- 著者
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出口 拓彦
- 出版者
- 奈良教育大学次世代教員養成センター
- 雑誌
- 次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.49-59, 2019-03-31
「授業中の私語」の伝播過程に着目しつつ,規範逸脱行動について考えるための授業案を作成した。さらに,大学生を対象に授業を実施し,その効果を実証的に検討した。授業案は,主として心理学に関する知見を基にしたものであった。また,個人間の相互作用が集団全体に及ぼす影響についての理解を深めるために,研究で用いられたシミュレーション用のプログラムも教材として利用した。受講者は心理学関係の専修に所属する学生と教員であった。授業の途中と最後に計2 回質問紙を実施し,受講者28名から質問紙を回収した。分析の結果,授業後の規範意識の方が高かったことから,本授業によって規範意識を向上させうる可能性があることが示された。ただし,授業を「難しい」と感じている者の規範意識はさほど変化せず,規範意識が向上するのは「普通」と考えている者のみである傾向も示唆された。また,自由記述の回答から,シミュレーションに関する事項について興味・関心を持った受講者がいた一方で,その詳細に関する理解が困難であった者もいた可能性が示された。これらのことから,「個人間の相互作用に着目して規範逸脱行動について考える」という授業内容自体は変えずに,その難易度を下げる方法を検討する必要性が考えられた。