著者
瀧 誠志郎 青木 三六 小路丸 未来 稲田 純次
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.36.151, 2021-07-31 (Released:2021-08-01)
参考文献数
22

非GNSS環境下の森林内で安全にドローンを飛行させることができればSfM(Structure from Motion)により森林内の三次元点群モデルを構築できる可能性があり,森林内調査の簡便化,省力化が期待できる。本研究では,AI搭載型ドローン(Skydio 2)による森林内調査への活用の可能性を明らかにすることを目的に,Skydio 2の森林内飛行の可否評価およびSfM処理による森林内の三次元点群モデルの構築を行った。森林内では,垂れ枝や立木に衝突することなく自動で回避しながら安全に飛行できた。SfM処理の結果,森林内に設置したGCPを使うことで地上解像度が0.0045 mの三次元点群モデルが構築できた。構築した森林内三次元点群モデルの精度は公共測量で定める精度規定を満たすことがわかった。Skydio 2の飛行性能を勘案すると,本研究で実施した林分よりも高密度林分であっても安全に飛行させることができ,森林内調査に活用できると考えられる。Skydio 2のような森林内飛行が可能なドローンは,効率的に森林内の情報を高精度なデジタルデータとして取得することができることから「林業DX」の実現に資する有効なツールである。
著者
酒井 秀夫 笠原 直人 清水 裕子
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.85-96, 1996-08-15
参考文献数
12
被引用文献数
1

暑熱環境下において,身体を積極的に冷やして体温上昇を抑制することによって生理的負担の軽減を図る方策として,吸水繊維に冷水を含ませる水冷ベストの冷却効果と有用性について検討を行った。ベスト着用により衣内の相対湿度は高くなったが,強制的に衣内温度を抑えることができ,太陽の輻射熱を遮り,冷却効果は30〜40分持続していた。ベストの下にシャツ1枚着用しても,十分な冷却効果が得られ,着用した衣服によって着用感を向上させることもできた。ベスト着用により作業時および休息時の心拍数の低下が認められた。ベスト着用により体熱放散の必要性が弱くなり,末梢の血管が収縮し,皮膚表面への血流量が減少し,生理的負担が軽くなったものと考えられる。日本産業衛生学会の修正実効温度による許容温度条件をもとに暑熱環境の評価を行った。わが国の夏の気象条件では,容易に許容基準を超えてしまうことが予測され,水冷ベストを処方することは有効と思われる。とくに初心者や,夏季当初,休み明けなどの暑熱未馴化の時期に効果が期待される。
著者
井内 祥人 岡 勝 寺本 行芳
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.45-54, 2016-01-31

奄美大島では1960年から鹿児島県により林道が建設されているが,梅雨,台風などの大雨により毎年,林道災害を受けている。特に2010年10月に記録的大雨が発生し,24路線58か所の林道災害が発生し道路やライフラインに甚大な被害を与えた(2010奄美豪雨)。奄美大島における過去に開設された林道の施設災害状況を調査するとともに,2010奄美豪雨による災害状況を分析した。その結果,1)施設災害の80%以上が切土法面の災害であること,2)林道開設終了年から約15年経過した1995年付近で林道施設の災害頻度に大きな変化が見られることを見出した。その要因として,林道施設の設計変更の影響が示唆された。次に,崩壊土量に及ぼす諸要因の影響を数量化I類で分析した結果,地質,集水面積,斜面形状,縦断勾配,斜面方位の順に高い影響を及ぼすことが判明した。2012年6月から9月にかけて奄美大島で発生した豪雨災害に適用した結果,高い有意性が明らかとなった。
著者
吉村 哲彦 酒井 徹朗
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.193-200, 1998-12-15
被引用文献数
5

林道は公道の整備が十分でない山間部において木材輸送だけでなく交通網の一部としての役割を担っている。本研究では,効率のよいネットワーク形成を目的として,紀伊半島中央部の熊野川流域6村を対象に,ネットワーク分析を用いて林道を含めた道路網の評価を行った。アルファ指数を用いて評価を行った結果,道路の規格が下がるにつれて,この地域の道路網は循環型ではなく突っ込み型の線形が増加することが示された。ベータ指数の値は,わずかに1以上であり,いくつかの地点で代替経路が存在していたが,土砂崩れなどにより道路が遮断された場合に適当な代替経路を探すのは困難である。イータ指数の値も,道路の規格が下がるにつれて減少傾向を示し,市町村道のレベルでネットワークの細分化が進んでいることがわかった。Croftonの公式によりネットワークの連結性を評価した結果,下北山村と野迫川村,下北山村と大塔村の連結性が最も低く,次いで十津川村と天川村,大塔村と天川村の連結性が低いことが示された。逆に道路の連結性が最も高いのは天川村と野迫川村の間であった。このような連結性の低い区間には,既存道路の改良も含めた峰越し連絡道路の整備が必要である。
著者
毛綱 昌弘 山口 浩和 佐々木 達也 岡 勝
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.135-140, 2008-12-15

