著者
霜田 光一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.303-305, 2006-12-13 (Released:2017-02-10)
参考文献数
4

水分子の振動と回転スペクトルによる共鳴吸収は赤外域にあるので,電子レンジのマイクロ波の吸収に関与するのは,液体の水の誘電率の異常分散に伴う吸収である。有極性分子は印加電場の方向に統計的に配向して,固体や液体の分極をつくるが,配向分極の生成・消滅には時間的遅れがある。この誘電緩和に関するDebyeの理論によれば,水はマイクロ波の広い周波数範囲で強い吸収を示す。これが水分をもつ物質が電子レンジで加熱される理由である。そして,無極i生分子からなる物質は電子レンジの加熱が弱い。
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.418-421, 2005-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
13

今井先生はファラデー流の電場と磁場の概念から出発して, 電磁気の諸法則を運動量・角運動量およびエネルギーの保存則から導くという電磁気学を構成した.そこで, ローレンツ力のパラドックスの考察から, 電磁運動量とポインティング・ベクトルの意義と重要性を考える.そして電磁場の近接相互作用を基礎にすると, 電磁場は複素振幅で表され, 電場と磁場よりもベクトル・ポテンシャルが基本になると考える.
著者
霜田 光一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.113-116, 1977-08-20 (Released:2017-02-03)
被引用文献数
1

ローレンツ力の反作用は,高校程度の電磁気学の中には見出されない場合がある.それがどこにどのように働くかを考察し,「変位電流(電束電流)もローレンツ力を受ける」と考えられるという結論が得られた.この結論は,変位電流の概念をより具体的にするだけでなく,電気振動などから電磁波が放出される機構を物理的に説明する根拠にもなるだろう.
著者
霜田 光一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.929-933, 2000-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
8

電波分光学とエレクトロニクスの組み合わせから, 1954年にメーザーが生まれ, 1960年にはレーザーが現れた.それによって非線形光学をはじめとして,量子エレクトロニクスと光エレクトロニクスが急速に発展した.その結果,光通信などの光技術の躍進と,レーザー分光やレーザー冷却などから基礎物理学や分子生物学の革新がもたらされた.これから21世紀に向かって,高度情報化社会における光・量子エレクトロニクスの意義と,それがもたらす科学技術の新しい流れについて考察する.
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.108-109, 2021-07-15 (Released:2021-08-15)

電磁気学の教科書に,電場を表す電気力線の図や磁場を表す磁力線の図は出ているが,ベクトルポテンシャルの図はない.そこで,電磁気学の教育に利用されるようなベクトルポテンシャルの図をいくつか描いてみた.
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.114-115, 2019-11-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
1
被引用文献数
1

1.物理教育とは?教育とは “教え育てること” であるから,物理教育とは物理を教え育てることである.本誌の創刊号で日本物理学会の伊達宗行会長 (当時) は,日本の教育は教え育てるであるのに
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.387-390, 2022-06-05 (Released:2022-06-05)
参考文献数
7

歴史の小径物理学会設立前後の思い出
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.591-598, 2015-08-05 (Released:2019-08-21)

19世紀までに幾何光学と波動光学はほとんど完成し,光はマクスウェル方程式で記述される電磁波であることが確認されていた.そこで,光学の研究はカメラや顕微鏡などの光学機械の新しい考案や,レンズの設計と収差の理論など,応用物理学的研究が主流になっていた.アインシュタインはプランクのエネルギー量子の概念を発展させて,1905年,光電効果を説明する光量子仮説を提出した.光の周波数(振動数)をνとすると,光はエネルギーhνをもつ粒子として振る舞う.この粒子を光量子または光子と呼ぶ.光は波動性をもつけれども,場合によっては粒子性を示すと考えなければならなくなった.これを契機に量子論が展開され,原子による光の放出と吸収は上下2つの定常状態の間の遷移によると考えられた.1916年,アインシュタインは遷移確率を計算して光の放出には自然放出と誘導放出の2つの過程があることを示した.しかし,通常の物質では誘導放出よりも吸収が大きく,正味の誘導放出を観測することはできなかった.原子または分子の反転分布状態では,正味の誘導放出が得られるという議論はあったが,量子論の世界は人為的に操作することはできないと信じられていた.一方において,1906年に発明された真空管を中心に,無線技術とエレクトロニクスが進歩し,ラジオ放送が1920年に始まった.そして,第2次世界大戦中に軍用レーダーの研究に従事した物理学者が,戦後電波分光学の研究を始めた.エレクトロニクスを用いて,核磁気共鳴や分子のマイクロ波スペクトルが実験された.タウンズ(C. H. Townes)はアンモニアの分子線で多数の反転分布分子を空洞共振器に入れれば分子発振器ができるだろうと考えた.1951年のこの着想に基づく実験は1954年に成功し,メーザーと呼ばれるようになった.メーザーは電子管では発生できない短波長のミリ波,サブミリ波,赤外線,可視光線,紫外線の発振器として期待された.これらの高周波メーザーは光メーザー(optical maser)と呼ばれていたが,1960年に実現し,その後は簡潔にレーザー(laser)と呼ばれている.レーザーは時間的にも空間的にも高度にコヒーレントな光を発生する.そこで光の発振スペクトル幅1ヘルツ,パルス幅1フェムト秒,尖頭出力1ペタワットも得られる.レーザー光の指向性は極度に鋭いので,集光すれば,超高光強度が得られる.レーザーはこのように画期的に優れた特性をもっているので,これまでに多種類のレーザーが開発され,その高性能化が進んでいる.その応用はレーザー通信,レーザー加工,レーザー計測などから始まり,今では科学技術のあらゆる方面に広がり,見えないところでレーザーが使われている.たとえばコンピューターもテレビも新幹線もジェット機も,レーザーが不可欠な要素になっている.レーザーは光学を一新し,非線形光学,量子光学,量子情報科学などだけでなく,ボーズ・アインシュタイン凝縮,超高光子密度科学,高温高圧物性,生体細胞のin vivo超解像イメージングなど,新しい研究を創発している.
著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.179-184, 1996-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
34
被引用文献数
1
著者
霜田 光一
出版者
The Laser Society of Japan
雑誌
レーザー研究 (ISSN:03870200)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.531-535, 1997-07-15 (Released:2010-02-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1
著者
霜田 光一
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.406-409, 1992-03-05 (Released:2009-10-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
霜田 光一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.303-305, 2006
参考文献数
4

水分子の振動と回転スペクトルによる共鳴吸収は赤外域にあるので,電子レンジのマイクロ波の吸収に関与するのは,液体の水の誘電率の異常分散に伴う吸収である。有極性分子は印加電場の方向に統計的に配向して,固体や液体の分極をつくるが,配向分極の生成・消滅には時間的遅れがある。この誘電緩和に関するDebyeの理論によれば,水はマイクロ波の広い周波数範囲で強い吸収を示す。これが水分をもつ物質が電子レンジで加熱される理由である。そして,無極i生分子からなる物質は電子レンジの加熱が弱い。
著者
霜田 光一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.542-544, 2001-12-25 (Released:2017-02-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

インピーダンス整合はエネルギーの有効利用を考えるのに重要な概念である。そして電気回路だけでなく,力学系,音響,波動,光の反射などを理解するのにも必要である。これまで,インピーダンス整合条件を求めるには微分演算が必要であると思われて敬遠されていたきらいがあるが,微分を使わないでも,作図的に,幾何学的に,または代数的に求めることができ,それによって一層深い理解が得られる。ここでは簡単にするため,直流回路について述べる。