著者
山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

地方都市の中心市街地空洞化は、世界都市化経済のもとでの都市システムの変容、都市化経済のもとでの郊外化、少子高齢化社会での空間市場縮小といった3つ過程の複合化現象として捉えられ、少子高齢社会では人口の空間的流動性が二極化していくので,地方における中心部の機能構築と空間整備は定着性の強い人口に焦点を当てて都市空間整備を行なう必要ある。地方都市の中心市街地の空洞化を促進したのは、改正大店法である、これは大型店出店を原則自由とするもので、巨大化・複合化戦略のなかで資本規模の大小にかかわらず、売場面積の拡大をはかりつつ、大店舗網のS&Bを進めた。例えばジャスコは提携・合併を繰り返し,中部・近畿をホーム地区としつつ全国に拡大しつつ、店舗のS&Bを進め、店舗が「ストック」としてではなく,「フロー」として取り扱われていること、そして規模と業態の異なる店舗を組み合わせて商圏の重層的掌握をねらっている。地方中核都市を中心とした30都市を選定し、小売業概況、大型店立地動向、中心市街地における商業活動や歩行者通行量、中心市街地再構築の視点などを人口規模別に検討すると、商業集積拠点としての中心市街地が維持されうるか否かの分岐点は人口規模20〜30万人台にある。また福島県内においてみると、一方の極としては地方中核4都市における駅前型・市街地型の商業集積の空洞化が進んでおり、他方の極としては郊外におけるロードサイド型ないしは郡部町村での商業集中の動きがあり、これらの動きの中間地帯に住宅背景型や中小6市の中心市街地が位置している。地方都市の中心市街地を活性化するには、消費者ニーズに対応した業態の転換や質の良い商品・サービスの品揃えを充実しなければならず、同業種・異業種を含め魅力ある個店が集積させることによって中心的機能としての結節性を獲得できる。当面の活性化のポイントはTMOであり、なお個性を見出せないが、特定会社型は商工会商工会議所型に比べれば、まちづくり運動に一定の蓄積があり、より多様な活動を行っている。例えば福島県会津若松市七日町通り商店街では「商業の活性化」ではなく、明治・大正期の建物の「修景を軸とした」まちづくり運動がワークショップ方式で進み、修景事業による空き店舗の解消、基本計画の策定、イベント導入などが積極的に進められ、会津若松市のまちなか観光の中心的役割を果たすまでになった。
著者
山川 充夫
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.130-140, 2016-06-30 (Released:2017-09-07)
参考文献数
26
被引用文献数
3

福島県商業まちづくり条例は,売場面積6,000 m2 以上をもつ大規模小売店舗を「特定」し,その新設立地に関しては郊外での抑制と中心市街地への誘導を行うという土地利用の視点からコンパクトなまちづくりを推進することを目的として,2006年に制定された.この条例は翌年の改正まちづくり三法の制定に大きな影響を与えただけでなく,地方の道県に対して同種の条例あるいはガイドラインの制定を促進した.そして福島県条例は,実際に郊外における特定大型店の新規立地を抑制し,消費者買物行動が郊外から中心商業地に転換する効果を発揮してきている.     2011年3月,東日本大震災と原子力災害が岩手県・宮城県・福島県の太平洋沿岸地域を襲った.被災地では被災者や避難者の日常生活を支えることを大義とし,商業拠点形成が居住地再編の要として位置付けられ,国の圧倒的な支援を受けて,復興が進められている.しかしそこではコンパクトなまちづくりが謳われているが,その実態は大型店を中核とする市街地整備が進められ,従前の商店街とは異なった商業集積が再生されつつある.特にいわき市小名浜地区では津波被害を契機とし,港湾地区の土地利用の変更をしてまで,巨大なショッピングセンターが誘致されることになっており,ショック・ドクトリンのもとで県条例は空洞化の危機に直面している.
著者
山川 充夫
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.129-137, 2018-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
47
被引用文献数
1