フォワーダ等による作業路を用いた集材方法が普及し始めているが,作業路の総延長距離が伸びるに従い作業能率の低下が問題となっている。この問題を解決する方法として,作業路上を走行している有人の車両の後ろを無人で走行可能な車両が追従して走行することにより,複数台の車両を一人で運転して作業能率を向上させる方法を考案した。本報告では,制御を行うために必要となるセンサを試作し,実験用車両を用いて走行実験を行い,制御結果に影響を与える因子について検討を行った。実験の結果,有人の車両後部に超音波を発するスピーカ,無人の車両前部にマイクをそれぞれ二個ずつ装備することにより,追従走行制御が可能であった。先行する車両と追従する車両の車間距離を大きく設定すると,曲線走行時には内回りが大きくなる一方,車間距離を小さく設定すると,走行速度が大きくなると制御が不安定になるため,車間距離の設定が重要であった。また,作業路の幅員は直線であれば車幅の1.4倍程度でも走行可能であるが,曲線部では1.6倍まで拡幅しなければならないことが確認できた。
著者
中田 知沙 猪俣 雄太 上村 巧 山口 浩和
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.38.29, 2023-01-31 (Released:2023-03-19)
参考文献数
9

本研究はチェーンソーの水平把持に着目し,その精度の現状を把握することを目的とした。また把持高さと地面傾斜による影響を調査した。ガイドバーの長手方向の傾きのズレは,被験者の4割が2°以上で,かかり木や隣接木接触等による労働災害につながる可能性のある水平把持精度であることが分かった。被験者のうち初心者は刃先が下がりやすく,経験者は刃先が上がりやすい傾向が見られた。また,把持高さによる差は見られなかった。グループ間の技能の顕著な差はないと判断できたことから同じ母集団として地面傾斜やチェーンソーの把持姿勢,スロットル操作の指の違いによる影響を調べた。傾斜0°と10°ではガイドバーの傾きが有意に高く,チェーンソーの把持姿勢とスロットル操作の指の違いによる有意差は見られなかった。まずは安全な平坦地で訓練を行うことで,傾斜地でも水平を維持できるようになることが期待された。
著者
近藤 道治
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.9-14, 2006-04-15 (Released:2017-04-03)
参考文献数
9
被引用文献数
3
著者
矢部 和弘 今冨 裕樹 伊藤 崇之
出版者
森林利用学会
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.131-136, 2019 (Released:2019-12-03)
著者
スイパラム ダムロン 田坂 聡明
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.169-176, 1999-12-15
参考文献数
4

本研究の主たる目的は,タイの伐出作業への日本産タワーヤーダの可否を検討するための分析プログラムの開発にある。分析プログラムの開発にはVisual Basicを使用し,タイのプランテーション地域の林分構成,地形データをもとに評価をおこなった。開発された分析用プログラムでは,これらのデータをコンピュータ画面上に数値地形図として表示し,搬送荷重の適合範囲算出,タワーヤーダおよび先柱位置の決定,森林内路線配置に利用する。このプログラムでは,スクリーン上に表示された任意の地点間の索縦断面の描画が可能であると同時に,供試機の諸元や,タイおよび日本で収集された各種のデータをもとにもとめられたパラメータ群,索の線形,張力等が視覚的に得られ,さらに,限界荷重値や集材作業のサイクルタイムが算出,表示される構成となっている。また,対象地における架線位置が全て決定されると,この対象地域のタワーヤーダ集材の生産性と生産費用が自動的に算出され,タイで現在使用されている伝統的な集材方法との比較が可能となる。今回の報告では,現在までにタイ国内でのタワーヤーダ導入の実績がないことから,いくつかのパラメータは日本国内での集材データから求められており,実作業データとの差異が予想される。今後さらに研究を重ねることにより,これらの点の改善に務めたいと考える。
著者
小林 裕之
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.35.159, 2020-07-31 (Released:2020-08-01)
参考文献数
10

富山県立山町の三等三角点「栃津」において,安価な 2 周波 GNSS 受信機 3 機 による 3 時間の静止測位と後処理解析を行った。受信したのは,GPS,GLONASS,QZSS および GALILEO の L1 波と L2 波であり,RTKLIB による後処理を行ったのち,観測開始から 30 分,1 時間,2 時間,3 時間の 4 つの観測時間に分割して fix 率,水平測位誤差,垂直測位誤差を算出した。GPS だけを使 った解析では観測開始直後から fix 解が得られることが多かったが,その水平誤差は大きかった。GPS と QZSS の組み合わせは,他の組み合わせよりも fix 率が高く,AR 比が最大の 999.9 のときの水平誤差は 5 cm 前後となった。GPS と GLONASS,GPS と GLONASS および QZSS,GPS と GLONASS と QZSS およ び GALILEO の組み合わせは,観測時間が短い場合に fix 解が得られないこともあったが,ひとたび fix 解 が得られ,AR 比が 999.9 に達したときの水平誤差は 1〜2 cm 程度となった。垂直誤差は小さい場合でも80 cm 前後と,水平誤差に比べて非常に大きかった。L2 波の効果は明瞭ではなかった。
著者
佐野 孝志 仁多見 俊夫 酒井 秀夫
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.34.37, 2019-01-31 (Released:2019-03-08)
参考文献数
10

