著者
島田 和之
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.631-640, 2021 (Released:2021-07-03)
参考文献数
49

血管内大細胞型B細胞リンパ腫は,全身臓器の細小血管内に腫瘍細胞が選択的に増殖する節外性B細胞リンパ腫の一型である。生検臓器より十分な腫瘍細胞を得られないことが,病態解明を妨げてきたが,異種移植マウスモデルや血漿遊離DNAを利用することにより,本病型が活性化B細胞型びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に類似する分子遺伝子学的特徴を持ち,免疫チェックポイント関連遺伝子に高率に異常を来すことが明らかとなってきた。治療面においては,rituximab併用化学療法による治療成績の向上と高い二次性中枢神経浸潤リスクを勘案した,R-CHOP療法に高用量methotrexate療法と髄腔内抗がん剤注射を組み合わせた治療を試験治療とする臨床第II相試験が行われ,同治療により良好な無増悪生存割合と低い二次性中枢神経浸潤累積発症割合が示された。病態に対する理解の深化と治療成績のさらなる向上が今後の課題である。
著者
島田 和之
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.352-356, 2015-04-01

血管内リンパ腫intravascular lymphomatosis(IVL)は,主として全身の血管内に腫瘍細胞が増殖する節外性リンパ腫の一型である。そのほとんどがB細胞性リンパ腫であることから,現行のWHO分類1)においては,血管内大細胞型B細胞リンパ腫intravascular large B cell lymphoma(IVLBCL)として記載されている。悪性リンパ腫の一般的特徴であるリンパ節腫脹を欠き,臨床症状も発熱や血球減少など非特異的なものに限られるため,疾患の認知度が向上した現在においても,しばしば診断に苦慮することが多い疾患である。 本稿では,特集テーマ“ICUで遭遇する血液疾患”に合わせて,本疾患の臨床症状,診断法,治療法について概説する。Summary●血管内リンパ腫には特異的な臨床症状はなく,診断に苦慮することが少なくない。●一方,正確な診断がつけば治癒を目指し得るため,本疾患の“知識”と“疑うこと”が大切である。●診断においては骨髄穿刺/生検が多く施行されているが,最近ではランダム皮膚生検,経気管支肺生検が注目されている。●我が国でR-CHOP+R-high-dose MTX療法の前向き試験が進行中であり,結果が待たれる。