著者
山口 浩和 猪俣 雄太 伊藤 崇之
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.416, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

ショックレスハンマーは打撃時の反動が少なく、また打撃力を効果的に伝達する特性から、クサビ打ち作業における作業者への身体的負担の低減と作業能率の向上が期待される。そこで、一般的に伐倒作業時に用いられているヨキと、ほぼ同じ長さのショックレスハンマーを用いて、クサビ打ち作業を模した打撃試験を行い、それぞれの器具の作業者への衝撃緩和効果と打ち込み効率を比較した。その結果、それぞれの道具を使って同じ仕事をした時に手元に伝わる振動加速度は、ヨキの方がショックレスハンマーよりも1.4倍程度大きく、持ち手が受ける反力は2倍程度大きかった。一方、同じ仕事をした時に加えた運動エネルギーの大きさは、ヨキの方がショックレスハンマーよりも1.7倍程度大きかった。これらの結果から、クサビ打ち込み作業において作業者がショックレスハンマーを使用することにより、腕への衝撃を和らげつつ、打ち込み回数を減少させることができる可能性があることが明らかとなった。
著者
毛綱 昌弘 山口 浩和 佐々木 達也 岡 勝
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.135-140, 2008-12-15

フォワーダ等による作業路を用いた集材方法が普及し始めているが,作業路の総延長距離が伸びるに従い作業能率の低下が問題となっている。この問題を解決する方法として,作業路上を走行している有人の車両の後ろを無人で走行可能な車両が追従して走行することにより,複数台の車両を一人で運転して作業能率を向上させる方法を考案した。本報告では,制御を行うために必要となるセンサを試作し,実験用車両を用いて走行実験を行い,制御結果に影響を与える因子について検討を行った。実験の結果,有人の車両後部に超音波を発するスピーカ,無人の車両前部にマイクをそれぞれ二個ずつ装備することにより,追従走行制御が可能であった。先行する車両と追従する車両の車間距離を大きく設定すると,曲線走行時には内回りが大きくなる一方,車間距離を小さく設定すると,走行速度が大きくなると制御が不安定になるため,車間距離の設定が重要であった。また,作業路の幅員は直線であれば車幅の1.4倍程度でも走行可能であるが,曲線部では1.6倍まで拡幅しなければならないことが確認できた。
著者
中田 知沙 猪俣 雄太 上村 巧 山口 浩和
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.38.29, 2023-01-31 (Released:2023-03-19)
参考文献数
9

本研究はチェーンソーの水平把持に着目し,その精度の現状を把握することを目的とした。また把持高さと地面傾斜による影響を調査した。ガイドバーの長手方向の傾きのズレは,被験者の4割が2°以上で,かかり木や隣接木接触等による労働災害につながる可能性のある水平把持精度であることが分かった。被験者のうち初心者は刃先が下がりやすく,経験者は刃先が上がりやすい傾向が見られた。また,把持高さによる差は見られなかった。グループ間の技能の顕著な差はないと判断できたことから同じ母集団として地面傾斜やチェーンソーの把持姿勢,スロットル操作の指の違いによる影響を調べた。傾斜0°と10°ではガイドバーの傾きが有意に高く,チェーンソーの把持姿勢とスロットル操作の指の違いによる有意差は見られなかった。まずは安全な平坦地で訓練を行うことで,傾斜地でも水平を維持できるようになることが期待された。
著者
鈴木 秀典 岡 勝 山口 浩和 陣川 雅樹
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.153-162, 2010 (Released:2012-12-03)

近年の林業では、経済性や安全性の観点から機械化やそのための路網整備が必要不可欠となっているが、機械作業や路網整備にはエネルギーの使用が不可欠で、これらの機械からは必ず二酸化炭素が排出される。 よって、森林による二酸化炭素吸収量を適正に評価するためには、また、今後の機械化作業や路網整備の方向性を議論するためにも、林業活動に伴う排出量を明らかにする必要がある。 本研究では日本の森林を対象に路網整備過程に着目して、林道、作業道の開設工事において、建設機械の燃料消費による二酸化炭素排出量を算出した。このために、民有林林道では設計書から土工量および燃料消費量を調べた。国有林林道では民有林林道の値からこれらの値を推定した。作業道では既存の調査による土工量および民有林林道の値から燃料消費量を推定した。これらの値と、各年間開設延長から排出量を算出した結果、2007年度の排出量が、民有林林道から48.09ktCO2/年、国有林林道から11.71ktC02/年、民有林作業道から97.64ktCO2/年と算出された。また、森林・林業基本計画(2006)における林道・作業道の整備目標を達成すると、2007年以降、19.11~20.39MtCO2の二酸化炭素が排出されるとの予測結果を得た。
著者
清川 貴志 山口 浩和 照屋 正則 清水 誠一郎 上西 紀夫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1191-1196, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
19

症例は43歳女性.検診で高血圧,貧血を指摘され近医受診しCTでトライツ靭帯の背側に約6cm大の腫瘤を認めた.小腸Gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断され,手術目的に当院紹介となった.しかし問診で労作性の動悸が判明し,高血圧も認めたため内分泌的精査を行ったところノルアドレナリン高値を認めた.またMetaiodobenzylguanidine(MIBG)シンチグラフィーで腫瘍に高濃度集積を認めたため,後腹膜原発paragangliomaと診断し手術を施行した.当症例は画像上ではGISTとの鑑別が困難であったが,術前の問診と内分泌精査により的確に診断することができた.致死的な合併症の可能性を考えると大動脈周囲後腹膜の腫瘍は常にparagangliomaの可能性を考慮すべきと考えられた.