著者
岡村 寿代 金山 元春 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.233-243, 2009-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、集団社会的スキル訓練を78名(男子43名、女子35名)の幼児に実施し、その効果を検討した。その際、訓練前の社会的スキルの程度によって社会的スキルの高群、中群、低群の3群に分類し、どのような特徴をもつ幼児に訓練効果がみられるかの検討を行った。3つの標的スキル(上手に聞く、仲間入り、あたたかい言葉かけ)を訓練するために、6〜8セッションからなる集団社会的スキル訓練が行われた。訓練は、教示、モデリング、行動リハーサル、フィードバック、強化からなるコーチング法の手続きに従って行われた。自由遊び場面へのスキルの般化を促進するために、教室でのスキル訓練と自由遊び場面でのスキル訓練を交互に繰り返す訓練プログラムを計画した。その結果、自然な自由遊び場面での行動観察のデータによれば、社会的スキル低群と中群において協調的行動の増加が認められた。また、担任教師による社会的スキル評定によれば、社会的スキル低群において、社会的スキル領域総得点および社会的働きかけスキル得点の増加が見いだされた。これらの結果から、本研究で実施された集団SSTは、社会的スキル低群だけではなく、すでに社会的スキルを獲得している中群にも有効であったことが示された。
著者
岡村 寿代 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.137-147, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、攻撃的な幼児を対象として、社会的スキル訓練(SST)を実施し、訓練の般化効果について検討した。さらに、訓練に参加した仲間が訓練対象児の社会的スキルの獲得にどのように貢献しているのかを検討した。3つの標的スキル(エントリースキル、適切なやりとりスキル、断られたときの対処スキル)を訓練するために16セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、訓練対象児は、仲間に対する社会的働きかけ、仲間からの社会的働きかけを増加させ、攻撃行動を減少させた。さらに3か月後にもこれらの訓練効果が維持していることが示された。また、訓練対象児は仲間協力児だけではなく、訓練に参加していない仲間へも社会的働きかけを向けていたことが確認された。一方、訓練に参加した仲間の役割については、この仲間協力児も訓練対象児と持続的にやりとりをしていなかったことが明らかになった。
著者
岡村 寿代 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.75-87, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、働きかけの促進と逸脱行動の低減を目的とした引っ込み思案幼児への社会的スキル訓練(social skills training;以下、 SST)を行った。ターゲットスキルは、対象児と仲間や保育士との相互作用を行動分析することによって選定し、ターゲットスキルが対象児の仲間への働きかけを促すかどうかを検討した。2つのターゲットスキル(話を聞くスキル、質問スキル)が選定され、7セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、対象児はSST場面において質問スキルを増加させ、 SST期の自由遊び場面においても仲間への働きかけを増加させた。また、対象児は集団活動場面からの逸脱行動を減少させ、集団活動に参加する際は、仲間をモデルとして活動に参加するようになっていた。SSTによる効果は、教師評定によっても示され、SST後は、教師評定得点がポジティブに変化していた。
著者
清水 健司 岡村 寿代
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.23-33, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
33
被引用文献数
5 4

本研究は, 対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデルにおける認知特性の検討を行うことを目的とした。認知特性指標は社会恐怖認知モデル(Clark & Wells, 1995)の偏った信念を参考に選定された。調査対象は大学生595名であり, 対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデル尺度短縮版(TSNS-S)に加えて, 認知特性指標である完全主義尺度・自己肯定感尺度・自己嫌悪感尺度・ネガティブな反すう尺度・不合理な信念尺度・自己関係づけ尺度についての質問紙調査が実施された。その結果, 分析1では各類型の特徴的な認知特性が明らかにされ, 適応・不適応的側面についての言及がなされた。そして, 分析2では2次元モデル全体から見た認知特性の検討を行った。特に森田(1953)が示した対人恐怖に該当すると思われる「誇大-過敏特性両向型」と, DSM診断基準に準じた社会恐怖に該当すると思われる「過敏特性優位型」に焦点を当てながら詳細な比較検討が行われた。
著者
清水 健司 岡村 寿代
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.23-33, 2010-03-30
被引用文献数
1 4

本研究は,対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデルにおける認知特性の検討を行うことを目的とした。認知特性指標は社会恐怖認知モデル(Clark&Wells,1995)の偏った信念を参考に選定された。調査対象は大学生595名であり,対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデル尺度短縮版(TSNS-S)に加えて,認知特性指標である完全主義尺度・自己肯定感尺度・自己嫌悪感尺度・ネガティブな反すう尺度・不合理な信念尺度・自己関係づけ尺度についての質問紙調査が実施された。その結果,分析1では各類型の特徴的な認知特性が明らかにされ,適応・不適応的側面についての言及がなされた。そして,分析2では2次元モデル全体から見た認知特性の検討を行った。特に森田(1953)が示した対人恐怖に該当すると思われる「誇大-過敏特性両向型」と,DSM診断基準に準じた社会恐怖に該当すると思われる「過敏特性優位型」に焦点を当てながら詳細な比較検討が行われた。