著者
伊藤 啓子 山崎 昇 篠原 文陽児
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 13 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.271-274, 1989 (Released:2018-05-16)

CAIシステムは、伝統的な一斉授業の中では必ずしもも十分ではない個別化や個性化指導を具体的に可能にしつつ、かつ、これらに関わる要因を科学的に分析、解明する手段となる。 本研究では、小学校5年81名を対象に、算数科における「分数」単元の中の「異分母分数のたし算」を、一斉授業とCAIシステムを使って学習させ、CAIによる学習は内向的性格の児童に、一斉授業は外向的性格の児童に、それぞれ効果的であることを実験的に明らかにしている。なお、一斉授業が内向的性格の児童に対して適切な援助を必要とする学習形態であること、および、CAIコースウェアの開発にあたっては、学習者の能力、適正、興味などが考慮すべき要因であることを指摘している。
著者
山崎 昇
出版者
京都大学
雑誌
京都大學結核研究所紀要 (ISSN:04529820)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.34-64, 1965-09

炎症又は外傷による組織障害が結合組織の増殖により修復される場合には, 結合組織, 特に膠原線維が過剰に増殖すると, 生体に却って不利となることがある。例えば, 慢性肺結核の病巣では, 膠原線維性の被膜が形成されると, 病巣の吸収瘢痕化が障害せられ, 瘢痕ケロイドでは, 膠原線維が過剰に増殖して, 完全な瘢痕化が障害される。そこで, その治療に当っては, 結合組織の増殖を何らかの方法により調節することが望ましいが, 結合組織についてこのような目的で検討した報告は殆んどないといっても差支えない。これは病理組織学的並びに組織化学的にみて, 適当な検討方法がなかったためであろうと考えられる。一方, 近年における結合組織や膠原線維についての生化学的並びに電子顕微鏡学的な研究の進歩発達には目覚ましいものがあるが, それ等の成果を実地臨床的に応用する途は, 未だ開かれていない。そこで, 著者は, それ等の諸研究の成果を従来から行なわれている病理組織学的並びに組織化学的な検討方法に応用することにより, 結合組織や膠原線維の性状及び形成状況等を明らかにし, その増殖調節に必要な手掛りを得ようとした。第1篇では, van Giesonの染色法, Malloryの染色法, メタクロマジア染色及びペプシン消化試験等を適宜に組合せ, 組織切片を用いて, 結合組織, 特に膠原線維の性状を明らかにした。即ち, van Giesonの染色により殆んど染まらないか, 又は, 黄赤色に染まり, Malloryの染色により青色に染まる線維は, 多量の可溶性コラーゲンを含む幼弱型であり, van Giesonの染色により赤染し, Malloryの染色により濃青色に染まる線維は, 可溶性コラーゲンが少なく, これに対し不溶性コラーゲン及び酸性多糖類との割合が多く, これらが適当に組合された成熟型であることを知った。成熟型の膠原線維はペプシンに対する抵抗性が大であり, 生化学的にもかなりに安定したものと考えられる。第2篇では, 結合組織, 特に膠原線維についての著者の組織学的研究方法を, 臨床切除材料や動物実験材料の場合に応用し, 著者の研究方法の応用価値について検討した。結核性肺病巣についてゆうと, X線的に硬化性病巣としての所見を示す病巣では, 被膜は一般に3層の膠原線維層からなっており, 最内側のそれは成熟型の線維からなっていて, もっとも強靱である。最内側のこの線維層は寺松, 山本等の所謂メタクロマジア陽性層に相当しており, 本篇ではその性状からみて病巣の安定化に役立つ反面, 病巣の吸収瘢痕化に対してもっとも大きな障害となっていることが明らかにされている。瘢痕ケロイドでは, 成熟型膠原線維の線維腫様増加と, ヒアルウロニダーゼで消化される酸性多糖類の増加とがみられ, この種の過剰な酸性多糖類が線維の層状化, 即ち, 完全な瘢痕化を阻害するわけである。従って, 瘢痕ケロイドの治療には, 従来行なわれている種々の方法を応用するとともに, この種の酸性多糖類を減少せしめる手段を講ずることが必要である。又, 本篇では, 実験的異物性炎における各種の薬剤の作用棧序について検討した結果, コーチゾンは抗炎症作用と線維の成熟化を阻害する作用とを有し, グリチルリチンは投与の初期にはコーチゾン様の作用を示し, ついで線維形成促進作を示すものなること, 及び, オキシフェンブタゾンは, 線維の成熟化は阻害しないが, その形成量を低下せしめ, ヘパリン及びコンドロイチン硫酸は, その作用棧序は多少異なるが, ともに線維形成を促進する作用を有することを知った。以上, 著者は, 著者の研究方法を炎症その他の結合組織の研究に応用して, 在来に比べてより多くの知見を得られることを実証するとともに, これにより結合組織の増殖を調節する手掛りが得られることを明らかにした。