著者
稲垣 希望 池島 徳大 田窪 博樹
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.73-81, 2017-03-31

本研究では、東(1997)が考案した問題の外在化技法としての虫退治技法の考え方を取り入れた心理教育プログラムを開発し、B小学校第6学年C学級に全7回導入し、その効果等について検討を試みた。プログラムの効果測定には、栗原・井上(2010)の「学校環境適応感尺度(ASSESS)」、庄司(1993)の「児童のself-control尺度」を用いた。その結果、「生活満足感」「友人サポート」両因子に統計的に有意な差が見られた。また、統計的に有意な差は見られなかったものの、児童らのセルフ・コントロールが若干向上した。これらの結果に加え、児童らが取り組んだワークシートや振り返りなどから、本プログラムの実施により、児童らは「問題を外在化する」スキルを身に付け、お互いに困っていることを「虫」として開示し、さらに、日常生活において学んだスキルを般化できるようになった。
著者
岩本 廣美 板橋 孝幸 河本 大地
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.97-106, 2021-03-31

奈良県南部山間地域の野迫川村では、統廃校後の小学校空き校舎がすべて現存している。本研究の目的は、統廃合の経過や空き校舎の状況を明らかにしたうえで、空き校舎を地域の「生き証人」と捉え、主に野迫川小学校の教育課程及び社会科副読本の検討を踏まえたうえで地域学習の教材として活用していく視点を明らかにすることである。研究の結果、野迫川村では1960年代以降段階的に小学校の統廃合が進み、10校の空き校舎のうち2校が放置されているものの、8校は利活用されていることが明らかとなった。社会科副読本では、統廃合前の学校や地域の様子を簡単に紹介しているとはいえ、児童に空き校舎の地理的・歴史的背景に注目させることで、より深化した地域学習になると考えられる。
著者
河本 大地 豊田 大介 二階堂 泰樹 高 翔 佐藤 絢香 松村 歩美 谷口 空 西山 厚人
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.157-166, 2016-03-31

本稿は、2015年に国が公開した新たなツールである地域経済分析システム(RESAS(リーサス))を、授業で活用するための提案である。RESASを活用することによりどのような授業を行うことができるのかを、中学校社会科(地理的分野)の場合について検討した。①調べ学習としての活用、②授業の入口としての活用、③問題解決学習としての活用の3つについて、計5つの授業案を提示している。検討の結果、RESASの活用はいわゆる「ビッグデータ」をもとにグラフや地図等を容易に作成できる点が大きなメリットとなることがわかった。使い方次第で、知識一辺倒の授業をひと手間で大きく変化させる、強く視覚に訴える授業を構成することができる。また、生徒自らが調べる対象に興味をもって向かうことができる。しかし、教材として用いるには、授業における様々な工夫が必要である。RESASにおける表示の改善も望まれる。
著者
松野 哲哉 河本 大地 馬 鵬飛
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.175-184, 2019-03

本稿は、1960年代の山間地域における「へき地教育」について、奈良県吉野郡十津川村の大字出谷の事例を中心とした調査により、現代的評価をおこなうことを目的とする。玉井(2016)の挙げるへき地小規模校教育の良さを指標とした。本稿で調査した旧十津川村立出谷小学校は、標高約600mの山頂部に位置し、児童は毎日長い時間をかけて山道を上り下りして通学していた。また栄養状態が悪く、学習面のみならず、環境の面でも「遅れた」状態であった。しかし、児童の自然体験は豊かだった。また、授業以外にも教員と子ども、および子ども同士の信頼関係が深いことを示す出来事が多数みられた。例えば、学校で使うための木炭づくりや、水の確保、通学路の整備などである。子どもたちはその生活を通して、リーダーシップや社会性を身につけた。こうした教育を実施するにあたり、保護者のみならず地域社会全体が学校に対し、非常に好意的、協力的であったことがわかる。これにより、教員は一層子どもと向き合う時間を確保でき、深い信頼関係を構築することができたと考えられる。
著者
松野 哲哉 河本 大地 馬 鵬飛
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.175-184, 2019-03-31

