著者
川畑 輝子 武見 ゆかり 林 芙美 中村 正和 山田 隆司
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.226-231, 2021 (Released:2021-03-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

This is a food environment intervention study, aiming at improving the diet of hospital workers. The intervention was conducted at a convenient store in a hospital in Tokyo. The intervention included availability, accessibility, information and incentive. We used nudge tactics to increase the effect. To evaluate the intervention, we used the point of sales data and examined the response of the staff. Total sales and sales of healthy items significantly increased. The intervention was well-accepted by the staff. It suggests that using nudges to improve the food environment at a convenient store in a hospital can increase sales.
著者
小澤 啓子 武見 ゆかり 衛藤 久美 岩間 範子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.589-601, 2018-10-15 (Released:2018-10-31)
参考文献数
37
被引用文献数
1

目的 健康日本21(第二次)の目標項目の1つである野菜摂取量を増やすには,野菜摂取量の関連要因を明らかにする必要がある。そこで,壮中年期を対象に野菜摂取量と食行動,食態度,食知識・スキル,および周囲からの支援との関連を検討した。方法 平成23年度埼玉県民健康・栄養調査で得られた30-59歳384人(男性165人,女性219人)のデータ(2日間の食事記録と質問紙)を用いた。野菜摂取量は,本対象集団の平均摂取量が250.2(SD 119.8)g/日と健康日本21(第二次)の目標である350 gよりかなり少なかったこと,先行研究で同集団において300 g/日の摂取で,野菜からの摂取が期待できる栄養素不足が回避または低減できることを確認しているため,300 gをカットオフポイントとすることにした。野菜摂取量300 g以上,300 g未満の2群を従属変数,食行動,食態度,食知識・スキル,周囲からの支援の項目を独立変数,調整変数を年齢,世帯構成,世帯収入としたロジスティック回帰分析を行った。結果 男女共に300 g以上である調整オッズ比が有意に高かったのは,「主食・主菜・副菜がそろう食事の平均回数(食事記録)が1日2回以上」であり,男性は調整オッズ比(AOR):2.52,95%信頼区間(CI):1.18-5.39,女性;AOR:4.06,CI:2.18-7.53であった。男性のみ調整オッズ比が高かったのは,「1日に5皿以上の野菜料理を食べる自信がある/どちらかと言えばある」がAOR:2.74,CI:1.30-5.79,「野菜摂取が肥満症予防に効果があることを知っている」がAOR:3.48,CI:1.24-9.78,「家族や周囲が健康や食生活をよりよくするために協力的だと思う/まあそう思う」がAOR:4.46,CI:1.47-13.54であった。一方女性のみ調整オッズ比が高かったのは,「食事づくりをほぼ毎日する」がAOR:2.83,CI:1.02-7.87,「自分の適量とバランスがよくわかる/だいたいわかる」がAOR:2.44,CI:1.30-4.56であった。結論 壮中年期の野菜摂取量増加のためには,男女共に野菜摂取に限定した支援だけではなく,健康日本21(第二次)の食事全体の栄養バランスの行動目標である「主食・主菜・副菜がそろう食事を1日2回以上」を促す支援が重要であることが示唆された。
著者
赤岩 友紀 林 芙美 坂口 景子 武見 ゆかり
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.3-16, 2022-01-15 (Released:2022-01-28)
参考文献数
32
被引用文献数
2

