著者
桂川 泰典 松葉 百合香 飯島 有哉 千葉 一輝 原田 陸
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.148-158, 2022-11-25 (Released:2022-11-25)
参考文献数
32

COVID-19の世界的流行にともない,VCP (videoconferencing psychotherapy)が急速に普及しているが,日本におけるVCPの利用実態に関する研究知見は限られている。また,VCPにおけるドロップアウト要因の検討は不十分であり,特にドロップアウトリスクの高まる面接初期に関する研究はなされていない。本研究では,民間企業において実施されたVCPデータ(4,921–3,470名)を用いて,利用実態の記述を行うとともに,1–2回目のセッション間のドロップアウト/継続を予測する説明変数の探索を目的として階層的ロジスティック回帰分析を行った。その結果,セラピストの臨床経験年数が長いと継続しやすい傾向,クライエントがカウンセリングセッション終了時に「効果を実感」すると継続しにくく,カウンセリングに対する「効果の予感」を感じると継続しやすい傾向が示された。
著者
元木 咲葵 桂川 泰典 飯島 有哉
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.42-52, 2023-06-07 (Released:2023-06-07)
参考文献数
33

近年,不登校の中でも「無気力型不登校」の生徒数が増加傾向にある。無気力型不登校は,葛藤を抱える情緒混乱型不登校とは区別されており,無気力の近接概念である「アパシー」の状態像を含むものであると予想される。本研究では,無気力型不登校へと至る生徒の心理的な状態像を捉えることを目的とした測定指標として,中学生におけるアパシー傾向を測定する尺度を作成し,登校回避行動および出欠席状況との関連から妥当性の検討を行った。その結果,研究1では「気力の低下」「他者への同化」「対人交流の回避」「将来展望のなさ」の4因子から成るアパシー傾向尺度が作成され,信頼性および収束的妥当性が確認された。研究2では,交差妥当性および基準関連妥当性(併存的妥当性,予測的妥当性)が確認された。以上より,無気力型不登校の前駆状態を説明する概念としてアパシーを用いる有効性が示された。
著者
飯島 有哉 上村 碧 桂川 泰典 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.103-114, 2021-03-15 (Released:2021-03-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1

This study (1) developed the Japanese version of the Inventory of Statements About Self-injury (ISAS), a tool for assessing the functions of nonsuicidal self-injury (NSSI), and (2) classified NSSI in adolescents based on its functions. We administered a questionnaire to a community sample and gathered 592 responses, including those of 267 undergraduates who had experienced NSSI. The results of factor analysis indicated that the Japanese version of the ISAS was different from the original and was composed of three factors: “Distress coping functions,” “Interpersonal influence functions,” and “Identity maintenance functions.” Cluster analysis of the Japanese version of the ISAS scores indicated four clusters: “Habitual cluster,” “Distress coping cluster,” “Overlapped identity maintenance cluster,” and “Overlapped interpersonal influence cluster.” Each cluster’s clinical features indicated that the more the functions overlapped, the more severe were risks of suicide, anxiety, and depression. These results indicated that the significance of NSSI functions’ assessment was related to their overlap. These results suggested the usefulness of the functional approach to treatment.
著者
飯島 有哉 山田 達人 桂川 泰典
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.388-400, 2020-12-30 (Released:2021-01-16)
参考文献数
39
被引用文献数
3

本研究は,教師の生徒に対する賞賛行動が,生徒の学校生活享受感情および教師自身のワーク・エンゲイジメント(WE)に与える効果とそのプロセスについて検討することを目的とした。公立中学校教師4名に4週間の賞賛行動の自己記録を依頼し,介入に伴う生徒267名および教師自身の変化を測定した。生徒に対する質問紙調査および教師に対する生徒の学校生活の様子に関するインタビュー調査の分析結果から,教師の賞賛行動に伴うほめられ経験の増加がみられた学級において生徒の学校生活享受感情の向上が認められた。教師自身においては,単一事例実験法による検討およびインタビューデータの分析結果から,賞賛行動の増加に伴うWEの向上が認められ,その変化プロセスとして,賞賛行動の実行に伴う【効果の体験】が直接的に【WEの向上】に結びつくものと,【生徒認知の変化】を介するものの2種類のプロセスが見出された。本研究の結果から,教師の賞賛行動が生徒および教師双方の学校適応の促進に寄与することが示され,その効果プロセスにおける相互作用性および,教師の主観的な賞賛行動と生徒のほめられ経験の一致の重要性が考察された。