著者
吉村 元輝 濱本 愛 阪口 杏香 安藤 詳子 佐藤 一樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-15, 2022 (Released:2022-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】一般市民の終末期の意思決定の希望とその関連要因を明らかにする.【方法】日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が行った「ホスピス・緩和ケアに関する意識調査2018年」の調査データを二次利用して分析した.成人1,000名対象のインターネット調査で,終末期の意思決定の希望を尋ねた.【結果】予後説明の希望は,54%が余命まで知りたいと回答した.余命告知希望に,若年,がん告知希望,医療者の信頼を重視,死んだら消えてなくなる死生観が独立して関連した.終末期医療の希望は,11%が積極治療,58%が緩和ケアを希望した.緩和ケア希望に,高齢,女性,苦痛がないことや気兼ねしない環境を重視などが独立して関連した.意思決定の主体者の希望は,77%が自分で,11%が家族に決めてほしいと回答した.自分以外主体の希望に,若年,がん告知を希望しない,死を考えない死生観が独立して関連した.【考察】一般市民の終末期の意思決定の希望とその要因が明らかになった.
著者
山下 千尋 杉村 鮎美 佐藤 一樹 安藤 詳子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.197-207, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
36

苦痛緩和のための鎮静はがん患者の治療抵抗性の苦痛を緩和する有効な手段だが,倫理的な問題を生じやすい.鎮静は一般病棟でも施行されており,一般病棟看護師の鎮静に関するケアの実態把握と質向上は急務である.本研究はがん診療連携拠点病院の呼吸器内科病棟に勤務する看護師を対象に,鎮静が施行される終末期肺がん患者に対する看護師の行為・判断・思いについて半構造化面接し,Krippendorffの内容分析により看護師の行為・判断16カテゴリー,積極的感情8カテゴリー,消極的感情5カテゴリーを抽出した.看護師は患者・家族の苦痛緩和のために常に最善策を模索し,その心情に寄り添う努力をしていたが,多職種協働と鎮静に関する話し合いに対する自信と積極性に差がみられた.看護師が自信を持って鎮静に積極的に働きかけることで,患者・家族の意思決定を支援し,苦痛緩和とQOL維持に最適な鎮静手法を検討できる可能性が示唆された.
著者
宇根底 亜希子 河野 彰夫 冨田 敦和 石榑 清 杉村 鮎美 佐藤 一樹 安藤 詳子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.187-193, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【目的】ゲムシタビン(GEM)による血管痛の関連要因を明らかにする.【方法】2014年6月~2015年5月にGEMを末梢静脈より投与した患者の投与記録を抽出し,患者背景および投与状況と血管痛の関連について後方視的解析を行った.【結果】すべての項目に記載のある延べ400件(患者数50名)を対象とした.血管痛は79件(19.8%)に生じており,血管痛の関連要因は,性別(女性>男性),年齢(65歳未満>75歳以上),BMI(25 kg/m2以上>25〜18.5 kg/m2>18.5 kg/m2未満),剤形(液剤>凍結乾燥製剤),投与部位(手背部>前腕部>上腕および肘窩部)であった.【考察】血管痛を避けるためには上腕および肘窩部からの投与が推奨され,血管痛の関連要因を有する患者では,温罨法などの予防策を積極的に講じることが望ましい.
著者
藤本 悦子 安藤 詳子 寳珠山 稔 菊森 豊根 福山 篤司 有田 広美 大島 千佳 永谷 幸子 竹野 ゆかり 間脇 彩奈 佐伯 街子 今井 常夫 阿部 まゆみ
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

リンパ浮腫を来した患肢のリンパ動態とCDTの効果を明らかにし、その成果に基づいて効果的なケアプログラムを開発する。動物とリンパ浮腫患者を対象とした2つのアプローチで行った。前者ではICG-PDEシステムを用い、in vivoでリンパを追跡した。後者ではMR画像から水分の貯留部位を同定した。両者共にCDTを施行し、CDTの効果を明らかにした。両アプローチから、リンパは特異的な分布を示すこと、CDTには浮腫を軽減する効果があることが明らかになった。さらにラットでは、正常時にはないリンパの排出ルートが出現し、これが浮腫の軽減に寄与していることが示唆された。これまでとは違ったケアが考えられた。
著者
前川 厚子 安藤 詳子 神里 みどり 楠神 和男 新藤 勝久 田澤 賢次 門田 直美
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

