著者
成 元哲 牛島 佳代 松谷 満 阪口 祐介 永幡 幸司 守山 正樹 高木 竜輔 田中 美加
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、原発事故が福島県中通りに居住する親子の生活と健康にどのような影響を与えているのかを明らかにし、必要な支援策を検討することにある。そのために、参与観察、聞き取り調査、調査票調査を通じで、原発事故後、中通り9市町村に暮らす親子は急激な生活変化を経験しており、それに適応できない母親は精神健康の低下を経験しており、それが子どもの問題行動につながっていることを明らかにした。親子への支援策は、経済的負担感と補償をめぐる不公平感を軽減し、放射能への対処をめぐる認識のずれを軽減する。また、保養・避難を選択できる環境にし、福島での子育て不安、健康不安を軽減することが必要である。
著者
永幡 幸司 大門 信也
出版者
The Institutew of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.128-136, 2003-04-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
13

福島県下の全自治体を対象としたアンケート調査より, 各自治体における防災無線の設置状況, 及び, その運用状況を明らかにし, それらと, 各自治体の特徴を表す指標である市町村勢との関係について検討した。その結果, 防災無線の有無と市町村勢の間には直接的な関係がないこと, 防災無線を用いて放送される内容の間には, 防災情報, 行政情報, 農林水産情報, 学校情報, 選挙結果の順に社会的に容認されやすいという構造関係があり, 都市化の進んだ自治体であるほど, 社会的に容認される放送内容が少ないことが明らかとなった。
著者
成 元哲 牛島 佳代 松谷 満 阪口 祐介 西崎 伸子 永幡 幸司 三上 直之 守山 正樹 荒川 雅志 石原 明子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

未曾有の原発災害における人間経験を生活変化と健康影響に焦点を当て長期的に追跡し、実態解明を行うとともに、社会的亀裂を修復するために次の二つの取り組みを行った。第1に、福島県中通り9市町村の2008年度出生児とその母親を対象に、原発事故が与える影響を生活と健康に焦点を当て継続的に記録するための大規模の調査票調査を行った。第2に、上記の福島県内の調査対象者への半構造化面接を行った。これは、当事者の語り部活動を行うための準備作業である。放射能の健康影響についての不安の度合いやリスク対処行動において温度差がある母親が、原発事故後の経験を広く社会と共有できることを目指している。
著者
永幡 幸司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.406-417, 2000-06-01
被引用文献数
18

本研究では, 視覚障害者がある場所で聞こえてくる音からその場所を特定する際の過程の分析を行った。その結果, 視覚障害者が音から場所を特定する過程には, ある音の存在からおおざっぱに場所の特徴を特定した後に, 他の音の存在から詳しく場所を特定していくという「階層的」な過程と, ある場所で聞かれる特徴的な音すべてを総合的に判断することで場所を特定するという「並列的」な過程の2種類があり, 人によってそのどちらかを採用していることが分かった。また, どちらかの過程を採用するにせよ, 音から場所を特定する際に具体的に用いている音は, 人によって異なっていることが明らかとなった。
著者
上田 麻理 山内 勝也 永幡 幸司
出版者
公益社団法人 日本騒音制御工学会
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.418-424, 2012-12-01 (Released:2020-01-16)
参考文献数
15

街頭宣伝放送の適切な音量を示すことを目的として,視覚障害者を対象とした主観評価実験により,視覚障害者が街頭宣伝放送に求める音量を求めた。その結果,視覚障害者が広告アナウンスおよびBGMに求める音量は,環境騒音より10 dB程度低い音量であった。街頭宣伝放送を情報源として利用する視覚障害者は少なく,情報源として利用する場合も車両走行音等の安全のために利用するような聴覚情報とは異なり,最低限必要な音量に設定していることが分かった。現状の街頭宣伝放送は,視覚障害者が望む音量より15 dB以上高い音量であり,街頭宣伝放送の音量低減に向けた規制値等の検討が必要であることを示した。
著者
永幡 幸司 前田 耕造 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.77-84, 1996-02-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