目的 新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)流行下における世帯収入の変化の有無別に,コロナ前から緊急事態宣言期間中にかけての食行動の変化,緊急事態宣言期間中の食物へのアクセスの課題および食情報のニーズとの関連を明らかにすることを目的とした。方法 2020年7月1~3日,13の特定警戒都道府県在住20~69歳男女を対象に,無記名のWeb調査を実施した。目標回答者数を2,000人とし,2020年2月より前(以下,コロナ前)から2020年4~5月の緊急事態宣言期間中にかけての食行動の変化と,緊急事態宣言期間中の食物へのアクセスの課題,食情報のニーズを尋ねた。有効回答者2,299人のうち,学生を除いた2,225人を解析対象とした。コロナによる世帯収入の変化別に3群(減少,変化なし,増加)に分け,対象者特性,食行動の変化等についてクロス集計を行った。また,世帯収入の変化を独立変数,食行動の変化,食物へのアクセスの課題,食情報のニーズを従属変数とし,属性を調整した多重ロジスティック回帰分析を行い,減少群の特徴を把握した。さらに,世帯収入の変化にコロナ前の経済的な暮らし向きを加えた6群に分けて,変化なし群/ゆとりありを参照群として同様に解析を行った。結果 減少群は34.6%,変化なし群は63.9%,増加群は1.6%であった。減少群はパート・アルバイト,自営業の者が多く,緊急事態宣言期間中に休職していた者が多かった。属性を調整後,減少群は変化なし群に比べて,外食頻度は「減った」,調理頻度,中食頻度,子どもとの共食頻度は「増えた」オッズ比が有意に高かった。コロナ前の経済的な暮らし向きにかかわらず,減少群の全てで,欠品による入手制限,価格が高いことによる入手制限,店内混雑による買い物の不自由が「よくあった」オッズ比が変化なし群/ゆとりありに比べ有意に高かった。また,減少群/ゆとりなしは変化なし群/ゆとりありに比べ,食費の節約方法等を必要としていた。結論 コロナ禍で世帯収入が減少した者は,緊急事態宣言期間中に食物へのアクセスに課題を感じていた者が多く,食情報ではとくに食費の節約方法のニーズが高かった。また,減少群は変化なし群に比べて外食頻度が減少した一方で,調理頻度,中食頻度の増加がみられた。こうした食行動の変化により,食物摂取状況が望ましい方向と望ましくない方向のどちらに変化したか,さらなる検討が必要である。
著者
衛藤 久美 中西 明美 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.113-125, 2014 (Released:2014-07-19)
参考文献数
39
被引用文献数
4 4

【目的】小学5年生及び中学2年生の家族との夕食共食頻度及び食事中の自発的コミュニケーションと,中学2年生時の食態度,食行動,QOLとの関連を明らかにすること。【方法】2006年度に埼玉県坂戸市内全13小学校5年生,及び3年後に全中学2年生を対象に行われた2回の質問紙調査データがマッチングでき,有効回答が得られた598名(男子303名,女子295名)を対象とした。夕食共食頻度及び自発的コミュニケーション(以下,自発的)を用いて,共食≧週4日で自発的が多いA群,共食≧週4日で自発的が少ないB群,共食≦週3日で自発的が多いC群,共食≦週3日で自発的が少ないD群の4群に分け,小5の4群と中2の食態度,食行動,QOLの関連(縦断的研究),中2の4群と同時期の食態度,食行動,QOLの関連(横断的研究)を検討し,さらに共分散構造分析を行った。【結果】小5の4群と中2の食態度,食行動,QOLとの関連は一部のみで見られた。中2の4群は中2の食態度,食行動,QOLの多くの項目と関連が見られた。A群はB群やD群に比べ,食態度が積極的で,食行動の実践頻度が高く,QOLが高かった。共分散構造分析の結果,小5ではなく中2の夕食共食頻度と自発的コミュニケーションが中2のQOLの各変数に影響していた。【結論】中学2年生の食態度,食行動,QOLは,小学5年生よりも同時期の共食頻度や自発的コミュニケーションの関連が多いことが示唆された。
著者
林 芙美 野口 真希 宇野 薫 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.24-36, 2020-02-01 (Released:2020-03-19)
参考文献数
39
被引用文献数
1 3