「ストーマ保有者の生きる意欲とスキンケア行動にストーマ看護サービスが及ぼす影響」について当該3年間にわたり研究した。ストーマケアとそのリハビリテーションは医師からがんや炎症性腸疾患などの病名を告げられ、手術の説明を受けた時が始発であり、回復期、退院後の生活維持期、終末期までのライフスパンを含む。ストーマ保有者への聞き取り、患者会への参加観察と質問紙調査を通して課題を掘り下げ、以下を明らかにした。【成果の概要】1)ストーマ保有者の加齢に伴う課題:65歳以上の比率が60%を超え、生活課題は介護問題から緩和ケアまで拡大していた。虚弱・要介護状態にある高齢ストーマ保有者へのQOL保持、看看連携、訪問看護師と介護職の機能分担、ならびに終末期ケアの在宅基盤整備が重要であった。2)炎症性腸疾患によるストーマ保有者の課題:平成15年全国患者会調査で2,175名中285名(13.1%)、平均年齢39.8±12.9歳で性比1.6:1であった。手術創、ストーマ周囲と肛門周囲皮膚ケアのニーズは81%であった。人生の「生きがいなし」と答えたものが30%を占め、継続ケア提供時にはメンタルサポートが不可欠と考えられた。3)ストーマ保有者のライフサイクルと課題:多様な価値観と人生経験や生活背景について配慮をしながら個別的なケアを提供する必要がある。4)QOL課題:ストーマ造設に関連した治療の成績は向上し、5年無再発生存率は高くなってきたが、主観的な健康状態とストーマの局所状況はQOLと密接な関連を持つので、ケア困難時のマネジメントについては事例の集積と人的資源の整備が必要である。
著者
蛭田 秀一 安藤 詳子 山田 宏 島岡 みどり 今枝 敏彦 小野 雄一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

各種介助作業方法間で、介助者側の負担感と患者側の安心感を比較した。また、負担感や安心感と介助者の筋力との関係を検討した。作業として、ベッド上での仰臥位から長座位への起き上がり介助(5方法;患者の右側から)とスライド板使用の車椅子からベッドへの水平移乗介助(3方法)を設定した。被検者は18人の介助者役(平均年齢21.4±SD0.6歳、平均身長157.9±5.9cm、平均体重52.7±5.8kg)と1人の患者役(身長152.2cm、体重48.9kg)の女子看護系大学生であった。方法によっては、患者支持用補助具として、フレキシムーブ(把手紐付きのたわみ可能な介助板)とフレキシベルト(把手紐付き介助ベルト)を使用した。起き上がり介助における介助者の全身負担感(Borg's RPE値)は「ムーブ使用・右膝ベッド上置・回旋引き起こし」が平均10.8±1.6で、他の4方法に比較してそれぞれ有意に(P<0.05)低かった。「患者右前腕固定・回旋起こし」(11.2±2.1)と「ムーブ使用・回旋引き起こし」(11.6±1.7)はともに、「患者背部持ち上げ起こし」(13.2±2.2)、「対面左肩保持引き起こし」(13.3±2.4)より有意に低かった。7段階で尋ねた患者の安心感については、最良の「ムーブ使用・右膝ベッド上置・回旋引き起こし」と最低の「患者背部持ち上げ起こし」の間のみ有意差がみとめられた。移乗介助における介助者負担感は、「ムーブ使用」が「支持具不使用」より有意に低値を示し、患者安心感は「ムーブ使用」が「ベルト使用」に比べ有意に良好であった。筋力との関係については、「支持具不使用」移乗において介助者の脚力が高いほど患者安心感も高いという有意な相関関係がみられた。本研究の結果、介助方法や補助用具の選択の際には、介助者側、患者側双方からの評価を総合的に検討すべきであることが示唆された。