本研究は林業界の課題となっている竹林の放置・荒廃の問題に着目し,その利用によって地域資源として再生を図るべく,竹から乳酸発酵竹粉を製造する高性能機械を開発した。製造された竹粉は,300-400μm程度の粒度で,内部に多孔質を持ち,竹由来の乳酸菌が生息する。この乳酸発酵竹粉を農業資材としての効果の実証をし,売れる商品としてのビジネスモデルを構築した。機械の製造能力300tに対し,年間50t の製造販売で,販売価格を現在の市況価格300 円/kg を200 円/kg に下げても136万円の粗利となる。年間100t になれば年間747万円の粗利で,約2年で機械費1500万円が回収出来ることになる。竹林伐採(1次)・竹粉製造(2次)・竹粉販売(3次)の6次産業化を実践し,将来は工業製品までの用途開発を進めて,バイオマス活用の新事業創出による地域活性化に役立つ可能性があり,開発した機械はトラック搭載してモバイル機構化し,林道上で竹粉化処理も検討に値する。
著者
川﨑 章惠
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, 2017

<p>1980 年代以降の林業従事者の著しい減少と高齢化に対応して,2003年から開始された新規就業者の確保と育成を目的にした研修事業である「緑の雇用」事業は13年目を迎えた。本稿は,「緑の雇用」事業のフォレストワーカー研修生を対象に2013年度に実施したアンケート調査の再集計をもとに,研修生の属性や研修環境と「緑の雇用」事業集合研修とOJT研修の評価との関連を分析した。アンケート調査は全国森林組合連合会によって実施され,集合研修後に研修生に2,505通を配布,回収数は1,839である。その結果,1)集合研修については伐採・搬出に関わる技術の研修に対して評価や要望が高いこと,2)OJT研修についてはおおむね良い評価が得られていること,3)研修の評価と,研修生の年齢,前職・学歴,地元・UIターン別などの属性との関連性は見いだせず,研修の設計や研修体制を通じていかに研修生の学びへの動機づけをできるかが重要であることが明らかになった。</p>
著者
ポーイェ アントン ポトチニク イゴル 酒井 秀夫
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.47-54, 2010-01-31

ブナの伐採が,その複雑で非対称性な樹冠特性,枝の配置,長さ,厚み,幹の曲がりからしてトウヒやモミに比べて危険度が高いという仮説を検証した。スロベニア国有林で1999〜2005年に発生した払い下げ作業員の事故を分析した。999件の事故のうち,528件が伐採中であり,そのうち475件がブナ,トウヒ,モミの伐採中である。伐採材積または本数に対する事故発生割合から,ブナ伐採がトウヒやモミに比べてどの程度事故の危険性が高いかを示した.I_kは伐採材積を,I_dは伐採本数を指標としたとき,ブナ伐採時はトウヒ,モミに比べて,I_dは1.1倍,I_kは1.5倍高い。くさび打ちのI_d,I_kはそれぞれ1.3,1.9倍,追い口切りは1.6,2.3倍,造材・玉切りは2.0,2.9倍と高い。かかり木除去,枝払いのI_kはそれぞれ1.4倍,1.2倍でありI_dは1.0倍,0.8倍である。概してI_kはI_dよりも高い。以上の結果は,今後広葉樹伐採の研修,作業準備などの事前の安全性確保,作業管理,作業組織,安全作業評価にとって活かすことができる。
著者
豊川 勝生 山田 容三 広部 伸二 上村 巧 今冨 裕樹 鹿島 潤
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.183-192, 1997
参考文献数
6

ホイールグラップルスキッダを用いた集材作業について検討したが,材つかみ時間が全作業時間中4.6%のみであるため,従来のウインチスキッダ作業と比べ高い作業能率を示した。作業中のオペレータの平均心拍数は84拍/分で,生理的負担は軽く,最高心拍数は,後方を注視する材つかみ時に生じた。スキッダの主な前方注視野内妨害物は,キャビン,ボンネット,排気管であった。オペレータは排土板とタイヤをよく見ていたが,その立体角は小さい。「材つかみ」時の伐倒材や「実車走行」時の牽引材の後方確認は,グラップルスキッダの座席が右前へ17°傾いているため行いやすいが,体をひねる後向き操作が全作業時間の55.8%にもなった。スキッダ座席上の3方向の振動は,ISO基準の疲労減退曲線のレベル以下であった。オペレータ耳元騒音は,空車後進時,実車時で騒音レベルが高く,1〜4KHzで日本産業衛生学会の基準レベルを超えていた。この等価騒音レベルは80〜93dB(A)で,労働安全衛生規則の基準を超えるものもみられた。スキッダのレバー,ペダルの配置は,すべてJIS規格の適切な操作範囲内に配置してあった。スキッダのステップ高は推奨値より高いため,オペレータは乗降時に無理な姿勢を強いられていた。