著者
山田 廣成
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2001

1.超小型電子蓄積型高輝度X線発生装置の開発に成功した。X線発生専用マシンとして外径約0.5m、電子エネルギー6MeVの電子蓄積リングを開発した。X線強度は、目標を上回り、10^<12>光子/s,mrad2,mm2,0.1%bandを達成した。運転の自動化や電流値安定機構を導入して安定な運転を実現し、利用研究をルーチンで実施できる状態であり、COE放射光生命科学研究に貢献している。2.X線イメージングでは、25ミクロンロッドターゲットを用いて最大20倍拡大の屈折コントラスト撮像を実現した。放射光を勝る極めて強いエッジ強調が現れ、実物肺の中に埋め込んだウレタン製腫瘍の形状や血管の状態を鮮明に撮像した。30cm厚コンクリートの非破壊検査では、従来法では見えなかった亀裂や砂利の密度を造影剤無しで鮮明に捉えた。資料を光源点の近くに置くことにより、70倍の拡大撮像でも、ピントがぼけないことを確認した。3.Si及びGe結晶をターゲットとしてシンクロトロンの電子軌道上に設置し、結晶面を20°に傾けたとき、0°及び30°方向に10〜13keV単色X線を取り出すことに成功した。X線強度が10^<10>光子Brightnessで有ることを確認した。この強度はタンパク質構造解析を行うのに十分である。現在、蛋白質構造解析BLの開発(COEによる)を進めている。4.遷移放射機構を用いてコヒーレントな軟X線の発生に成功した。みらくる6Xを用いた場合その強度は、校正された検出器を用いて、5mWあることを確認した。みらくる20を用いる場合には、1Wに達することが計算上明らかになった。この値は、小型放射光装置AURORAと比較して、2桁大きな値である。5.光蓄積リング型自由電子レーザーの研究では、環状ミラーの導入により、明らかな増幅を観測した。増幅の結果、強度の蓄積電流値依存性で2乗に比例することが観測された。光蓄積リング型レーザー発振ではない他の原因によるコヒーレント放射光発生の可能性を否定できないが、環状ミラーの導入によりビームに何らかのモジュレーションがかかったと考えている。平均100mWの中・遠赤外光出力は、利用実験を行うのに十分なパワーである。分光器にFTIRを導入して、水、蛋白質、ガン組織などの遠赤外線吸収分光をルーチンでこなすことが出来るに至り、THz研究者と共同研究を推進するに至っている。
著者
山田 廣成 霜田 光一 高山 猛 伊藤 寛 保坂 将人 浜 広幸 西沢 誠治 三間 國興
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

リングは、97年9月までにほとんどの要素の製作と単体テストを完了し、岡崎分子研の入射器室にて組立を開始して11月までに完成した。1ターンコイルであるパ-タベータの4500A励磁と加速空洞への平均500Wパワー投入に成功し、入射実験を開始した。クリスマスイブには少なくとも100μsの間電子が周回するのを確認した。蓄積電流値はあきらかではないが、遠赤外線モニターはピーク値で300mW以上を示した。パ-タベータによる電子のキャプチャーを確認したわけである。高周波加速は、ランプアップ時の反射の調整はまだ成功していない。パ-タベータは2台設置しおり、1台は外側の電子を外側へ、1台は内側の電子を外側へキックしている。パルス電源は、sin半波を生成し、ピーク電流4500Aのとき30kVの電圧が発生する。幅は4μsである。我々は、これをさらに磁気圧縮してパルス幅を0.4μsにすることに成功した。加速空洞は、特異な形をしているが、基本的にはリエントラント型であり、TM01モードの発生に成功した。加速周波数は、ハ-モニクス8に対して2.45GHzで、ソースとしてCWマグネトロンを使用している。2台の加速空洞へのパワーをT型同軸管で分岐して投入している。2台の加速空洞はカップリングしている状態であるために、2台の固有周波数は、正確に一致していなければならない点と、同軸管のカップリングも正確に等しくしなければならないが、我々はこの調整方法を見いだし、パワーの長時間投入に成功した。ミラーは、SiC焼結体で製作し、その真円度を1ミクロン以下に押さえることができた。ミラーを設置したレーザー発振実験は今後のスケジュールを待っている状態であり、残念ながら期間内に実験を終えることができなかった。一方、ハードX線の発生実験を東大物性研SORで行った結果、電子軌道に細線を挿入しても数秒のビーム寿命があることを確認した。これにより、高輝度小型X線源の道が開けた。