05)

本稿は19世紀初頭の東アジアで活躍した英国商人Country Traderの帳簿のデータの検討を行う。前稿では,すでに1799年の帳簿組織について検討している。本稿は1799年から1814年までのLedgerのなかのデータの変化と帳簿の変化を明らかにする。本商会は4人で始まったpartnership企業であり,最初の2期は剰余金を残さないようにProfit and Loss 勘定のなかで利益をpartner に分配した。ところが業績の低下にともないMagniacが経営に参加する中で,Commissionsやそれにともなって発生したHouse ExpensesをProfit and Loss 勘定に入れる前に分配してしまった。さらにMagniacがpartner に加わってからはLedger が2部作成され,資産負債で構成されたBalance勘定がStock勘定にとって代わり,剰余金が計上されるようになる。また1811-12年期からはJournalも作成されるようになる。最初,このpartnership会社の収入は,Interests,Commissions,Factory からであった。しだいにOpium取引が増加し,1812-13年期にはFactoryを売却し,Raw Silkの取引やOpium取引が主な収入となる。とくに初期にはInterestsで儲ける仕組みになっていたが,1808年以降は金利の支払いのほうが多い期もあった。Commissionsと資金を貸すことでの金利で儲けるビジネスから,実際にOpiumとRaw Silkの取引で儲けるビジネスに変貌しつつあるのである。
著者
山口 由二 山口 不二夫
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

研究調査国内の地方自治体について、自治体財政運営の実態調査ならびに資料収集を実施した。特に10月には財政破綻・財政再建準用団体移行を表明した北海道夕張市を訪れ、経理担当者にインタビューするとともに、市の運営する施設を見学した。この調査に関しては『環境創造第10号』「自治体が財政破綻にいたるまでの分析-赤池町と夕張市の財政分析による比較-」(2007年5月刊行)に論文として公表している。データベースの作成本研究の主要課題であるバランスシートのデータベース化に関しては総務省方式でバランスシートを作成し、公表している44都道府県で完成させた。分析結果このデータベースを活用して、山口不二夫の「総務省方式自治体バランスシートの経営分析方法」で、まとめられている、従来の分析指標、柳田(2004)が提案している総務省方式のバランスシートのもとづく分析指標、山口不二夫ならびに山口由二が新たに提案する分析指標を算出した。この結果については報告書巻末に掲載し、利用可能な状態にある。「格付け」などの評価の作業もこのデータベースと分析結果にから可能であり、利用価値の高いものである。今後、このデータベースを毎年更新して、各自治体の時系列分析も可能となる。最近の動向地方自治体のバランスシート作成状況は2006年公表では都道府県レベルでは100%市町村レベルで52%となり、初めて過半数となりかなり浸透してきている。しかし「第三世代の方式」といえる連結バランスシートの作成に関しては市町村レベルではわずか4.1%にすぎず、データベース化して比較分析できる状態にはない。今後の進展に期待する。