著者
高橋 稔 武藤 崇 多田 昌代 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-46, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、Hayes, Bissett et al。(1999)と同様に、コールド・プレッサー課題の耐性時間の増大に必要なrationale(講義とエクササイズ)の条件について検討することを目的とした。被験者28名を無作為に3群に分け、異なるrationaleを実施し、その効果を比較検討した。その群とは、1)A-A群(Acceptance and Commitment Therapy(以下、 ACTとする)の講義とacceptanceに関するエクササイズ)、2)A-F群(ACTの講義と思考抑制の逆効果に関するエクササイズ(FEARエクササイズ))、3)プラシボ群であった。その結果、ポストテストにおいてA-A群、A-F群ではACTに関する理解度が有意に増加した。また、コールド・プレッサー課題の耐久時間はA-A群のみが有意に増加した。これより、コールド・プレッサー課題の耐性時間を増大するためには、ACTに関する知識だけではなく、acceptanceに関するエクササイズが必要であることが示唆された。最後に、本研究の手続きに関する応用可能性と今後の課題が議論された。
著者
大月 友 松下 正輝 井手 原千恵 中本 敦子 田中 秀樹 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.89-100, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、社会的状況や自己に対する潜在的連合がスピーチ場面における個人のどのような側面の不安反応と関連するか、SocialPhobiaScale(SPS)やFearofNegativeEvaluationScale(FNE)といった顕在指標との比較を通して検討することであった。32名(男性16名・女性16名)の大学生に、Go/No-goAssociationTask(GNAT)で潜在的連合の測定を行い、覚醒水準の高い15名をGNATの分析対象者とした。また、スピーチ場面での不安反応として、認知的反応(思考反応)、主観的緊張感・不安感、生理的反応、行動的反応の各側面が測定された。実験の結果、顕在指標はスピーチ時の認知的側面や主観的側面の不安反応と関連しているのに対して、潜在的連合は生理的側面や行動的側面の一部の不安反応と関連していることが示された。これらの結果から、社会不安のアセスメントにおける潜在的連合の有用性が示唆された。
著者
竹村 洋子 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.73-84, 2003-03-31 (Released:2019-04-06)

通常学級で発達障害児が示すいわゆる問題行動は回避行動としての機能をもち、教師の評価と関連した周囲との相互作用の中で、生起・維持している可能性がある。本研究では、攻撃行動を示す児童を対象に対人回避の低減を標的とした個別指導を行い、個別指導場面での児童の行動変化が、授業場面における児童と教師の行動、児童とのかかわりにおいて生じる問題に対する教師の評価に及ぼす影響について検討した。個別指導場面での児童の行動変化に伴い、授業場面での問題行動が低減し、教師への視線が増加した。教師が児童に接近する行動の生起頻度も増加したがその生起頻度は不安定で、児童の問題行動は再度増加傾向を示した。児童とのかかわりにおいて生じる問題に対する教師の評価については認知的評価尺度影響性因子の得点が増加、コーピング測定尺度各因子の得点が減少し、問題が示された。児童との相互作用における教師の評価と行動の関連について論じられた。
著者
大月 友 青山 恵加 伊波 みな美 清水 亜子 中野 千尋 宮村 忠伸 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.131-142, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、アスペルガー障害をもつ不登校中学生に対して、社会的相互作用の改善を目指した社会的スキル訓練(SST)が実施された。対象生徒の社会的相互作用に対して行動分析を行った結果、反応型としての社会的スキルをもっているものの、周囲の刺激を弁別刺激として適切に反応できていないために相互作用として機能していない、と分析された。そこで、他者の刺激に適切に反応することにより、社会的相互作用の改善が可能となると仮説をたて、そのようなスキルを形成することを目的としたSSTを実施した。 SST実施に当たっては、対象生徒が興味をもつような訓練場面(推理ゲーム)を設定し、その中でのやりとりを通して訓練が行われた。その結果、訓練場面における標的行動の生起率が増え、自由場面における社会的相互作用にも改善が確認された。これらの結果から、アセスメントおよび介入の妥当性が考察された。
著者
住田 友行 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.135-143, 2013-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、同胞に対する粗暴な行動が問題とされた自閉性障害児1名を対象に、消去(extinction:EXT)と他行動分化強化(differential reinforcement of other behavior:DRO)手続きを用いたアセスメントに基づいて介入を行い、その効果を検討することであった。機能的アセスメント(MAS、両親へのインタビュー、直接観察)では、粗暴な行動の強化子として社会的注目が推定された。そのため、EXTとDRO手続きを用いたアセスメントでは、粗暴な行動に関してEXT条件とDRO条件をセッション内で入れ替え、粗暴な行動の生起インターバル率を比較した。その結果、粗暴な行動の生起インターバル率は、EXT条件よりもDRO条件で低いことが示された。これらのアセスメントに基づいて、介入では代替行動分化強化(differential reinforcement of alternative behavior:DRA)手続きを用いた。その結果、粗暴な行動の生起インターバル率は減少傾向を示した。以上のことから、同胞への粗暴な行動に対する有効なアプローチの方法に関して検討した。
著者
岡村 寿代 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.75-87, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、働きかけの促進と逸脱行動の低減を目的とした引っ込み思案幼児への社会的スキル訓練(social skills training;以下、 SST)を行った。ターゲットスキルは、対象児と仲間や保育士との相互作用を行動分析することによって選定し、ターゲットスキルが対象児の仲間への働きかけを促すかどうかを検討した。2つのターゲットスキル(話を聞くスキル、質問スキル)が選定され、7セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、対象児はSST場面において質問スキルを増加させ、 SST期の自由遊び場面においても仲間への働きかけを増加させた。また、対象児は集団活動場面からの逸脱行動を減少させ、集団活動に参加する際は、仲間をモデルとして活動に参加するようになっていた。SSTによる効果は、教師評定によっても示され、SST後は、教師評定得点がポジティブに変化していた。
著者
大月 友 権上 慎 杉山 雅彦
出版者
広島国際大学心理臨床センター
雑誌
広島国際大学心理臨床センター紀要 (ISSN:13482092)
巻号頁・発行日
no.4, pp.12-20, 2006-03-20

本研究は,最新の潜在的態度測定パラダイムであるIATとGNATに対して,①再検査法による信頼性の検討を行うこと,②課題への慣れと遂行成績および測定結果(IAT得点・GNAT得点)との関連を検討することを目的として行われた。IAT・GNAT課題として,花の名前・昆虫の名前・肯定語・否定語からなるflower/insect-IATとflower-GNATを作成し,29名の実験協力者に対して1週間間隔でそれぞれ4回実施した。その結果, IAT (r=.38~.43),GNAT (r=.23~.48) ともに,他の認知課題と比較して高い信頼性が確認された。また課題への慣れに関しては, IATは複数回の実施により反応速度は速くなるがIAT得点に有意な変化はないこと,GNATは反応速度にもGNAT得点にも有意な変化は生じないことが示された。これらの結果から,IAT,GNATの測度としての信頼性と今後の課題を考察した。