筆者の「政治学(概論)」を受講する学生は大部分が教員志望者であり、中高の教科書の内容に沿った授業を期待する。しかし、そのような授業は彼らを羅列的な知識の獲得にとどめ、市民性教育の基礎を見失わせるという結果をもたらしかねない。NHK「クローズアップ現代」の放送全文テキストを主要教材のひとつに使った筆者の授業構想と実践は、脱「教科書依存」的な市民性教育の可能性を追求する。本稿は、市民性教育の基礎をシェルドン・ウォリンの「政治的なもの」politicalnessの定義、そして全文テキストを通じた社会の具体的事実の十分な理解、の二つに求め、それに即した授業構想と実践のあり方を提示する。本稿はnews in educationの意味でのNIEの論考であり、それに関心のある読者を想定した内容を含む。