【目的】妊婦を対象に,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度と栄養・食物摂取状況との関連を検討し,さらに食知識,食態度,食行動,周囲のサポート等との関連を把握すること。【方法】2015年1~3月,群馬県T市S病院にて妊婦健診・母親学級に訪れた妊婦(11~20週)に研究参加を呼びかけ,141名から自記式質問紙及び簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)に回答を得た。身長,妊娠前体重,調査時体重はカルテより把握した。最終的に118名を分析対象者とし,主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度別に3群(1日2回以上,1日1回,1日1回未満)間で,年齢,妊娠期区分,妊娠回数,世帯構成,暮らし向きを調整した共分散分析を用いて栄養・食物摂取状況を比較した。関連要因の検討には,多重ロジスティック回帰分析を用いた。【結果】主食・主菜・副菜がそろう食事の頻度が高い者ほど,いも類,野菜類,肉類の摂取量が多かった(p for trend<0.05)。1日1回未満群に比べて,1日2回以上群は1食の量とバランスの知識があり,調理が好きで大切だと感じており,食事を整える自信があり,欠食がなく,家族との朝食共食がほぼ毎日で,専門的な学習の経験者が多かった。また,1日1回群でも食事を整える自信がある者が多かった。【結論】主食・主菜・副菜がそろう食事の実現には,適切な食知識や食事づくりに対する前向きな姿勢が重要であると示唆された。
著者
林 芙美 武見 ゆかり 赤岩 友紀 石川 ひろの 福田 吉治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.618-630, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
参考文献数
42

目的 本研究の目的は,食生活関心度を評価する尺度の作成および信頼性・妥当性の検討と,新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響下において人々の食生活を左右し得る心理的な側面の変化とその関連要因を明らかにすることである。方法 2020年7月1~3日,調査会社を通じてインターネット調査を実施した。調査対象者は,同年4~5月の緊急事態宣言期間中に特定警戒都道府県に指定された13都道府県に在住し,調査時に普段の食料品の購入頻度または調理頻度が週2日以上の20~69歳の男女約2,000人とした。最終的に2,299人を解析対象者とした。食生活関心度は12項目にて把握し,信頼性の検討では内的整合性としてクロンバックα係数を確認し,妥当性の検討では構成概念妥当性と基準関連妥当性を確認した。基準関連妥当性の検討には行動変容ステージを用い,Kruskal-Wallis検定を用いて得点を比較した。COVID-19の影響を受ける前と調査時を比べた食生活関心度の変化は,12項目について「変化なし」0点,「改善」+1点,「悪化」−1点で合計得点を算出し,「変化なし」「改善傾向」「悪化傾向」の3群間で属性および社会経済的状況をχ2検定および残差分析を用いて比較した。結果 探索的因子分析,確証的因子分析を行った結果,2因子から成るモデルで適合度が良いことが示された(モデル適合度指標:GFI=0.958,AGFI=0.938,CFI=0.931,RMSEA=0.066)。クロンバックα係数は,第1因子(食生活の重要度)0.838,第2因子(食生活の優先度)0.734であり,尺度全体でも0.828で信頼性が確認された。また,基準関連妥当性の検討では,行動変容ステージが高いほど尺度の合計得点は高く有意差が認められた(P<0.001)。食生活関心度の変化は,重要度に比べ優先度が悪化した者が多かった。食生活の重要度・優先度ともに,性別,年齢層,婚姻状況,就業形態,過去1年間の世帯収入,コロナの影響による世帯収入の変化に有意差がみられ,男性,20~29歳,未婚,正社員,過去1年間の世帯収入400~600万円未満で「悪化傾向」が有意に多かった。結論 COVID-19影響下では,食生活の重要度に比べ優先度が悪化した者が多く,男性や若年層,未婚者などは食生活関心度が悪化する者が多かった。
著者
赤松 利恵 串田 修 高橋 希 黒谷 佳代 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.37-45, 2021-02-01 (Released:2021-04-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】「健康な食事・食環境」認証制度における外食・中食部門の応募促進と継続支援に向けて,スマートミールの提供状況と事業者が抱える課題を整理すること。【方法】2018年度に認証され,2020年更新対象となった外食55,中食24計79事業者を対象とした。2020年1~2月,Webフォームを用いて,更新意向の他に,スマートミールの提供状況と課題をたずねた。他に,認証時の情報から,応募部門,認証回,店舗の場所,星の数の情報を用いた。量的データの結果は,度数分布で示し,自由記述の回答は,コード化の後,類似する内容をまとめ,カテゴリ化した。【結果】79事業者を解析対象とした(解析対象率100%)。70.9%(n=56)の事業者が,更新すると回答した。項目に回答した49の更新事業者の63.3%(n=31)が【メニューに対する肯定的な評価】など,顧客からの反応が「あった」と回答した。また,71.4%(n=35)の事業者が認証前後の売上げに「変化なし」と回答したが,81.6%(n=40)の事業者が認証のメリットがあったと回答した。40.8%(n=20)の事業者が【メニューに関する課題】などを感じていた。【結論】外食・中食事業者の認証制度への応募促進と認証継続の支援には,メニュー開発やコスト削減に関する課題と,スマートミールの認知度向上など普及啓発に関する課題の解決が必要だと示唆された。
著者
林 芙美 坂口 景子 小岩井 馨 武見 ゆかり
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.245-258, 2020-11-30 (Released:2020-12-08)
参考文献数
34

