著者
岩井 宜子 内山 絢子 後藤 弘子 長谷川 眞理子 松本 良枝 宮園 久枝 安部 哲夫
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては、平成になってからの日本における殺人・傷害致死の第1審の判決例を収集し、その加害者・被害者関係をジェンダーの視点で分析し、おもに、家庭内暴力(DV)が原因として働くものがどの程度存在し、どのような形で殺害というような結果をもたらしたかを詳察することにより、今後の対策を考察することを意図した。昭和年間の殺人の発生状況との比較において、まず、注目されるのは、えい児殺の減少であるが、昭和年間にかなりの数のえい児殺が存在したのは、女性の意思によらない妊娠が非常に多かったことに基づくと考えられ、平成になり、少子化の背景事情とともに、女性の意思によらない妊娠も減少したことが推察される。しかし、年長の実子を殺害するケースは、増加しており、その背景には、被害者の精神障害、家庭内暴力、非行などが、多く存在している。夫・愛人殺の増加の背景にも、長期間にわたる家庭内暴力の存在が観察される。「保護命令」制度などが、うまく機能し、家庭内暴力から脱出し、平穏に暮らせる社会への早期の移行が待たれる。女性が殺人の被害者となり、また加害者となるケースは、多くは家庭内で発生しており、その背景には、種々の形の暴力が存在している。児童虐待の事案も顕在化が進んでいるものと考えられるが、徴表に対し、より迅速に対応し、救済するシステムがいまだ確立していないことが伺える。家庭内の悲劇を社会に救済を求めうる実効的なシステムの構築が必要である。
著者
岩井 宜子
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.36-40, 2002-04-01 (Released:2009-12-21)
参考文献数
19
著者
岩井 宜子
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.115-132, 1995

The sexual offences may be grouped into three types with their protecting interests. Those in the first type consist of rape and sexual assault etc., which protect freedom to consent to sexual intercourse or other indecent acts. Those in the second type consist of the article forbidding obscene acts to juveniles in Ordinance for eliminating harmful circumstances surrounding juveniles, Child Welfare Act and Anti-Prostitution Act etc., which protect the youth who have the immature capacity to concent to sexual activities, from sexual abuse by the adults. Those in the third type consist of the crime of indececent behavior in public, and the crime of distributing the pornographic books etc., which protect social sexual morality or sexual sense. Looking the history of the regulation on the sexual offences, it declares clearly the changes of the women's social and marital status. Those in the first type were considered as the offences which invade sexual morality in the past, but recently, the existance of consent at the sexual intercourse had been regarded as important, so the necessity of the protection from the injury by the sexual assault in the familiar terms were recognized gradually. Those in the second type aim to regulate the activities of sexual abuse to the juveniles whether or not the victim consents. In those field, ambiguity of the word "Inkou" (obscene act) and the rationality of paternalistic intrusion by the penal sanction are called in question. Those in the third type were gradually decriminalized with the progress of the sence of liberation of sex. In this paper, it is aimed to consider what is the better method to protect the interests being invaded by those in the first and the second types of sexual offences.
著者
岩井 宜子
出版者
日本刑法学会
雑誌
刑法雑誌 (ISSN:00220191)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.52-60, 2006-06-30 (Released:2020-11-05)
著者
岩井 宜子
出版者
日本刑法学会
雑誌
刑法雑誌 (ISSN:00220191)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.453-456, 2005-04-10 (Released:2020-11-05)
著者
岩井 宜子
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.27-38, 2015-10-30 (Released:2017-04-30)

我が国の少年矯正の中心を担う少年院は,大正11年の矯正院法に端を発するが,その位置づけは,明治初年以来社会における非行少年保護のために培われてきた感化院教育と刑事罰の中間に位するものとされてきた.昭和23年の新少年法とともに制定された少年院法は,大きな改正もなされずにきたが,少年院教育は,矯正院以来の伝統的な訓育論の科学化が図られていき,効果的な処遇技法の体系化がなされて,矯正の実を上げていると評価がなされてきた.しかし,非常に閉鎖的な面も指摘されており,収容少年の人権を侵害する少年院職員による暴行・陵虐等の不適正事案も表面化して,透明化を図り,収容少年の権利義務関係も明定した少年院法の全面改正が平成26年に実現し,少年鑑別所についても独立した少年鑑別所法が制定された.より少年院教育が更生の実を上げることが期待される.女子非行の場合は被虐待歴をもつものも多く,少年院は,受容的環境で安心感を育み,自尊感情を育てる個別的な教育が要請される.非行内容の変化も見られるが,女子非行の場合,やはり,性被害が大きな意味を持つことは変わらないと思われる.