著者
梅崎 重夫 福田 隆文 齋藤 剛 清水 尚憲 木村 哲也 濱島 京子 芳司 俊郎 池田 博康 岡部 康平 山際 謙太 冨田 一 三上 喜貴 平尾 裕司 岡本 満喜子 門脇 敏 阿部 雅二朗 大塚 雄市
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.13-27, 2014 (Released:2015-03-26)
参考文献数
19

日本の強みは,現場の優秀な作業者や管理・監督者及び生産技術者が質の高い安全管理と生産技術に基づく改善を実施していることにある.したがって,この“現場力”を基盤に置いた上で,技術に基づく安全の先進国と言われる欧州の機械安全技術や社会制度を適切に活用すれば,日本の現場力と欧州の機械安全技術を高次の次元で融合させた新しい枠組みの安全技術と社会制度を構築できる可能性がある.本稿では,以上の観点から日本で望まれる法規制及び社会制度のあり方を検討した.その結果,今後の日本の社会制度では,安全をコストでなく新たな価値創造のための投資として位置づけること,高い当事者意識と安全な職場を構築しようとする共通の価値観を関係者間で共有すること,及び再発防止から未然防止,件数重視から重篤度重視への戦略転換と想定外の考慮が重要と推察された.また,実際の機械の労働災害防止対策では,特に経営者及び設計者に対して欧州機械安全の基本理念と災害防止原則を普及促進するとともに,①ISO12100に定めるリスク低減戦略,②モジュール方式による適合性評価と適合宣言に関する情報伝達を目的としたマーキング,③マーキングの情報に基づく機械の使用段階での妥当性確認,④機械の設計・製造段階への災害情報のフィードバックが特に重要と考えられた.
著者
芳司 俊郎 池田 博康 岡部 康平 齋藤 剛
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-15, 2012 (Released:2012-08-03)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

1980年に我が国で産業用ロボットの本格的な普及が始まってから約30年が経過した.その間,労働安全衛生規則において産業用ロボットの運用規制がなされているにもかかわらず,依然として,労働災害が発生している.そのため,その要因を調査し,労働安全衛生規則の在り方を検討するため,本論文では,産業用ロボットによる労働災害に見られる問題点を分析した.その結果,多くが自動運転中に,何らかのトラブル等で可動範囲内に立ち入って被災するケースが多く,同規則の有効性の検討が必要と考えられた.これは,規則自体の問題なのか否かを調べるため,日本工業規格と労働安全衛生規則の規定の比較を行ったところ,技術的方策の差異と,現実の担当範囲の違いがあることが明らかとなった.また,ロボットメーカとユーザへのアンケートにより,これらの問題点を聞いたところ,両者の規定内容の差異を問題視しており,内容の整合を求めていることが確認された.これらの結果を踏まえ,労働安全衛生規則等に関して,(1)産業用ロボット本体及び設置後の残留リスクをユーザに情報提供すること,(2)技術の進展等に伴う新たな課題について規定すること,(3)日本工業規格と労働安全衛生規則の役割の違いに留意しつつ両者の整合性を図ること等の提言を行った.
著者
岡部 康平
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.63-72, 2012 (Released:2013-01-29)
参考文献数
19

安全防護物の無効化に起因する労働災害を防止するための安全設計要件を考察する.産業機械での災害事例から無効化の事由を,保守管理の実施,生産性への対応,作業性への対応の3種類に区分して示す.区分の指標に労力節約の観点を採用し,区分に応じて機械設備にて対処すべき課題が異なることを示す.そして,無効化の事由より安全設計の現状の課題を考察し,安全設計で配慮すべき要件を明らかにする.さらに,設計のための手法として,制約呈示法と誘導教示法を呈示し,システム制御への適用例を示す.
著者
岡部 康平 濱島 京子 佐藤 嘉彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.192, pp.11-14, 2014-08-28

機械類の安全設計に対する予防原則の適用について検討する.現在のリスクアセスメントに基づく機械類の安全設計では,不確かさの概念としてリスクのみが扱われている.環境汚染などで問題にされる不確実性や無知などの概念までは扱われていない.不確かさに対する安全設計手法の拡張として,不確実性や無知などの不確かさへの対応を示した予防原則に従う機械類の安全設計の手法を検討する.