著者
小菅 雅美 木村 一雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-24, 2002-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
37

急性心筋梗塞の治療として再灌流療法が確立し,早期診断の重要性は一層高まってきている.各種画像診断が進歩した現在においても,心電図の担う役割は大きく,最近では冠動脈造影所見から,梗塞関連部位と心筋梗塞急性期の心電図所見との関係について,多くの検討がなされている.これらの知見について知っておくことは, 急性心筋梗塞のより早い的確な診断に役立つであろう.梗塞関連部位の診断において,急性前壁梗塞では左前下行枝近位部閉塞か遠位部閉塞かの判別が,急性下壁梗塞では梗塞関連血管が右冠動脈か左回旋枝か,右冠動脈であれば右室虚血を合併しているかの判別が治療方針の決定や重症度を予測する上で重要であり,急性期のST偏位からこれらの判別が可能である.しかし実際,臨床の場合においては,典型的な心電図変化を伴わずに急性心筋梗塞の診断に苦慮する例も多い.本稿では,急性心筋梗塞で梗塞関連部位の診断における心電図の有用性とその限界についてまとめた.
著者
小嶋 信博 岡 壽士 宮山 信三 浜井 直人 岩井 裕子 木村 一雄
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.601-604, 1987-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7
被引用文献数
1

経肛門的直腸異物を2例経験したので報告する, 症例1: 25歳, 男性。自慰行為にてウイスキーのミニボトルを経肛門的に挿入.腰椎麻酔下にて非観血的に異物を抜去したが, 術後2日目になって腹膜刺激症状, 腹腔内遊離ガス像が出現開腹手術を施行し, 直腸前壁に穿孔を認めた, 症例2: 36歳, 男性自慰行為にてシャンプー瓶を経肛門的に挿入, 腰椎麻酔下にて非観血的に異物を抜去し, 術後経過は順調であった.本邦においては経肛門的異物の報告は少いが, 今後は増加することが予想され, その治療には苦慮する点も多い.われわれの経験した2症例に若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
尾上 英俊 飯田 博幸 木村 一雄 有永 誠
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.774-776, 1990-10-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
4

During past 2 years from 1987 to 1989, 30 fingers of 22 cases of finger tip injuries and finger amputations were treated conservatively using aluminium foil (aluminium for cooking). The dressing was changed fist on the following day of injury and then every three days.The average wound healing period was 32.7 days, ranging from 26 to 38 days. The created stump was free from severe pain and tenderness and tolerated daily use excellently.The injured finger tip was packed by aluminium foil, so that the wound was always wet and epithelialization was promoted and a round shaped stump was created.The conservative therapy for finger tip injuries is economical and simple, and the result is stable regardless the ability of the doctors.
著者
郷原 正臣 木村 一雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.211-217, 2021-02-10 (Released:2022-02-10)
参考文献数
3

急性冠症候群は,冠動脈プラークが破綻(破裂やびらん)することで冠動脈内に血栓が形成され,急速に心筋虚血を生じることが主たる病態である.破綻以外の原因としては,冠攣縮の他,頻度は少ないが,冠動脈内への塞栓,冠動脈解離等がある.症状が心筋虚血に起因する場合は,バイタルサインを確認すると共に12誘導心電図を記録し,ST上昇の有無を判断する.より有効な治療を行ううえで,より迅速且つ確実な初期診断が重要である.
著者
中村 厚彦 尾上 英俊 木村 一雄 岩本 良太 村岡 邦秀 今村 尚裕 三宅 智
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.744-746, 2011-09-25 (Released:2011-12-09)
参考文献数
5