本稿では東日本大震災,とりわけ東京電力福島第一原子力発電所事故の被害が今なお残る福島県の復興過程における諸問題を振り返ることで,熊本震災復興への示唆を考える.熊本震災の復興のあり方をめぐって,東日本大震災から学ぶべき教訓は「ふるさとの価値」再生を保障する視点を震災復興政策にきちんと位置付けなければ,少子高齢社会においては被災者の生活再建や被災地の復興が費用対効果の低いものにとどまらざるを得ないということにある.東日本大震災後に実施された創造的復興政策は,財政投資が被災地域へのインフラ整備に過度に偏ったものとなったため,被災者の生活再建への保障が十分ではなかった.そのような政策は,熊本震災復興でもかえって人口の域外流出を高めてしまう恐れを含んでいる.
著者
山川 充夫
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.130-140, 2016

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;福島県商業まちづくり条例は,売場面積6,000 m<sup>2 </sup>以上をもつ大規模小売店舗を「特定」し,その新設立地に関しては郊外での抑制と中心市街地への誘導を行うという土地利用の視点からコンパクトなまちづくりを推進することを目的として,2006年に制定された.この条例は翌年の改正まちづくり三法の制定に大きな影響を与えただけでなく,地方の道県に対して同種の条例あるいはガイドラインの制定を促進した.そして福島県条例は,実際に郊外における特定大型店の新規立地を抑制し,消費者買物行動が郊外から中心商業地に転換する効果を発揮してきている.<BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 2011年3月,東日本大震災と原子力災害が岩手県・宮城県・福島県の太平洋沿岸地域を襲った.被災地では被災者や避難者の日常生活を支えることを大義とし,商業拠点形成が居住地再編の要として位置付けられ,国の圧倒的な支援を受けて,復興が進められている.しかしそこではコンパクトなまちづくりが謳われているが,その実態は大型店を中核とする市街地整備が進められ,従前の商店街とは異なった商業集積が再生されつつある.特にいわき市小名浜地区では津波被害を契機とし,港湾地区の土地利用の変更をしてまで,巨大なショッピングセンターが誘致されることになっており,ショック・ドクトリンのもとで県条例は空洞化の危機に直面している.</p>
著者
山川 充夫
出版者
福島大学経済学会
雑誌
商学論集 (ISSN:02878070)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.p132-162, 1987-02
著者
山川 充夫
出版者
日本地域経済学会
雑誌
地域経済学研究 (ISSN:13462709)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.49-64, 2019 (Released:2020-05-07)

