著者
鈴木 奈央 米田 雅裕 内藤 徹 吉兼 透 岩元 知之 廣藤 卓雄
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.2-8, 2008-01-30
被引用文献数
6

福岡歯科大学では,口臭クリニック受診患者に対して初診時に自己記入式の口臭問診票を用い,口臭の診断と治療に役立てている.本研究では,これまでに得られた回答結果をまとめて臨床診断別に分類し,患者の自覚症状や生活習慣について検討した.その結果,仮性口臭症患者では,口臭を意識したきっかけが「自分で気づいた」である者が真性口臭症患者に比べて多く(ρ<0.05),また口臭を意識するために社会生活や対人関係に支障をきたしている傾向が認められた.口腔内自覚症状では,口腔由来病的口臭患者に歯肉出血や齲蝕などの歯科的項目に高い訴え率が認められ,仮性口臭患者では「痛い歯がある」や「変な味がする」など感覚的な訴えが特徴的に認められた.生活習慣に関する質問では,仮性口臭症患者に集中できる趣味をもたない者が多くみられ(ρ<0.05),また半数以上が口臭以外にも身辺に悩みがあると回答した(ρ<0.05).さらに仮性口臭症では「あなたのまわりに口臭の強い人はいますか」という質問に対して「はい」と答えた者が真性口臭症よりも少なく(ρ<0.01),仮性口臭症患者には実際の口臭を知らない者も多いことが示唆された.今回口臭問診票の結果を検討したところ,臨床診断別に特徴のある回答が得られ,これらが患者情報の把握と口臭の診断や治療計画に役立つことが明らかになった.
著者
米田 雅裕 泉 利雄 鈴木 奈央 内藤 徹 山田 和彦 岡田 一三 岩元 知之 桝尾 陽介 小島 寛 阿南 壽 廣藤 卓雄
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.168-175, 2009-04-30
参考文献数
24
被引用文献数
2

歯科医療では観血処置の頻度が高く,注射針や鋭利な器具の使用により針刺し・切創の危険もある.血液媒介感染の危険のある針刺し・切創等を効果的に防止するためには,施設における現状把握とその対策の評価を行う必要がある.今回,福岡歯科大学医科歯科総合病院の感染制御チーム(ICT)が中心となって,本院の針刺し・切創等の事故状況を分析し,さらに改善策を検討してその効果を確認した.平成14年から平成19年に本院で提出された感染事故報告書を基に集計を行った.6年間で計80件の針刺し・切創が報告され,月別では11月,曜日別では火曜日,時間帯では午前11時台に多く発生していることが明らかになった.事故に関連した器材では注射針が最も多く,縫合針,スケーラーチップ・バー類がこれに続いた.受傷者の職種別割合では医師・歯科医師が最も多く,臨床実習に参加している短期大学学生,歯学部学生がこれに続いた.事故時の作業内容では片づけ中が最も多かったが,これは実習生が片づけに参加していることも原因の一つだと考えられる.これらの現状を踏まえ,本学では医療安全に関するマニュアルの整備を行い,針刺し・切創防止のための講義や講演会を実施している.さらに平成17年からは注射針の取り扱いを職員に限定し,実習生の注射針の取り扱いを禁止した.その結果,平成18年から平成19年にかけて針刺し・切創が減少し,特に短期大学学生による事故が減少した.一方,事故が発生しても未報告のケースもあると考えられるので,今後は,事故が発生したときには迅速な報告を促す必要があると思われる.また,ヒューマンエラーはゼロにできないことから安全装置の開発や導入も必要であると考えられる.