目的:児童を対象に食に関する主観的QOL(subjective diet-related quality of life: SDQOL)を用いて食生活の満足度を総合的に評価し,食行動・食態度や児童の食事中に本人や家族がスマートフォン等(以下,スマホ等とする)を使用することがSDQOLとどう関連するかを検討する.方法:研究デザインは横断研究である.2019年3月,埼玉県S市内の公立小学校3校に在籍する5年生全員を対象に自記式質問紙調査を集合法により実施した.当日欠席者等を除く255名(男子114名,女子141名)を解析対象者とした.食行動・食態度およびスマホ等の使用状況別に対象者を4群に分け,クラスカル・ウォリス検定を用いてSDQOLの合計得点を比較した.結果:食行動・食態度が良好で且つ食事中に児童本人や家族のスマホ等の使用がまったくないと回答した児童でSDQOLは高かった.しかし,食行動・食態度が良好であっても,家族がスマホ等を使用することがある児童のSDQOLは低かった.また,児童本人や家族が食事中にスマホ等を使用していても,夕食時に自発的な会話があるなどの食行動が良好な児童のSDQOLは高かった.結論:SDQOLの向上においては,児童の食事中に家族がスマホ等を使用しないこと,また,スマホ等を使用することがあってもコミュニケーションが活発になる環境を整えることが重要であると示唆された.
著者
成田 美紀 北村 明彦 武見 ゆかり 横山 友里 森田 明美 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.171-182, 2020-03-15 (Released:2020-04-01)
参考文献数
40

目的 日本人高齢者の食品摂取の多様性指標の一つに,食品摂取多様性スコアがある。高齢者を対象とした研究では,身体機能や生活機能,転倒リスク,サルコペニア等との健康アウトカムと食品摂取の多様性の関連が報告されているが,多様な食品摂取による各種栄養素の多寡や食事の特徴について十分検討されていなかった。本報は,高齢者における食品摂取多様性スコアと栄養素等摂取量,食品群別摂取量および主食・主菜・副菜を組み合わせた食事日数との関連を明らかにすることを目的とした。方法 東京都板橋区在住で65~84歳の高齢者182人を対象とした。食品摂取の多様性指標は,熊谷らの食品摂取多様性スコア(DVS)を使用し,0~3点を低群,4~6点を中群,7~10点を高群に分類した。並行して,3日間の自記式食事記録を行い,1日当たりの栄養素等摂取量,食品群別摂取量および主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日数(以下,バランスのとれた食事日数)を求めた。性,年齢,エネルギーを調整した一般線形モデルによりDVS区分と各食事関連指標との関連について検討した。また,各栄養素の推定平均必要量(EAR)を下回る者の割合を算出し,多重ロジスティック回帰分析によりDVS区分の栄養素別不足リスクを推定した。結果 DVS高群に比し低群ではバランスのとれた食事日数が有意に低値を示した(DVS低群1.4(1.2-1.6)日,中群1.8(1.6-1.9)日,高群1.9(1.7-2.1)日,傾向性P=0.001)。DVS高群に比しDVS低群ではエネルギー,たんぱく質・脂質のエネルギー比率,総たんぱく質,食物繊維,カリウム,マグネシウム,リン,ビタミンK,ビタミンB12の摂取量が有意に低値を示し,炭水化物・穀類のエネルギー比率,炭水化物摂取量は有意に高値を示した。ビタミンCのEARを下回るオッズ比はDVS高群に比し低群で有意に高値を示し,マグネシウム,亜鉛,ビタミンB6のEARを下回るオッズ比DVS中群で有意に高値を示した。結論 DVSが高いことは,たんぱく質および微量栄養素のより多い摂取と有意な関連があり,主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を行う機会が多いことが明らかになった。DVSは高齢期に望ましい多様な食品や栄養素の摂取につながる食事の評価指標となり得ると考えられる。
著者
早渕 仁美 徳田 洋子 松永 泰子 黒谷 佳代 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.128-140, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
27
被引用文献数
3

