著者
蛭田 秀一 安藤 詳子 山田 宏 島岡 みどり 今枝 敏彦 小野 雄一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

各種介助作業方法間で、介助者側の負担感と患者側の安心感を比較した。また、負担感や安心感と介助者の筋力との関係を検討した。作業として、ベッド上での仰臥位から長座位への起き上がり介助(5方法;患者の右側から)とスライド板使用の車椅子からベッドへの水平移乗介助(3方法)を設定した。被検者は18人の介助者役(平均年齢21.4±SD0.6歳、平均身長157.9±5.9cm、平均体重52.7±5.8kg)と1人の患者役(身長152.2cm、体重48.9kg)の女子看護系大学生であった。方法によっては、患者支持用補助具として、フレキシムーブ(把手紐付きのたわみ可能な介助板)とフレキシベルト(把手紐付き介助ベルト)を使用した。起き上がり介助における介助者の全身負担感(Borg's RPE値)は「ムーブ使用・右膝ベッド上置・回旋引き起こし」が平均10.8±1.6で、他の4方法に比較してそれぞれ有意に(P<0.05)低かった。「患者右前腕固定・回旋起こし」(11.2±2.1)と「ムーブ使用・回旋引き起こし」(11.6±1.7)はともに、「患者背部持ち上げ起こし」(13.2±2.2)、「対面左肩保持引き起こし」(13.3±2.4)より有意に低かった。7段階で尋ねた患者の安心感については、最良の「ムーブ使用・右膝ベッド上置・回旋引き起こし」と最低の「患者背部持ち上げ起こし」の間のみ有意差がみとめられた。移乗介助における介助者負担感は、「ムーブ使用」が「支持具不使用」より有意に低値を示し、患者安心感は「ムーブ使用」が「ベルト使用」に比べ有意に良好であった。筋力との関係については、「支持具不使用」移乗において介助者の脚力が高いほど患者安心感も高いという有意な相関関係がみられた。本研究の結果、介助方法や補助用具の選択の際には、介助者側、患者側双方からの評価を総合的に検討すべきであることが示唆された。
著者
島岡 みどり 蛭田 秀一 小野 雄一郎 堀 文子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本、スウェーデン、中国の老人介護施設において、介護業務従事職員の作業負担とその関連項目について、アンケート調査およびフィールド調査を行った。アンケート調査(日本325人、スウェーデン84人、中国74人)の結果比較において、日本の職員の作業負担とその関連項目の特徴として、中国とともに作業量が多く作業は通常1人で行われ、さらに疲労度や筋骨格系症状が3か国の中で最も高い状況にあることが示された。スウェーデンの特徴としては、作業量は少なく、2人以上で作業を行う機会が多く、就業継続希望も高いが、仕事や待遇への不満は大きかった。中国の特徴としては、日本とともに1人作業および作業量が多く、特に時間外労働をする割合が高いが、仕事や待遇への満足度は高かった。3種類のフィールド調査(勤務中の上体傾斜角、心拍数、歩数の各測定)のうち、座位作業と休憩時間を除く上体傾斜角測定(日本3人で4回、スウェーデン7人が各1回、中国は実施せず)において、日本の介護職員はスウェーデンの職員に比較して、より深い角度寄りの頻度分布を示した(双方とも看護師1人を除く)。心拍数測定(日本24人、スウェーデン6人、中国15人)では、各国とも個人差が大きく、休憩時間を含む勤務時間中の身体活動強度指標(%HRR)の平均値は26%〜27%とほぼ同水準であった。休憩時間を含む勤務時間1時間当たりの歩数の平均値(日本45人各1日、スウェーデン5人で延べ25日分、中国7人延べ30日分)は、日本(1122歩/時間)が最大で、次いで中国(1026歩/時間)、スウェーデン(779歩/時間)の順であった。本研究において、相対的に多くの日本の介護業務従事職員が、高水準の作業負担と疲労の状況を示したことから、各国の状況も参考にしながら、より適切な作業量や作業方法の目安が設定されるべきであると考察された。