著者
冨谷 至 矢木 毅 岩井 茂樹 赤松 明彦 古勝 隆一 伊藤 孝夫 藤田 弘夫
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

「東アジアの法と社会」という研究題目の下、4年間に渡って続けてきた我々の共同研究の成果として、以下の成果を報告する。第一は、国内国外で二度にわたって国際シンポジウムをおこない、東アジアにおける空間的、時間的座標のうえに死刑・死罪を考え、各時代、各地域の相違が浮き彫りにされたことである。その適用理念は、応報にあるのではなく、一に予防と威嚇にあることである。それは今日の中国の死刑に実態をみれば、罪と罰が均衡をかくこと、死刑廃止の議論が希薄であることからもわかる。各担当者の課題を深めて論文にした当研究の成果報告『東アジアにおける死刑』(科学研究費成果報告:冨谷篇)において、かかる東アジアの死刑の歴史的背景、本質が明らかにされている。報告書には、スウェーデンのシンポジウムには、参加できなかった藤田弘夫、岩井茂樹、周東平の各論考の収録し、社会学の視座からの死刑問題の考察、現代中国の死刑制度をテーマとする。さらに報告書は、さきの平成15年のセミナーの報告も加えたもので、英語でなされたセミナーの報告は、英文で、その後の主として日本側の研究分担者、および周東平論文は日本語で掲載している。なお、本研究のさらなる成果として、京都大学学術出版会から、平成19年に『東アジアにおける死刑』(仮題)を出版する予定である。我々の研究成果が今日の日本の死刑問題を考える上で、寄与できるのではないかと自負している。
著者
岩井 茂樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

成果として公表する明代徽州文書中の裁判関係資料にっいて校訂作業をおこなった。この作業は海外共同研究者阿風副研究員と共同でおこなった。また,写真版では対校不可能な箇所については,2006年9月に北京の第一歴史梢案館および社会科学院歴史研究所において,文書の実物を調査して入力済みのデータを校訂した。南京大学歴史学系資料室所蔵の文書については,海外共同研究者范金民教授に依頼して写真を入手してデータの校訂に用いることができた。同資料室所蔵の『不平鳴稿』についても,評点および校訂を加えてデータに加えることができた。こうした作業をへて,文書の本文の移録データの信頼性を高めるとともに,所蔵情報および『徽州文書類目』における標題,原文書の寸法や状態,写真版の有無など書誌情報を充実させた。このデータはXML文書として作成し,このXML文書にたいしXSLTスタイルシートを適用して印刷用のデータおよびWeb上での検索・閲覧用データを生成する。スタイルシートの開発および印刷用の版下作成作業を完了した。これら文書の移録に研究代表者岩井と阿風の執筆した研究論文を添えるかたちで,周紹泉・阿風・岩井茂樹輯校『明代訴訟文書--校訂と研究--』を刊行した。移録本文の作成にさいしては,手書き文字であることに留意して,原文書の字体における筆画の省略や文字構成要素の形態に接近した字体を用いることとした。このため,移録電子本文は大量の異体字を含むこととなった。1これを検索して適切な結果を得るためには,異体字相互の関係を知るためのシソーラスおよび異体字を同一視して検索するプログラムが必要となる。このプログラムをJava言語によって開発し,Web上での検索・閲覧を提供するサーブレーットに組みこむための作業をおこなった。