TEPCO Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident triggered by the Great East Japan Great Earthquake resulted radioactive contamination over the wide-area mainly in Fukushima Prefecture. Depending on radioactive contamination, the evacuation instructions from central government is issued to people living in 12 municipalities in Fukushima Prefecture Hamadori region, it has been forced to evacuate to about 160,000 people of Fukushima Prefecture, including many voluntary evacuees. Even if residents want to entry into the evacuation direction area, they are prohibited or restricted depending on the level of radioactive contamination. Thereafter, the evacuation direction area has gradually released by radiation decontamination in the living space and natural radiation attenuation. Nevertheless, 23,718 people including mainly Futaba and Okuma residents are not allowed to return to home town, and many voluntary evacuees also have not returned to home town. Based on these circumstances, Fukushima Booklet Committee who is composed of NPO corporations and others publish "Fukushima 10 lessons learned" for the purpose of "to protect people from nuclear accidents" The lessons represent refugee's views on the reasons why many people do not come back to the areas where evacuation instructions have been lifted. Basis of the lessons lies in the promotion policy of evacuees early return to home town by central government, despite the following situation has not be improved; that is, anxiety and fear of radiation exposure still continues; despite a severe nuclear accident, basic energy policies that do not shift to no nuclear power energy; industrial policies that nuclear power plants export are continuing to promote; Fukushima prefecture has issued an interim report that health effects caused by radiation of nuclear accident were not observed due to the prefectural health survey. The conflict between scientists on academic findings concerning low dose exposure to health effects in the Fukushima nuclear power plant accident caused the unreliability from victims and people to science. In response to such a serious question, Science Council of Japan switched from "Science for Science" to "Science in Society" and asks "How academia should face citizens and administrative government". These recommendations were principle of reconstruction, radiation decontamination, low dose radiation health management, disaster area reconstruction, victims' livelihood restoration, employment recovery, energy future selection, treatment and disposal of radioactive waste, and so on. Each stands different position between citizen and scientist, so that it is difficult for them to perfectly match. Nevertheless, because nuclear disaster keeps on cumulative damage for victims, SCJ should be continuing to present the recommendation timely in the today and tomorrow.
著者
山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東日本大震災と原子力災害の発生により,研究目的及び研究実施計画を一部変更して,被災商店街や商業者を対象とする調査を行った。調査結果からは「歩いて暮らせるまちづくり」の重要性がより強く認識されることとなった。商店街は地域社会の経済活動だけでなく,地域社会における諸活動の要の役割を果たしてきている。それは震災・原災という非常時においても,地域住民に商品やサービスを可能な限り早く提供するという業務的役割のほかに,瓦礫の片づけ,除染活動,食糧援助,募金活動など地域社会への貢献活動を積極的に行った。それは大型店とは違った顔の見える地域社会への貢献である。併せて,商店街が復旧に立ち上がるためにも,水・電気・ガソリンなどのライフラインの確保が前提となることが再認識された。
著者
鈴木 典夫 守山 正樹 福島 哲人 坂本 恵 永幡 幸司 丹波 史紀 山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.月1~2回の研究会及び学習会活動を行ってきた。2.中越地震被災地及び他地域の被災地(福岡市・神戸市など)でのヒアリングを行った。3.調査活動として、仮設住宅100世帯の面接による2年継続の「避難所及び仮設住宅における生活調査」、「生活のストレス調査」、「住宅再建に関する調査」、小学生を対象とした「震災体験・認識調査」及びワークショップを実施した。4.「被災住民の生活再建と災害復興に向けた課題」と題したシンポジウム、「もとめられる医療通訳者養成研修プログラムとは何か」の研究交流集会、「災害ボランティアシンポジウム」、他各調査の現地報告会を開催した。5.成果については、「日本音響学会」「国際騒音学会:Inter-Noise」「日本居住福祉学会」等において発表。論文としては、『厚生の指標』に「新潟県中越地震で被災した児童による避難生活で体験した出来事の評価」等を発表。その他、関連会合にて講演その他で公表した。6.中越沖地震が発生したため、再度ボランティアの調整、ニーズの拾い上げ等での情報収集をするとともに、研究成果を活かし、児童支援並びに地域復興支援にあたった。7.研究成果報告書(全159頁:80冊)を作成した。8.福島大学において、「災害と復興支援」という授業を開講した。
著者
山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的はNPO法人と商店街との連携が中心市街地の活性化にいかなる役割を果たすのか、その経済的効果はいかなるものが期待されているのか検討した。大店立地法は売場面積規模が数万m^2に達するほどの出店申請をほとんど全て認め、これが周辺環境問題とりわけ生活環境問題を悪化させた。中小企業団体や地方自治体から厳しい意見が出され、まちづくり三法の改正が着手された。労働効率、売場効率、販売効率の検討から、大型店は売場面積が2〜3万m^2を超えないと効果が現れず、このことが売場面積規模を大きくする原因であることが判明した。また最寄品中心型商店街をロードサイド型と比較すると、売場効率では遜色のないものの、労働効率がかなり悪いことがわかり、これが地方都市中心商店街の衰退原因であることが判明した。地方都市中心商店街を活性化する方途の一つとしてNPO等との連携がある。中心市街地に訪れる生活者は中心商店街に、コミュニティの維持発展の基盤となる「安全・安心」、買い物などのサービス利便性、公共的性格を持つ交流・サービス機能、歴史的文化的豊かさ、地球環境問題への対応等に期待を寄せている。各種調査からこうした生活者の複合的かつ多様なニーズへの対応には、「商い」を専らとする商業者がNPO等と連携することが不可欠であることが判明した。福島県福島市では2002年度から「市民協働型まちづくり」に取り組み、企画提案型事業の公募、人材育成のための「まちづくり楽校」の開校、市民電子会議室の設置などの成果を出している。なかでも「ふくしま城下まちづくり協議会」の取り組みが注目される。この協議会は市民協働型でペーパープランにとどまっていた地区計画に生気を吹き込み、福島市が借上住宅として活用する商住型民間マンションが建設され、定住者の増加により伝統的なイベントも活気を取り戻し、まだ事例的に過ぎないものの、店舗が新規開店した。