著者
渡辺 慶一 井上 弘明 立石 亮 司馬 肇 桜井 英敏 有賀 豊彦 名取 正彦 SABETA C.T. DUBE B.N.
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.186-191, 2000-09-01
被引用文献数
1

ジンバブエで収集したトウガラシ5系統と日本の3品種の果実のカプサイシノイドを高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて分析した.カプサイシノイドはノルジヒドロカプサイシン, カプサイシン, ジヒドロカプサイシン, バニラリデカンアミド, ホモジヒドロカプサイシンおよびホモジヒドロカプサイシンの異性体が検出されたが, カプサイシンの占める割合が多かった.カプサイシノイドは果肉より胎座に多く含まれていた.日本の'八房'果実の胎座の総カプサイシノイドは5105.2mg/100gD.Wであったが'ししとう'では非常に少なかった.ジンバブエで収集した果実が小さく, 直立するB, C, D, E系統の果実の胎座の総カプサイシノイド含量は高く, '八房'の5倍の値を示した.
著者
水野 真二 成川 昇 近藤 春美 上吉原 裕亮 立石 亮 窪田 聡 新町 文絵 渡辺 慶一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.109-115, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
12

アントシアニン色素を多く含み,果実が濃赤色を呈する促成栽培用イチゴ品種 ‘真紅の美鈴’ を育成した.神奈川県における試験栽培において,本品種は ‘とちおとめ’ より花芽分化がやや遅く,定植適期は9月20日頃以降であると考えられた.果実の硬度は ‘とちおとめ’ 並みに高く,糖酸比は20を超え,還元糖のグルコースとフルクトースを比較的多く含んでいた.果実のアントシアニン色素の含量は新鮮重1 g当たり185 μgであり,母親の ‘ふさの香’ および父親の ‘麗紅’ の約2倍,‘とちおとめ’ の約3倍であった.一方,果汁の抗酸化活性には‘真紅の美鈴’と従来品種で大きな差はみられず,アントシアニンの抗酸化活性への寄与度は低いと推定された.アントシアニンの組成はペラルゴニジン配糖体が80%以上を占めており,検出された5成分の構成比は ‘とちおとめ’ や親品種と概ね同等であった.このことから,‘真紅の美鈴’ が濃赤色を呈するのはアントシアニン組成の影響ではなく,色素の含量が顕著に多いためと考えられた.
著者
小泉 丈晴 工藤 暢宏 立石 亮 野村 和成 井上 弘明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-16, 2008 (Released:2008-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

‘愛知早生ブキ’などの三倍体品種の雌株に花粉稔性のある群馬県在来‘水ブキ’(雄株)を交配し,実生作出の可能性について明らかにした.さらに,‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)との交配により,得られた実生の特性を明らかにした. 1. フキの三倍体品種である‘愛知早生ブキ’,徳島県在来‘水ブキ’および‘吉備路’の雌株に群馬県在来‘水ブキ’(雄株)を交配することにより稔実種子が得られた.‘愛知早生ブキ’では採取した種子の2.0%,徳島県在来‘水ブキ’と‘吉備路’の種子では0.4%の出芽がみられた. 2. ‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生は,交配親に比べて,葉柄の生育が旺盛なものや葉柄部にアントシアニンの発生が無いものがみられた. 3. フローサイトメトリーによる相対的核DNA量の測定から‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生について倍数性を推定すると,‘AM-35’は二倍体,‘AM-1’と‘AM-51’は異数体と考えられた. 4. ‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生から選抜した‘AM-1’は,早生性で葉柄部のアントシアニンの発生は少なく,収量も多いことから,育種目標に適した有望な系統であった.この組み合わせ交配から得られた実生個体の選抜により,新たな葉柄収穫用品種が育成できる可能性があると考えられた.
著者
立石 亮 井上 弘明 山木 昭平
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.586-592, 2001-09-15
被引用文献数
3 17

アボカド果実の軟化における各種グリコシダーゼの役割についてはほとんど知られていない.そこで, アボカド果実の軟化に伴う数種のグリコシダーゼ活性を測定した.β-ガラクトシダーゼ, α-L-アラビノフラノシダーゼおよびβ-グルコシダーゼ活性は果実の成熟に伴って上昇し, 特に, β-ガラクトシダーゼ活性の変動は果実の軟化と一致した.疎水性クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーによってβ-ガラクトシダーゼは3つのアイソフォームに分画され, これらをAV-GALI, AV-GAL IIおよびAV-GAL IIIとした.AV-GALIおよびAV-GALII活性は, 果実の追熟中のどのステージからも検出され, また, ほとんど変化しなかったのに対して, AV-GAL III活性は, 採取後4日目の果実ではじめて検出され, 果実の軟化に伴って増大した.アボカド果実の細胞壁から調整した4つの多糖類画分に対しての各アイソフォームの反応特性を調べたところ, AV-GALIおよびAV-GAL IIと比較してAV-GAL IIIはグアニジンチオシアン酸塩(GTC)可溶性の多糖類から, D-ガラクトース単糖を効果的に遊離した.AV-GAL Iは4つの多糖類画分のどれからも, D-ガラクトースを遊離することはできなかった.従って, アボカド果実における3つのβ-ガラクトシダーゼアイソフォームのうち, AV-GAL IIIがアボカド果実の軟化に最も重要な役割を果たしていると考えられる.