【目的】「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の考え方を食事バランスガイドに反映させ,食事バランスガイドの料理区分別サービング数(以下,「SV」と略)を算定し直し,エネルギー産生栄養素バランスの目標量に合致するか確認する。【方法】日本人の食事摂取基準(2015年版)で設定されたエネルギー産生栄養素バランスの目標量に留意し,料理区分別SVを食品構成の考え方に基づき算定する設定条件を見直した。たんぱく質のエネルギー産生栄養素バランス(以下,「たんぱく質%E」)と穀類エネルギー比率,及び5料理区分以外(菓子・嗜好飲料等)からのエネルギー(以下,「他Ene」と略)の条件を見直し,矛盾のない妥当な設定基準範囲について検討した。【結果】 設定条件の見直しによる基準エネルギー範囲の料理区分別SVの変化と,そのSVに基づき算出したエネルギー産生栄養素バランス(%E)と食塩量の分布を明らかにした。基準エネルギー 1,200~3,200 kcalに,たんぱく質%E16.5~14.5,穀類エネルギー比率38.0~45.0%,他Ene 0~100 kcalを設定して算定した料理区分別SVを用いた栄養価が,最も日本人の食事摂取基準(2015年版)に適合していた。【結論】見直し後の食事バランスガイドSVは,主食が 1 SV程度低値,主菜は 2 SV程度高値に,副菜と牛乳・乳製品,果物は現状とほぼ同値になった。
著者
會退 友美 赤松 利恵 林 芙美 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.181-187, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
16
被引用文献数
8 5

【目的】成人を対象とした食に関する主観的QOL(subjective diet-related quality of life (SDQOL))の信頼性と妥当性を検討する。【方法】平成21年11~12月に内閣府が実施した「食育の現状と意識に関する調査」に回答した2,936名分のデータを用いた(回収率58.7%)。対象者の性別は,男性1,344名(45.8%),女性1,592名(54.2%)であった。SDQOLの項目として作成された6項目について,信頼性の検討では,内的整合性としてクロンバックα係数を確認し,妥当性の検討では,構成概念妥当性と基準関連妥当性を検討した。基準関連妥当性の検討には,生活のゆとり感と生活満足度の項目を用いてSpearmanの順位相関係数(rs)を求めた。【結果】探索的因子分析,確証的因子分析を行った結果,4項目から成るモデルで適合度が良いことが示された(モデル適合度指標:GFI=0.99,AGFI=0.96,CFI=0.99,RMSEA=0.08; 90%CI: 0.06~0.10)。クロンバックα係数は,0.72であり,信頼性も確認された。また,基準関連妥当性の検討では,SDQOLと生活のゆとり感(rs=0.16,p<0.001)および生活満足度(rs=0.38,p<0.001)の間に正の相関がみられ,これらが高いと回答した者の方が,SDQOLの合計得点が高かった。【結論】本研究により,SDQOLの信頼性と構成概念妥当性,基準関連妥当性が確認された。今後は,SDQOLと食生活との関連を検討する必要がある。
著者
赤松 利恵 林 芙美 奥山 恵 松岡 幸代 西村 節子 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.225-234, 2013 (Released:2013-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

