著者
金山 喜則 山木 昭平
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.578-586, 1993-09-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1
著者
立石 亮 井上 弘明 山木 昭平
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.586-592, 2001-09-15
被引用文献数
3 17

アボカド果実の軟化における各種グリコシダーゼの役割についてはほとんど知られていない.そこで, アボカド果実の軟化に伴う数種のグリコシダーゼ活性を測定した.β-ガラクトシダーゼ, α-L-アラビノフラノシダーゼおよびβ-グルコシダーゼ活性は果実の成熟に伴って上昇し, 特に, β-ガラクトシダーゼ活性の変動は果実の軟化と一致した.疎水性クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーによってβ-ガラクトシダーゼは3つのアイソフォームに分画され, これらをAV-GALI, AV-GAL IIおよびAV-GAL IIIとした.AV-GALIおよびAV-GALII活性は, 果実の追熟中のどのステージからも検出され, また, ほとんど変化しなかったのに対して, AV-GAL III活性は, 採取後4日目の果実ではじめて検出され, 果実の軟化に伴って増大した.アボカド果実の細胞壁から調整した4つの多糖類画分に対しての各アイソフォームの反応特性を調べたところ, AV-GALIおよびAV-GAL IIと比較してAV-GAL IIIはグアニジンチオシアン酸塩(GTC)可溶性の多糖類から, D-ガラクトース単糖を効果的に遊離した.AV-GAL Iは4つの多糖類画分のどれからも, D-ガラクトースを遊離することはできなかった.従って, アボカド果実における3つのβ-ガラクトシダーゼアイソフォームのうち, AV-GAL IIIがアボカド果実の軟化に最も重要な役割を果たしていると考えられる.
著者
山木 昭平 森口 卓哉
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.602-607, 1989
被引用文献数
12 33

ニホンナシ果実の糖の蓄積に重要な働きをするNAD<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素, ソルビトール酸化酵素, ソルビトール-6-P脱水素酵素, NADP<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素そしてインベルターゼ活性の季節変動と糖の蓄積との関係を検討した. ソルビトールをフルクトースに変換するNAD<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素がソルビトール関連酵素のなかで, 果実の生長, 成熟過程をとおして最も高い活性を示した. その活性は6月に上昇し, 果実の肥大に伴って減少し, 果実の成熟とともに再び増加した. この活性変動は未熟果でのフルクトースの蓄積に密接な関連を示し, この酵素はニホンナシ果実の糖の蓄積にたいして重要な役割を果していることが示唆された. ソルビトールをグルコースに変換するソルビトール酸化酵素はNDA<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素の約10分の1の活性を持ち, 幼果において高い活性を示し, 果実の肥大とともに減少し, その成熟に伴って再び増加した. しかしながらソルビトール-6-P脱水素酵素, NADP<sup>+</sup>ソルビトール脱水素酵素活性はほとんど検知出来なかった. これらのソルビトール関連酵素活性の季節変動に基づいて, 他のバラ科果実のソルビトール代謝と比較しながら, ニホンナシ果実のソルビトールの代謝機構及び糖の蓄積機構を論議した. また酸性インベルターゼ活性はソルビトール関連酵素活性よりもはるかに高く, 糖の転流, 蓄積に対する役割を論議した.
著者
山木 昭平 金山 喜則 山田 邦夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

インベルターゼ遺伝子の発現調節と肥大成長に対する役割を、ニホンナシ果実成長とバラ花弁の肥大成長によって検討した。(1)ニホンナシ果実より2つの液胞型インベルターゼの全長cDNA(PsV-AIV1,PsV-AIV2)をクローニングした。PsV-AIV1は細胞分裂の盛んな初期成長に関与し、PsV-AIV2は糖集積を伴う細胞肥大成長に強く関与した。(2)バラ花弁の肥大成長は、酸性インベルターゼ遺伝子の発現増加に伴う活性上昇により、スクロースがヘキソースに変換し、大きな膨圧を形成することによって生じる。そしてこの活性上昇はオーキシンによって引き起こされた。ソルビトール脱水素酵素遺伝子の発現調節とソルビトールの蓄積についてイチゴ果実を用いて検討した。(1)イチゴ果実のソルビトール脱水素酵素(NAD-SDH)の全長cDNA(FaSDH)をクローニングし、その活性も検知した。しかし、ソルビトールー6ーリン酸脱水素酵素遺伝子は存在したが、タンパク質と活性を検知できなかった。そしてNAD-SDH活性のキネティックスから、フルクトースの還元反応によってソルビトールが生成されることを明らかにした。(2)NAD-SDH活性はフルクトース、ソルビトール、オーキシンによって促進された。しかしmRNA量の大きな変化はなかった。(3)NAD-SDHのmRNAはイントロンを含んだpre-mature mRNAとmature mRNAを含んでおり、フルクトース、ソルビトール、オーキシンによる活性促進は転写後のスプライシング速度を促進することによって生じた。以上のように、インベルターゼとソルビトール脱水素酵素はバラ科植物の肥大成長、糖集積に密接に関わり、それらの基質や植物ホルモンによって発現が調節されていることを明らかにした。