足関節外果骨折に対してtension band wiring(以下TBW)を用いて骨接合を行った症例について検討した.2002年から2010年までに手術を行った10例で,男性8例女性2例,平均年齢41歳(15~65歳)であった.骨折型はLauge-Hansen分類に従いSA stage 1:7例(靱帯付着部の裂離骨折2例を含む),stage 2:1例,SER stage 2:1例,stage 3:1例であった.手術はanchor screwを用いたTBWを施行し,術後は外固定を併用した.全例で整復位での骨癒合を得た.K-wireのback outを2例と尖端の回旋転位を1例に認めた.足関節外果骨折はよく遭遇する外傷であり一般的にplate固定が行われるが,遠位骨片が小さい場合はTBWによる内固定の適応となる.anchor screwを併用したTBWは手技が簡便であり有用であると考えられた.
著者
外山 英志 田原 良雄 豊田 洋 小菅 宇之 荒田 慎寿 松崎 昇一 天野 静 下山 哲 中村 京太 岩下 眞之 森脇 義弘 鈴木 範行 杉山 貢 五味 淳 野沢 昭典 木村 一雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement3, pp.27-30, 2005-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

症例は64歳の男性,狭心症の既往はなし.冠危険因子は高脂血症と家族歴があった.2週間前から発熱,咳嗽などの感冒様症状が出現し内服薬を処方されていたが改善しなかった.突然の呼吸困難にて発症し救急隊を要請したが,現場到着時には心静止であった.当院搬送後,心肺蘇生処置を継続したが効果なく死亡確認となった.病理解剖を行ったところ,肉眼的には,漿液性の心嚢水が貯留,両心室腔・右房の拡張,左室壁の肥厚を認めた.左室壁はほぼ全周性に心筋の混濁が認められたが,心筋の梗塞巣や線維化は認められなかった.組織学的には両室心筋に全層性の炎症細胞浸潤,巣状壊死,変性,脱落を認めた.臨床経過と合わせて劇症型心筋炎と診断した.一般に「突然死」と呼ばれている死亡原因には,急性心筋梗塞,狭心症,不整脈,心筋疾患,弁膜症,心不全などの心臓病によるものが6割を占め,そのほかに脳血管障害,消化器疾患などがある.突然死の中でも心臓病に起因するものが「心臓突然死(SCD)」と呼ばれているが,現在米国では心臓突然死によって毎年40万人もの人が命を落としており,その数は肺がん,乳がん,エイズによる死亡者の合計数よりも多いとされている.心臓突然死における急性心筋炎の頻度は不明であるが,しばしば可逆的な病態であり,急性期の積極的な補助循環治療により,完全社会復帰された症例も散見されるので,鑑別診断として重要である.
著者
尾上 英俊 木村 一雄 山口 史彦 中村 厚彦
雑誌
骨折 (ISSN:02872285)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.45-50, 2008-02-25
被引用文献数
1
著者
中山 尚貴 尾崎 弘幸 海老名 俊明 小菅 雅美 日比 潔 塚原 健吾 奥田 純 岩橋 徳明 矢野 英人 仲地 達哉 遠藤 光明 三橋 孝之 大塚 文之 草間 郁好 小村 直弘 木村 一雄 羽柴 克孝 田原 良雄 小菅 宇之 杉山 貢
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.54-57, 2007

症例は30歳,男性.2006年6月,スポーツジムのランニングマシンで運動中に突然,心窩部不快感が出現し,運動を中止したが痙攣を伴う意識消失をきたし倒れた.スポーツジムのトレーナーがただちに心肺停止を確認し,施設内の自動体外式除細動器(AED)を装着した.AEDの音声に従い除細動ボタンを1回押し,すみやかに自己心拍が再開したが,AED使用後にリセットボタンを押したため,メモリーが消去され,心肺停止の原因として致死性不整脈の関与は確認できなかった.<BR>入院後,トレッドミル運動負荷心電図検査で広範囲の誘導でST低下を認め,冠動脈造影検査を施行し冠動脈瘤を伴う重症多枝病変を認めた.心肺停止の原因は心筋虚血による心室細動もしくは無脈性心室頻拍と推定し,冠動脈バイパス術を施行した.<BR>AEDの普及に伴い非医療従事者によるAEDを使用した救命例が本邦でも徐々に報告されており,本症例は現場にあったAEDをただちに使用したことが社会復帰に大きく貢献したと考えられる.ただし,本症例で使用したAEDのように,一部機種ではリセットボタンを押すことによりメモリーが消去され,事後検証が困難になることは注意すべき点であり改善を要する.