【目的】特定保健指導を受診し,減量に成功した男性勤労者を対象に,減量のために取り組んだ食行動を質的に検討した。【方法】対象者は,栃木県,埼玉県,和歌山県,及び大阪府にある5つの職域健康保険組合が委託した機関において,特定保健指導を受診し,4%以上減量した者に研究協力を依頼した。同意が得られた27名を対象に,インタビューガイドを用いた約30分間の個別半構造化面接を実施した。分析は6ヶ月評価時に実際に4%以上の体重減少があった26名を対象とした。逐語録を作成しグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析を行い,本研究では,概念的枠組みの大分類【取り組み方】に分類された食生活に関する内容を食行動と行動技法の観点から,カテゴリ化した。【結果】逐語録から,食行動の観点では,31のサブカテゴリと7つのカテゴリ,行動技法の観点からは,17のサブカテゴリと9つのカテゴリが抽出された。減量成功者の取り組んだ食行動は多様であり,多くの対象者が行動技法を用いて,支援時に立てた目標に取り組んでいた。【結論】減量に成功した男性勤労者は,食行動の実践において行動技法を用いており,その内容は具体的で実行しやすく,勤労者特有のものであった。
著者
衛藤 久美 中西 明美 藤倉 純子 松下 佳代 田中 久子 香川 明夫 武見 ゆかり
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.252-266, 2019-05-15 (Released:2019-06-11)
参考文献数
17

目的 埼玉県坂戸市が2006年より女子栄養大学と協働して取り組んできた,坂戸市全小・中学校における「坂戸食育プログラム」(以下,食育プログラム)の評価を行い,これまでの成果と今後の課題を明らかにすることを目的とした。方法 本プログラムの対象は,小学5年生から中学2年生の全児童生徒である。本研究では,2006年度から2014年度に実施された児童生徒および教師対象の調査データを用い,経過評価および影響評価を行った。食育プログラムの授業実施状況および学習者の反応を把握するための調査(調査A),食育プログラム実施者のプログラムに対する反応として,小・中学校教員の食育プログラムへの関わりによる変化を確認するための調査(調査B)のデータを用いて経過評価を行った。4年間の児童生徒の学習効果を確認するための追跡調査(調査C),各学年の児童生徒の学習効果を確認するための前後比較調査(調査D),4年間の食育プログラム学習後の生徒の状況を把握するプログラム終了後調査(調査E)のデータを用いて影響評価を行った。活動内容 小学校の4年目ならびに中学校の2年目に教員が回答した授業実施状況について,授業が指導案通り「実施できた」クラスが7割以上,教材を「すべて使用した」クラスが8割以上,学習内容を児童生徒たちが「ほぼ理解できた」クラスも5割以上だった。小学校教員ならびに中学校男性教員は,研修会参加や授業実施経験がある者において「食育への関心が高くなった」と回答した者の割合が高かった。児童生徒の学習効果について,4年間の食育プログラムの学習効果はみられなかったが,各学年の食育プログラム学習前後に,具体目標②「健康を考え,バランスの良い食事をとろう」に関する食態度が改善した。終了後調査より,4年度すべて9割以上の中学2年生生徒が,食育プログラムを「学習してよかった」と回答した。結論 食育プログラムは,継続的に実施され,教員の食育への関心を高めることに役立っていると示唆された。児童生徒は,授業に多く含まれる目標「健康を考え,バランスの良い食事をとる」ことに関する食態度で有意な変化がみられた。今後は,学習内容の改善や,継続的な食育プログラムの実施体制の推進の他,学校を拠点とし,児童生徒の家族等他世代へも波及するような食育の検討が必要である。
著者
中西 明美 大久保 公美 高村 美帆 野津 あきこ 廣田 直子 高橋 佳子 佐々木 敏 武見 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.128-140, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

