- 著者
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田口 正樹
小川 浩三
石部 雅亮
山田 欣吾
石川 武
石井 紫郎
村上 淳一
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
この共同研究では、「普遍的秩序」、「個別国家」、「地方」という三つのレベルのまとまりをとりあげて、それらにおける「我々」意識(共属意識)の生成・発展とそこで法が果たした役割を考察しようとした。その際、西洋古代から近代に至る展開を見通す通史的視座を保つこと、異なるレベルの間の相互作用にも注目すること、西洋と日本との間の比較によって両者の特徴を認識すること、などに特に注意が払われた。具体的成果のうちからいくつかを摘記すれば、西洋古代に関しては、古代ローマ国家における帝国法と属州法の関係が検討され、一方で「共通の祖国としてのローマ」観念の高揚と帝国法の地中海世界全体への普及が見られるものの、他方で地方・都市ごとの法の存続が広く想定され、帝国法自体の変質の可能性も含めて、複雑な相互関係が存することが示唆された。西洋中世に関しては、9,10世紀の皇帝権とオットー1世の帝国についてその性格が検討され、ドイツにおける共属意識が普遍的帝国の観念と不可分な形で成長するという現象の歴史的基礎が解明された。また中世ドイツにおける重要な法概念であるゲヴェーレに関して、13世紀前半のザクセンシュピーゲルにおけるその「原像」とその後の変容が確認され、広域に普及した法作品と地方・都市ごとの法との関係が考察された。西洋近世・近代に関しては、帝国国法論の代表的論者ピュッターの中世ドイツ国制史像が詳しく検討されて、皇帝権・教皇権という普遍的存在を不可欠の要素としつつ内部に多くの個別国家を併存させるという帝国国制像が確認され、普遍的秩序と国家・地方が癒合したドイツの国制とそこでの「我々」意識の特徴が明らかになった。最後に、日本に関しては、穂積陳重の比較法学と当時の英独の法学との関係が検討され、明治の代表的法学者が日本法を世界の法体系とその発展の中で、いかに位置づけようとしたかが、解明された。