著者
岩間 太 小林 直樹
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.58-64, 2002-03-15

プログラミング言語Javaの仮想機械では,実行前にコードの検証を行い,不正なコードを排除している.しかし,現在の検証器では,並行スレッドによるロックの獲得・解放の整合性に関する検証は行っていない.この問題を解決するため,本研究では,AbadiとStataによるバイトコード検証のため型システムを改良する.新しい型システムでは,各オブジェクトのロックが獲得・解放される順序の情報をオブジェクトの型に付加することにより,ロックの正しい使用を保証する.
著者
岩間 太 中村 大賀 竹内 広宜
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_258-4_277, 2012-10-25 (Released:2012-11-25)

半形式的な記述や半構造的な自然文を含むテキスト文書のためのパーサーを形式言語/自然言語処理パーサーを組み合わて構築するためのシステムを提案する.特に,形式言語/自然言語処理パーサーを柔軟に組み合わせるためのパーサーコンビネータを設計することで,宣言的な文法記述からテキスト文書用のパーサーを作成するシステムを実現する.現状のパーサーコンビネーターは主にプログラミング言語用のパーサー構築を目的としており,自然文を含むテキスト文書のためのパーサーを構築するには不十分である.特に,既存の様々な自然言語処理パーサーは,形式言語のためのパーサーとは異なった性質をもっており,既存の枠組みでは柔軟に組合わせることが難しい.本論文では,自然言語処理パーサーと形式言語用のパーサーの組合せを可能にし,かつ,部分的なパージングや情報抽出部分の指定など,テキスト文書の処理において有用な機能を実現する演算子を含んだパーサーコンビネーターをParsing Expression Grammarsを基に設計する.また,導入したパーサーコンビネーターを用いて,宣言的な記述から,種々の自然言語処理を部分的に含むパーサーを自動生成するためのシステムを構築し,実際の適用例の一端を示す.このようなパーサーコンビネーションシステムはソフトウエア開発時に作成される文書成果物に対する解析に有用である.
著者
岩間 太 中村 大賀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.282, pp.67-72, 2011-11-10

要求・仕様書や設計書などの上流文書成果物に対応して計画・実施される統合・システムレベルのテスト設計では,コードを対象とした単体・結合レベルのテストに比べ自動化技術が進んでおらず効率面・品質面から問題となっている.このような状況を改善することを目的とし,我々は,上流文書成果物からのテストケース設計作業を自動化するための課題を整理し,それらを解決する手法を汎用的な枠組として提案したい.提案手法では,テストケースを定義する際に重要であり,かつ現実の多様な文書から取得することが可能な情報のモデルを実プロジェクトからの洞察をもとにまとめ,これを構造的なタグとして定義する.その上で,対象文書からの情報をRDF形式のデータとして抽出しRDFストアに一元的にまとめ,抽出されたRDFリソースデータに対して上記モデルで定義されたタグを付加する.その後,このタグ情報を用いて文書からテストケースを一様な手続きのもと生成する.本論文ではこの手法とその実装システム,実プロジェクトへの適用結果の概要を示す.
著者
岩間 太 立石 孝彰
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_114-2_127, 2015-04-24 (Released:2015-06-30)

単体テスト時に利用する入力テストデータをCOBOLソースコードから生成するためのCOBOL記号実行器を構築した. この記号実行器の特徴はbit-vector logicに基づいてメモリ内バイトデータの記号値を扱うという点でありこれにより,バイトデータを直接操作するコードのテストデータ生成が可能になる.このような記号実行器によるテストデータ生成ツールはデータ表現の違いなどによる不具合が生じることの多いマイグレーションプロジェクト等において有用なものとなる.
著者
竹内 広宜 中村 大賀 荻野 紫穂 水野 謙 岩間 太 鎌田 真由美
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1_53-1_64, 2013-01-25 (Released:2013-03-25)

ソフトウェア開発プロジェクトにおいて文書成果物は重要な役割を担っている.一方,大規模なシステム構築プロジェクトでは様々な文書成果物が大量に作られ,人手による品質分析には限界がある.近年,開発プロジェクトで作成される文書成果物に対して,文書構造分析,文字列解析,自然言語処理といった技術を適用する研究が行われている.本論文では,これらの技術によって実現される文書成果物の分析と活用方法について概観する.
著者
岩間 太 五十嵐 淳 小林 直樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.48-61, 2007-03-15

ファイルやメモリなどの計算資源がプログラム中でどのように使用されるかを型を用いて推論するための手法が五十嵐,小林らにより提案されている.彼らの手法では,各計算資源に対して起こりうるアクセス列の集合を使用法表現と呼ばれる式として推論する.しかしながら,推論された使用法表現が表すアクセス列の集合が,仕様として許されるアクセス列からなる言語に包含されているかどうかを判定するアルゴリズムが考案されておらず, 計算資源使用法検証の完全な自動化は達成できていなかった.本論文では,ある特定の言語クラスに属する仕様に対し,そのような包含判定を行うための健全かつ完全なアルゴリズムを提案する.仕様として任意の正則言語を許す場合には,包含判定問題は決定不能なので,我々のアルゴリズムが扱う仕様のクラスは,1つの入力記号について,遷移元および遷移先の状態がたかだか1つしか存在しない有限オートマトンが受理する言語のクラスとして与えられ,正則言語のクラスより小さい.しかしながら,ファイルなど現実の計算資源の仕様の多くは,我々のアルゴリズムで扱える言語のクラスに属する.したがって,本論文のアルゴリズムを五十嵐と小林らによる従来の研究と組み合わせることにより,ファイルなど多くの計算資源の使用法検証を自動化できる.In our previous work, we have developed a type-based method for inferring how resources such as files and memory are accessed in a program. Due to the lack of an algorithm for deciding whether the inferred resource usage conforms to the specification, however, it was not possible to verify automatically that resources are accessed according to the specification. In this paper, we propose a sound and complete algorithm for deciding the conformance of the inferred resource usage to the specification. Since the language denoted by the inferred resource usage belongs to a class larger than the class of the context-free languages, the class of specifications that our algorithm can deal with is smaller than the class of regular languages. Fortunately, however, that language class contains many of the typical resource usage specifications used in practice. Thus, by combining our algorithm with our previous method for resource usage inference, we can automatically check whether each resource is accessed according to the specification in many cases.