著者
小澤 啓子 武見 ゆかり 衛藤 久美 岩間 範子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.589-601, 2018-10-15 (Released:2018-10-31)
参考文献数
37
被引用文献数
1

目的 健康日本21(第二次)の目標項目の1つである野菜摂取量を増やすには,野菜摂取量の関連要因を明らかにする必要がある。そこで,壮中年期を対象に野菜摂取量と食行動,食態度,食知識・スキル,および周囲からの支援との関連を検討した。方法 平成23年度埼玉県民健康・栄養調査で得られた30-59歳384人(男性165人,女性219人)のデータ(2日間の食事記録と質問紙)を用いた。野菜摂取量は,本対象集団の平均摂取量が250.2(SD 119.8)g/日と健康日本21(第二次)の目標である350 gよりかなり少なかったこと,先行研究で同集団において300 g/日の摂取で,野菜からの摂取が期待できる栄養素不足が回避または低減できることを確認しているため,300 gをカットオフポイントとすることにした。野菜摂取量300 g以上,300 g未満の2群を従属変数,食行動,食態度,食知識・スキル,周囲からの支援の項目を独立変数,調整変数を年齢,世帯構成,世帯収入としたロジスティック回帰分析を行った。結果 男女共に300 g以上である調整オッズ比が有意に高かったのは,「主食・主菜・副菜がそろう食事の平均回数(食事記録)が1日2回以上」であり,男性は調整オッズ比(AOR):2.52,95%信頼区間(CI):1.18-5.39,女性;AOR:4.06,CI:2.18-7.53であった。男性のみ調整オッズ比が高かったのは,「1日に5皿以上の野菜料理を食べる自信がある/どちらかと言えばある」がAOR:2.74,CI:1.30-5.79,「野菜摂取が肥満症予防に効果があることを知っている」がAOR:3.48,CI:1.24-9.78,「家族や周囲が健康や食生活をよりよくするために協力的だと思う/まあそう思う」がAOR:4.46,CI:1.47-13.54であった。一方女性のみ調整オッズ比が高かったのは,「食事づくりをほぼ毎日する」がAOR:2.83,CI:1.02-7.87,「自分の適量とバランスがよくわかる/だいたいわかる」がAOR:2.44,CI:1.30-4.56であった。結論 壮中年期の野菜摂取量増加のためには,男女共に野菜摂取に限定した支援だけではなく,健康日本21(第二次)の食事全体の栄養バランスの行動目標である「主食・主菜・副菜がそろう食事を1日2回以上」を促す支援が重要であることが示唆された。
著者
川端 輝江 古 息珠 柴田 茂男 長谷川 恭子 澤井 廣量 李 寧遠 劉 麗雲 村上 秀親 小川 久恵 矢ヶ崎 信子 松田 康子 岩間 範子
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.109-117, 1993

循環器疾患死亡率に各々特徴を持つ日本の2地区 (山梨県および沖縄県) と沖縄県に隣接している中華民国 (台湾) における計3地区に在住する中高年齢者を対象とし, 健康診断を行った。そこで, 我々はこれらの地区において, 循環器疾患の指標となりうる肥満度, 血圧, 血清脂質の諸検査結果を主成分分析法により検討した。<BR>主成分分析の結果, 得られた2次元図の各象限の特徴を表現すると, 1.高血圧型, 2.肥満, 血清中性脂肪高値, HDL-コレステロール低値型, 3.低血圧, 血清HDL-コレステロール低値型, 4.やせ, 血清中性脂肪低値, HDL-コレステロール高値型となった。<BR>男性では, 山梨県対象者は血清中性脂肪高値および肥満の者が約2割いた。沖縄県対象者では全体の3割強が高血圧型であった。台湾対象者では軽度の肥満および中性脂肪高値型と低血圧および血清HDL-コレステロール低値型が, あわせて約3割以上であった。<BR>女性では, 山梨県対象者に対して, 沖縄県対象者では血清総コレステロール, HDL-コレステロールの平均値が従来の成績同様高かったが, その他の項目においては, 極端に正常値からはずれた検査値を持つ者は少なく, 特徴的な分布はみられなかった。台湾対象者では, 肥満, 血清中性脂肪高値およびHDL-コレステロール低値型に属する人は約4割であり, 循環器疾患のリスクが高い集団と推察される。