俳句に詠み込まれた音環境を, 統計的に分析することで, 日本のサウンドスケープの時代変遷を調査した。日本におけるサウンドスケープの変化は, 江戸時代から昭和にかけては緩やかであったのに対し, ここ十数年の変化は急激であり, その変遷の内容は, 自然空間のサウンドスケープから人間の生活音によるサウンドスケープへというものであることが分かった。更に, 日本の音文化には, 音を季節の象徴として敏感に読みとり, そこから情緒を感じるというものがあったが, 時と共に, そのような文化が廃れていきつつあるということが示唆された。しかし, 寺の鐘や祭の音などによる, 社寺仏閣によっわるサウンドスケープは, 時代変遷の影響をあまり受けていない。
著者
土田 義郎 松井 利仁 永幡 幸司 塩川 博義 川井 敬二 森原 崇 船場 ひさお
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

音環境の評価には、量だけでなく意味が関与する。良好な音環境の実現には、文化的視点も必要であり、マネジメント思考も求められている。本研究で得た成果は次の3点である。(1)主観の影響や、居住地・世代による音源の聞き取り頻度の差といった点から、音環境全体の評価に関する成果を得た。(2)ガムラン音楽や商店街の音環境の他、海外(アジア地域)における鉄道騒音や道路騒音のように幅広い音環境に対して、質的な情報と量的な情報の相互作用についてテキスト・マイニングやPAC分析を用いて成果を得た。(3)個人の認識を可視化し、深層面接を行うツールを用い、認知構造の同定手法に関する成果を得た。
著者
鈴木 典夫 守山 正樹 福島 哲人 坂本 恵 永幡 幸司 丹波 史紀 山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.月1~2回の研究会及び学習会活動を行ってきた。2.中越地震被災地及び他地域の被災地(福岡市・神戸市など)でのヒアリングを行った。3.調査活動として、仮設住宅100世帯の面接による2年継続の「避難所及び仮設住宅における生活調査」、「生活のストレス調査」、「住宅再建に関する調査」、小学生を対象とした「震災体験・認識調査」及びワークショップを実施した。4.「被災住民の生活再建と災害復興に向けた課題」と題したシンポジウム、「もとめられる医療通訳者養成研修プログラムとは何か」の研究交流集会、「災害ボランティアシンポジウム」、他各調査の現地報告会を開催した。5.成果については、「日本音響学会」「国際騒音学会:Inter-Noise」「日本居住福祉学会」等において発表。論文としては、『厚生の指標』に「新潟県中越地震で被災した児童による避難生活で体験した出来事の評価」等を発表。その他、関連会合にて講演その他で公表した。6.中越沖地震が発生したため、再度ボランティアの調整、ニーズの拾い上げ等での情報収集をするとともに、研究成果を活かし、児童支援並びに地域復興支援にあたった。7.研究成果報告書(全159頁:80冊)を作成した。8.福島大学において、「災害と復興支援」という授業を開講した。
著者
福島 哲仁 永幡 幸司 嘉悦 明彦 守山 正樹
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

バリアフリーの視点で環境を整えることによって、痴呆を患っても、ユーモアのセンスと豊かな人間性が養われる事がわかった。デイケアにより、初期の不十分な状況の下で生じた不安または混乱から起こったトラブルが消え、彼ら自身と環境への自信が生まれていた。家族へのインタビューから、痴呆を患うことで、痴呆高齢者の隠された人間性が表に現れてくることが明らかになった。痴呆高齢者とその家族双方の「記憶障害」に対する受容は、家族間に生じるトラブルを防ぎ、痴呆高齢者の豊かな人間性を発展させる上で重要なプロセスと考えられた。ケアスタッフの視点、役割は、痴呆高齢者と家族の間のこのダイナミックなプロセスの進行にとって非常に重要である。幸福に今を生きることは、痴呆高齢者にとって重要であるが、将来への希望や豊かで人間的な生活への期待がさらに重要であることがわかった。痴呆高齢者の生活環境の改善について考える時、音の効果を無視することはできない。痴呆高齢者の生活環境に対する音の効果を明らかにするために、どのような種類の音が回想されるかを調べた。デイケアのリーダーが、擬声語を書いた大きなカードを示し、その擬声語を声を出して数回読み、その間に何を想像しているかを自由に話してもらった。この結果わかったことは、(1)一般的に、鳥の鳴く声や雨の音など自然にある音は、性を問わず擬声語から容易に回想される。(2)台所仕事の音は、女性によりよく回想される。(3)昔の生活習慣に関する音は、はっきりと回想される。(4)それぞれの生活史に関わる音は、深い感情を呼び起こし、鮮明に回想される。これらの結果は、痴呆症を患う高齢者が、痴呆を患う前に身近にあった音を容易に回想することができることを示している。