This study identifies the number of servings per dish children usually eat at school and home. We also examined the implications for nutrition education that encourages children to check their own diet by counting the number of servings by using the Japanese Food Guide Spinning Top.A total of 2184 dishes were obtained from 7-day weighed food records completed by 109 school children in the 5th grade in Nagano schools and by 46 children in Tottori schools to analyze the dishes they consumed for breakfast and dinner at home. In addition, a total of 261 dishes from school lunch menus in Tokyo, Saitama, and Hiroshima during either October or November of 2006 were collected and analyzed.The number of servings of fish and meat in dishes at school, and of white rice, vegetable salad, marinated vegetables, stir-fried vegetables, fish, and meat in dishes at home were fewer than the number of servings indicated by the Japanese Food Guide Spinning Top. Although the minimum in the Japanese Food Guide Spinning Top is 1 serving, the children tended to eat dishes in a smaller serving size: 40.6% of side dishes, 37.2% of fruit, 19.7% of main dishes, and 14.9% of staple dishes consumed at home contained between 0.25 and 0.67 serving which were categorized as 0.5 serving. Similarly, 83.3% of fruit, 20.6% of side dishes, 17.1% of main dishes, and 11.6% of staple dishes contained 0.5 serving in school lunches. Servings of bread and noodles for school lunch differed among the regions investigated.Introducing 0.5 serving to the measurements is considered to have been useful to more precisely grasp the children's regular diet. Dish examples in the Japanese Food Guide Spinning Top should be shown with a serving size appropriate for children as well as for adults.
著者
小岩井 馨 武見 ゆかり 林 芙美 緒方 裕光 坂口 景子 嶋田 雅子 川畑 輝子 野藤 悠 中村 正和
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-28, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
51
被引用文献数
1

目的:効果的な減塩対策のためには食塩摂取源を把握する必要がある.食塩摂取源を食品群で把握するだけでなく,家庭内・家庭外由来かを特定し,さらに疾病の指摘の有無別に食塩摂取源の特徴を検討することとした.方法:平成29年神奈川県真鶴町の特定健診受診者を対象とした横断研究を行った.3日間の食事調査により出現した食品や料理を食品群別・加工度別に分類後,家庭内・家庭外(菓子・嗜好飲料・中食,外食)に整理した.その後,食事記録日数の不足者等を除外した213名を対象に,3日間の平均食塩摂取量に占める各々の食塩摂取量の割合(以下,「食塩摂取割合」)を算出した.さらに,循環器疾患の指摘または降圧剤の使用有無別(以下,「循環器疾患の有無別」)に食塩摂取割合を比較した.結果:食品群別の食塩摂取割合が最も高い食品は,男女とも調味料(約60%)であり,このうち,約75%が家庭内,約25%が家庭外であった.循環器疾患の有無別では,中食からの食塩摂取割合は男性の有り群は26.8%と,無し群14.3%に比べ,有意に高かった(p=0.029).結論:地域在住特定健診受診者では,家庭で使用する際の調味料からの食塩摂取割合が高いこと,男性の循環器疾患有りの者は中食の食塩摂取割合が高いことが示された.減塩対策を検討する上で,家庭内・家庭外の視点を取り入れること,男性では中食への減塩対策も必要であることが示唆された.
著者
新保 みさ 赤松 利恵 山本 久美子 玉浦 有紀 武見 ゆかり
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.244-252, 2012
被引用文献数
2

【目的】成人を対象とした体重管理の誘惑場面における対策について,ゲームを通して学習できるカード教材「ベストアドバイザーFORダイエット」を開発した。本稿では,カード教材の解説を行うとともに,保健医療従事者によるカード教材の評価を報告する。<br>【方法】2011年7月~10月に開催された市町村の保健医療従事者向けの研修会に参加した66名を対象にカード教材のゲーム式の使い方を実施した。ゲーム終了後に,質問紙を用いてゲームの感想や遊び方,体重管理の教材としての評価,属性をたずねた。また,質問紙の最後に意見や感想を自由記述で記載する欄を設けた。<br>【結果】解析対象者は62名(女性:57名,91.9%)だった。「ゲームは楽しかったですか」,「体重管理の教材として役立つと思いますか」という問いに対してそれぞれ57名(91.9%),49名(79.0%)が「とてもそう思う/そう思う」と回答した。自由記述では,指導者向け</TS><TS NAME="抄録">の教材として利用したいという意見があがった。一方で,教材や遊び方について,ルールや内容が難しいなどの改善すべき点もあがった。<br>【結論】体重管理の誘惑場面における対策に関する学習教材として,肯定的な意見が得られた。あげられた改善点をもとに,教材の見直しを行い,今後は一般成人を対象に実行可能性および教育効果について,検討をする必要がある。