著者
岩崎 常人
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.39-44, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
11

現在の3Dテレビや3D映画での立体像を再生する方式には、二眼式表示法が用いられている。二眼式表示法に共通した点は、人為的に両眼視差を用いることである。人為的に両眼視差を誘起して立体像を知覚させると、視機能の点では調節機能と輻湊機能との相互関係に解離を来す。そのために二眼式表示による3D映像の鑑賞は、眼精疲労を誘発しやすい。 眼精疲労は、その原因が複雑多岐にわたり、一つの原因に特定して予防や治療を進めることが困難である。しかし、古くから眼精疲労に関する原因的分類として、以下の5つがある。①調節性眼精疲労、②筋性眼精疲労、③不等像視性眼精疲労、④症候性眼精疲労、⑤神経性眼精疲労。この分類に従うと、二眼式表示での3D映像鑑賞による眼精疲労は、調節と輻湊機能とが解離することから、調節性眼精疲労と筋性眼精疲労に当てはめることができる。 3D映像を鑑賞することによって発症する眼精疲労の原因が、どこにあるのかを特に調節機能に重点をおいて考えてみる。また同時に、その眼精疲労の対策の一例についても、調節機能を尺度として推察する。
著者
井上 哲理 野呂 影勇 岩崎 常人 大頭 仁
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1301-1305, 1994-10-20
被引用文献数
41 6

2眼式立体映像は, 立体効果が大きいため, 有効な立体再生法として広く利用されている.しかし, 同映像はいくつかの問題点も指摘されており, 特に人間の視覚系に与える影響は実用化の妨げとなっている.本研究では, 2眼式立体映像が視覚系に与える影響を定量的に評価するとともに, 視覚系に負担の少ない映像の呈示条件について考察した.評価の方法として, 映像鑑賞中の両眼眼球運動および鑑賞前後の調節機能の測定を行った.これらの測定を両眼視差量の違う立体映像および通常の平面映像について行い, 結果を比較することで評価を行った.結果より, 鑑賞中の眼球共同運動が崩れる現象, および鑑賞後に調節反応時間の延長があり, 2眼式立体映像の視覚系への影響が見られた.映像の持つ両眼視差量が大きくなるに従い, これらの影響は大きくなり, 一方, 両眼視差量が1度以内であれば, その影響が通常の平面映像と差がないことがわかった.
著者
趙 巖 野呂 影勇 岩崎 常人
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.357-362, 1997

本研究は, 二眼式液晶シャッターを用いた時分割方式によって再生された二眼式立体 (3D) 映像を負荷した場合と, 平面 (2D) 映像を負荷した場合での, 負荷前後の瞳孔反応への影響を調べた. このとき, 鑑賞時に与えられた視距離 (2mと4m) と室内の照度の設定条件により, 縮瞳量に変化が認められるか否かを検討した. 瞳孔面積の変化は, 赤外線オプトメータに付帯したピューピロアナライザーで測定した. その結果, 以下の事実がわかり, それらの結果から二眼式3D映像鑑賞にあたり, より良い鑑賞の仕方 (距離や照明のあり方) を人間工学的に考察した.<br>(1) 2D映像, 二眼式3D映像ともに負荷前より負荷後に縮瞳量が増した.<br>(2) 2D映像, 二眼式3D映像のいずれの負荷においても, 縮瞳量の変化に対して, 室内照明の有・無による影響が認められた. 特に, 二眼式3D映像負荷時の照明の有無は, 瞳孔機能に大きな影響があることがわかった.<br>(3) 二眼式3D映像を観察するにあたっては, 瞳孔機能の結果だけを考えた場合, 室内照明をつけたほうが良いと考えられた.