著者
米澤 彰純 嶋内 佐絵 劉 靖
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.225-236, 2019 (Released:2019-10-12)
参考文献数
48

本稿は、日・中・韓・英の四言語の文献・資料の検討を通じ、東アジアの「大学」概念・アイデンティティが、この地域に存在する複数言語による多元的な翻訳を伴う思索において、どのように定義され、変容し、そこにどのような展望と陥穽が想定されるかを、その基盤となる国際社会に注目して、19世紀半ば以降の東アジアにおける近代大学の移植が本格化した時期から冷戦期までと、その後現在までとの時代区分をしたうえで検討する。
著者
嶋内 佐絵
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.303-324, 2014
被引用文献数
1

本研究の目的は,日本と韓国の高等教育における英語プログラムへの留学に関し,先行研究による国家的枠組や経済的視点を中心としたプッシュ・プル要因が提示できなかった留学動機を明らかにし,東アジア地域における新しい留学の形を留学生の視点から描き出すことである。研究方法として,日韓の名門国私立大学における9つの英語プログラムで,東アジア諸国からの正規留学生への質的調査を行い,その留学動機と留学の要因を多面的に探った。インタビュー分析の結果,留学に至るまでの要因は,既存の国家の枠組を基本にしたプッシュ・プル要因だけでなく,西洋英語圏における高等教育の優位性に基づくセカンドチャンス型やステッピングストーン型の要因など,分析枠組における「西洋英語圏」との比較軸の必要性が示唆された。また,国際化したキャンパスや事前の留学経験の中で生まれた人々とのつながりなど,ナショナルプッシュ・プル要因の多様化が見られた。さらに,これらの英語プログラムが「地域」という留学空間を含有していることでリージョナルなプル要因が生まれ,高等教育の地域化と「東アジア周遊」という新しい留学の形をもたらしていることも示唆された。このような留学生移動と多様化する留学動機を踏まえ,日韓の英語プログラムがどのようにしてその魅力を打ち出し,留学生を惹き付けて行くことができるのか,さらなる研究と議論が望まれる。
著者
嶋内 佐絵
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

日本における国際的で学際的な学士課程プログラムに関する研究成果を書籍の1チャプターとして準備し、2022年6月に刊行予定である。また韓国およびオランダにおける国際的で学際的な学士課程教育プログラムに関する研究調査をまとめたものの内容をアップデートした上で修正を加え、章執筆と本の編集作業を行った(編著書として2022年6月に刊行予定)。訪問調査自体は2019年のコロナ流行前に行ったものだが、研究会や文献調査を通じて分析やデータの補強を行い、また書籍の編集作業を通して共著者と議論を重ね、学士課程教育をグローバルスタディーズの枠組みで分析するという視点で、韓国・日本・オランダの比較検討を行った。成果物は2022年度の実績として発表予定である。また本研究と関連し、国際的な大学教育プログラムにおける教員のオートエスノグラフィーとして、Yusuke Sakurai, Sae Shimauchi, Yukiko Shimmi, Yuki Amaki, Shingo Hanada & Dely Lazarte Elliot (2021) Competing meanings of international experiences for early-career researchers: a collaborative autoethnographic approach, Higher Education Research & Development, DOI: 10.1080/07294360.2021.2014410 を刊行した。