- 著者
-
岩元 英輔
- 出版者
- 公益社団法人 全日本鍼灸学会
- 雑誌
- 全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.1, pp.67-74, 2020 (Released:2020-07-13)
- 参考文献数
- 14
【目的】脊椎圧迫骨折は腰痛のレッドフラッグの1つであり、 脊椎の叩打痛にて鑑別を行うことが多い。 しかし、 脊椎の叩打痛の診断精度は感度88%、 特異度90%と高い精度だが、 それでも見逃す可能性がある。 今回、 握り拳による脊椎叩打痛は陰性であったが、 脊椎の聴性打診により圧迫骨折が判断できた1例を経験したので報告する。
【症例】症例は58歳、 女性。 病院のX線検査で圧迫骨折は否定されてはいたが、 上殿部と第12胸椎棘突起の体動痛といった病歴や理学的検査所見から圧迫骨折の否定は出来なかった。 そこで、 骨折の際に用いられる聴性打診を脊椎部に応用した。 方法は、 側臥位で背中を軽く丸めた姿勢で、 第11胸椎棘突起を打診点とし、 第1腰椎棘突起に聴診器を設置。 打診音を聴取し、 別の部位の正常音と比べた結果、 陽性 (骨伝導音の低下) と判断されたため、 MRI検査を勧めた結果、 第12胸椎の圧迫骨折と診断された。
【結論】圧迫骨折に対する脊椎叩打痛は有用な所見ではあるが、 単体では誤診の可能性があること、 検査時に痛みを伴うことなどが考えられる。 今後は、 聴性打診の方法の確立と精度を検討する必要はあるものの、 痛みなく短時間で骨折の有無を判断できる有用な方法になり得ると考える。