著者
飯島 有哉 山田 達人 桂川 泰典
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.388-400, 2020-12-30 (Released:2021-01-16)
参考文献数
39
被引用文献数
3

本研究は,教師の生徒に対する賞賛行動が,生徒の学校生活享受感情および教師自身のワーク・エンゲイジメント(WE)に与える効果とそのプロセスについて検討することを目的とした。公立中学校教師4名に4週間の賞賛行動の自己記録を依頼し,介入に伴う生徒267名および教師自身の変化を測定した。生徒に対する質問紙調査および教師に対する生徒の学校生活の様子に関するインタビュー調査の分析結果から,教師の賞賛行動に伴うほめられ経験の増加がみられた学級において生徒の学校生活享受感情の向上が認められた。教師自身においては,単一事例実験法による検討およびインタビューデータの分析結果から,賞賛行動の増加に伴うWEの向上が認められ,その変化プロセスとして,賞賛行動の実行に伴う【効果の体験】が直接的に【WEの向上】に結びつくものと,【生徒認知の変化】を介するものの2種類のプロセスが見出された。本研究の結果から,教師の賞賛行動が生徒および教師双方の学校適応の促進に寄与することが示され,その効果プロセスにおける相互作用性および,教師の主観的な賞賛行動と生徒のほめられ経験の一致の重要性が考察された。