著者
林 政彦 民谷 晴亮 小松 睦美 堤 貞夫 山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成19年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.4, 2007 (Released:2008-06-01)

アメシストを加熱することによりシトリンの色調に変化させることはよく知られている。そこで、次の4つの産地の天然アメシストと1つの合成アメシストをそれぞれ加熱実験し、色調の変化を追ってみた。 (1)ブラジル、リオ・グランデ産:Iai, Rio Grande do Sul, Brazil (2)ウルグアイ産:North Cantera mine, Artigas, Uruguay (3)メキシコ産:Ras Begas mine, Mexico (4)ロシア製合成アメシスト:Synthetic amethyst, Russian Academy これら加熱実験結果から、ブラジルのリオ・グランデ産、ウルグアイ産及び合成アメシストは、420~450度で脱色し、その後に黄色あるいは黄褐色のシトリン(黄水晶)の色調を呈するようになった。 今回の加熱実験結果で着目すべき点は、メキシコ産アメシストについては、脱色はするがその後の色調の変化は見られず、最終的に白色(不透明な無色)になったことである。 以上の結果をふまえて、加熱によるアメシストのシトリンへの変化について、CL像の観察・化学分析・IR吸収スペクトル測定などを行った結果から、次のような結論を得た。 ・カラーセンターによって生じた可視領域の吸収(550nm付近)が、420~500度の加熱によって消滅した結果、紫色は消失した。 ・黄色に変化するというのは、分光特性において可視部から紫外部にかけて徐々に吸収が大きくなることを示している。 ・黄色に変化しないものは、カラーセンターによって生じた可視領域の吸収(550nm付近)が、加熱によって消滅した後、さらに加熱温度を上昇しつづけても、その他の吸収の変化が可視領域になかったことを示している。 ・アメシストを加熱することによりシトリンの色調に変化させるには、H2O分子の存在と450~500度という温度が必要である。
著者
林 政彦 安藤 康行 安井 万奈 山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成24年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.6, 2012 (Released:2012-09-30)

ブルー・オパールは大変綺麗な色調であり,人気のある宝石の一つである。その中に変色するものがあったので、その原因について報告する。 この変色は、標本ケースに入れた状態で生じており、ケース内部が青色になってしまっていることから、オパールから染み出てきたことによることは明らかである。そこで、変色した標本について、X線粉末回析実験とエルギー分散型EPMA により化学組成の分析を試みたので、それらの結果を報告する。 (1)X線粉末回折実験 装 置 ・リガク製X線ディフラクトメータ RINT ULTIMA3 条 件 ・X線源:Cu Kα ・電圧/電流:40kV / 20mA 結 果 非晶質のシリカの回折パターンを示す。いわゆるOpal-CTである. (2)エルギー分散型EPMA 装 置 ・日本電子製JSM-6360 + OXFORD製INCA EDS 条 件 ・加速電圧:15 kV ・測定範囲:20 mm ・積算時間:60 sec 結 果 銅と塩素が検出された. 以上の結果から,青緑色を呈する塩化銅(Ⅱ)のニ水和物によって着色されたオパールと思われる。 なお、無水の塩化銅(Ⅱ)は黄褐色である。 流通しているブルー・オパールのネックレスで、身に着けている間に黄色に変色した報告もある。これは,塩化銅(Ⅱ)のニ水和物が脱水して無水になったためと考えられる。塩化銅が人為的に含浸させたものかどうかは不明であるが、流通しているブルー・オパールの取扱いには注意が必要である。
著者
山崎 淳司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.356-359, 2020-09-20 (Released:2021-09-01)
参考文献数
3

粘土鉱物は,基本的に天然に産する層状ケイ酸塩鉱物の一群であり,70種以上が知られている。その特徴的な結晶構造と,化学組成に起因する代表的な性質として,イオン・分子吸着性,溶媒中へ分散性と吸水による膨潤性,加熱変化および焼結性について紹介する。
著者
林 政彦 安藤 康行 安井 万奈 山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.34, 2012

ブルー・オパールは大変綺麗な色調であり,人気のある宝石の一つである。その中に変色するものがあったので、その原因について報告する。<br>この変色は、標本ケースに入れた状態で生じており、ケース内部が青色になってしまっていることから、オパールから染み出てきたことによることは明らかである。そこで、変色した標本について、X線粉末回析実験とエルギー分散型EPMA により化学組成の分析を試みたので、それらの結果を報告する。<br>(1)X線粉末回折実験<br>装 置<br>・リガク製X線ディフラクトメータ RINT ULTIMA3<br>条 件<br>・X線源:Cu Kα<br>・電圧/電流:40kV / 20mA<br>結 果<br>非晶質のシリカの回折パターンを示す。いわゆるOpal-CTである.<br>(2)エルギー分散型EPMA<br>装 置<br>・日本電子製JSM-6360 + OXFORD製INCA EDS<br>条 件<br>・加速電圧:15 kV<br>・測定範囲:20 mm<br>・積算時間:60 sec<br>結 果<br>銅と塩素が検出された.<br>以上の結果から,青緑色を呈する塩化銅(Ⅱ)のニ水和物によって着色されたオパールと思われる。 なお、無水の塩化銅(Ⅱ)は黄褐色である。<bR>流通しているブルー・オパールのネックレスで、身に着けている間に黄色に変色した報告もある。これは,塩化銅(Ⅱ)のニ水和物が脱水して無水になったためと考えられる。塩化銅が人為的に含浸させたものかどうかは不明であるが、流通しているブルー・オパールの取扱いには注意が必要である。
著者
山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1, 2005

<Br> コランダム(corundum)は、α-Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>の主化学組成と構造型をもつ鉱物種名であり、微量のクロム、チタン、鉄が固溶することによって発色したルビー、サファイアなどは変種名である。コランダムが宝石として用いられるには、透明性とある程度の大きさが求められる。しかし、生成条件の関係から乳白色で産出するいわゆる「ギウダ」や、生成過程で混入した不純物種によって色の質が落ちるコランダムを加熱処理して、透明度や色調を向上させたものが、一部で流通している様である。この加熱処理は、宝石としてのコランダムの流通量が増えるなどの利点はあるが、加熱処理物と非加熱処理物とが流通過程で混在していることが問題にもなっている。<Br> 今回の講演では、コランダム型構造を有する物質の結晶化学的特徴を紹介し、コランダムに各種遷移金属元素をドープし、加熱処理した場合の発色機構について、主に顕微ラマン分光、カソードルミネッセンス スペクトルなど分光学的測定法を用いて得られる知見について紹介する。
著者
林 政彦 高木 秀雄 安井 万奈 山崎 淳司
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成29年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.10, 2017 (Released:2017-06-30)

はじめに 1962 年に, 東京芝浦電気株式会社 中央研究所(現東芝研究開発センター)で合成ダイヤモンドが製造さ れた.これはスウェーデンのASEAで 1953 年に,米国のGEでは 1954 年に製造されてから僅か数年後の事である.この頃に東芝で造られたとされる合成ダイヤモンドが,早稲田大学の鉱物標本室に収蔵されていたので,その特徴について報告する.特 徴 この標本は,ほぼ無色の色調を呈し,表面に見られる成長模様から{100}で囲まれた結晶と見られる(Fig.1).その外観は,コンゴ産の天然ダイヤモンドに似ている.この標本の成長の様子を調べるために RELION Industries 製 RELIOTRON を使いてカソ―ドルミネッセンス(CL)像を観察したところ, 小さなセクターに分かれた組織が認められた(Fig.2).