- 著者
-
岩井 宜子
- 出版者
- 日本犯罪社会学会
- 雑誌
- 犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, pp.27-38, 2015-10-30 (Released:2017-04-30)
我が国の少年矯正の中心を担う少年院は,大正11年の矯正院法に端を発するが,その位置づけは,明治初年以来社会における非行少年保護のために培われてきた感化院教育と刑事罰の中間に位するものとされてきた.昭和23年の新少年法とともに制定された少年院法は,大きな改正もなされずにきたが,少年院教育は,矯正院以来の伝統的な訓育論の科学化が図られていき,効果的な処遇技法の体系化がなされて,矯正の実を上げていると評価がなされてきた.しかし,非常に閉鎖的な面も指摘されており,収容少年の人権を侵害する少年院職員による暴行・陵虐等の不適正事案も表面化して,透明化を図り,収容少年の権利義務関係も明定した少年院法の全面改正が平成26年に実現し,少年鑑別所についても独立した少年鑑別所法が制定された.より少年院教育が更生の実を上げることが期待される.女子非行の場合は被虐待歴をもつものも多く,少年院は,受容的環境で安心感を育み,自尊感情を育てる個別的な教育が要請される.非行内容の変化も見られるが,女子非行の場合,やはり,性被害が大きな意味を持つことは変わらないと思われる.