著者
中野 孝司 藤岡 洋 前田 重一郎 山口 桂 岩橋 徳明 田村 伸介 波田 寿一 東野 一彌
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.327-332, 1990-06-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
16

悪性胸膜中皮腫と肺癌胸水貯留例との鑑別にCEAが役立つか否か検討した. 悪性胸膜中皮腫 (11例) の胸水CEAは低値であり, 結核性胸膜炎 (18例) 及び他の良性疾患 (21例) のそれとに差はなかった. 又, 肺癌各組織型 (腺癌34例, 小細胞癌18例, 扁平上皮癌8例, 大細胞癌5例) 及び転移性悪性胸膜腫瘍 (13例) のそれは中皮腫よりも有意に高値を示していた. 胸水CEAのcut-off valueを5.0ng/mlとすると腺癌でのpositive rateは82.4%, 小細胞癌28.6%, 扁平上皮癌62.5%, 大細胞癌83.3%, 転移性胸膜腫瘍43.8%であったのに比べ, 中皮腫は全例ともにcut-off level以下であった. 又, 悪性胸膜中皮腫の腫瘍組織CEA染色は全例陰性であり, 血清CEAは病期が進行しても全例ともに正常値内にあった. 以上の結果より, 本疾患のCEAは胸水及び血清ともに上昇しないと考えられ, この点が肺癌胸水貯留例, 殊に問題となる肺腺癌との鑑別に役立つと考えられる.
著者
中山 尚貴 尾崎 弘幸 海老名 俊明 小菅 雅美 日比 潔 塚原 健吾 奥田 純 岩橋 徳明 矢野 英人 仲地 達哉 遠藤 光明 三橋 孝之 大塚 文之 草間 郁好 小村 直弘 木村 一雄 羽柴 克孝 田原 良雄 小菅 宇之 杉山 貢
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.54-57, 2007

症例は30歳,男性.2006年6月,スポーツジムのランニングマシンで運動中に突然,心窩部不快感が出現し,運動を中止したが痙攣を伴う意識消失をきたし倒れた.スポーツジムのトレーナーがただちに心肺停止を確認し,施設内の自動体外式除細動器(AED)を装着した.AEDの音声に従い除細動ボタンを1回押し,すみやかに自己心拍が再開したが,AED使用後にリセットボタンを押したため,メモリーが消去され,心肺停止の原因として致死性不整脈の関与は確認できなかった.<BR>入院後,トレッドミル運動負荷心電図検査で広範囲の誘導でST低下を認め,冠動脈造影検査を施行し冠動脈瘤を伴う重症多枝病変を認めた.心肺停止の原因は心筋虚血による心室細動もしくは無脈性心室頻拍と推定し,冠動脈バイパス術を施行した.<BR>AEDの普及に伴い非医療従事者によるAEDを使用した救命例が本邦でも徐々に報告されており,本症例は現場にあったAEDをただちに使用したことが社会復帰に大きく貢献したと考えられる.ただし,本症例で使用したAEDのように,一部機種ではリセットボタンを押すことによりメモリーが消去され,事後検証が困難になることは注意すべき点であり改善を要する.