- 著者
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清井 仁
- 出版者
- 一般社団法人 日本内科学会
- 雑誌
- 日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
- 巻号頁・発行日
- vol.104, no.6, pp.1180-1188, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
- 参考文献数
- 9
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の発症・進展には,細胞増殖の促進に関与する遺伝子変異と細胞分化を阻害する遺伝子変異が蓄積することが必要とされてきた.次世代シークエンサーによるゲノム解析技術により,DNAやヒストンのメチル化状態などのエピジェネティック制御に関与する遺伝子,RNAスプライスに関与する遺伝子,娘染色体の安定化に関与するcohesin複合体遺伝子など,新たな機能分子をコードする遺伝子の変異が明らかにされ,より複雑な分子機構がAMLの発症・進展に関与していることが示唆されている.しかし,それら同定された変異遺伝子個々の生物学的意義はほとんど明らかにされていない状況であり,さらなる研究と複数の遺伝子変異の協調的意義に対する解明が待たれている.一方,分子病態に基づく診断基準,予後層別化,標的治療薬をはじめとする個別化治療への実用化も進んでいる.本稿では,AMLにおける遺伝子異常と予後層別化システムへの応用について概説する.