本稿は、1960年代の山間地域における「へき地教育」について、奈良県吉野郡十津川村の大字出谷の事例を中心とした調査により、現代的評価をおこなうことを目的とする。玉井(2016)の挙げるへき地小規模校教育の良さを指標とした。本稿で調査した旧十津川村立出谷小学校は、標高約600mの山頂部に位置し、児童は毎日長い時間をかけて山道を上り下りして通学していた。また栄養状態が悪く、学習面のみならず、環境の面でも「遅れた」状態であった。しかし、児童の自然体験は豊かだった。また、授業以外にも教員と子ども、および子ども同士の信頼関係が深いことを示す出来事が多数みられた。例えば、学校で使うための木炭づくりや、水の確保、通学路の整備などである。子どもたちはその生活を通して、リーダーシップや社会性を身につけた。こうした教育を実施するにあたり、保護者のみならず地域社会全体が学校に対し、非常に好意的、協力的であったことがわかる。これにより、教員は一層子どもと向き合う時間を確保でき、深い信頼関係を構築することができたと考えられる。
著者
森口 洋一
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.65-74, 2022-03-31

河崎なつ(1889―1966 河崎ナツ、河崎夏子と表記される場合もある)は、戦前は市川房枝らと共に婦人参政権獲得運動に加わり、戦後は参議院議員も務めた。日本母親大会の創設や原水爆禁止運動にも関わった社会運動家として、広く知られている。その一方で河崎は優れた教育者でもあった。奈良教育大学の前身校の一つである奈良県師範学校女子部を卒業後、母校でもある五條尋常小学校を振り出しに、東京女子高等師範学校や同校の研究科への進学を挟みながら、小樽女子高等女学校、東京女子高等師範学校、東京女子大学、女子英学塾(現在の津田塾大学)、文化学院、白梅学園短期大学などで教鞭をとり、専門とする作文指導には定評があった。河崎について論じた文献は、社会運動家としての側面に注目したものが多く見られるが、河崎の出発点は教育者であり、その終着点も教育者にあった。本稿では河崎の教育者としての歩みをトータルに俯瞰しながら、その原点を探っていった。
著者
河本 大地 吉田 寛 中谷 佳子 河原 和之
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.177-188, 2021-03-31

本稿では、COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の世界的・全国的拡大による学校教育への影響をふまえた、地域学習 (郷土学習) の在り方を検討する。2020年7月19日に、「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) とESD地域学習―『Withコロナ』の経験を共有し『Postコロナ』に活かそう―」をテーマに、Zoomを用いたオンラインシンポジウムを企画実施した。本稿ではまず、このシンポジウムの開催経緯と内容、実践報告を示す。そのうえで、シンポジウム内でおこなわれた議論および開催後の参加者アンケートをもとに、COVID-19の流行の経験をふまえた今後の地域学習の在り方を検討する。結果は3つに大別できる。第一に、地域をめぐるフィールドワークは、地域のリアルな状況を把握するうえで重要であり、関係者の理解を得たうえで積極的に実施する必要がある。第二に、オンライン環境の活用可能性が増していることは地域学習にとって好機になる。第三に、学びの対象としてのコロナ禍が加わった。ローカルな地域の様々な要素とグローバルな要素がリンクしていること、社会構造や政治が私たちの行く末を大きく左右することが実感できる。以上を組み合わせることで、地域学習を通じて、学習者は持続可能な社会の構築を自分事にできる可能性がある。
著者
市村 真優 梶原 篤
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.161-165, 2022-03-31

奈良市教育センターで小学生とその保護者を対象とした「理科教室」を開催している。奈良教育大学で長年実施してきたフレンドシップ事業「夢化学」の後継事業としての位置づけで、2011年度の6月に第1回を実施し、その後毎年複数回にわたって実施してきた。奈良教育大学の学生の教員になるための訓練の一環になればと考えて行っており、令和3年度は計2回実施した。内容は、第1回が「花火のひみつ炎色反応」第2回が「結晶の不思議ホワイトクリスマス」である。今回の内容は奈良市教育センターからの要望に基づいて決め、奈良市教育センターの方々の協力を得て実施した。実施内容を記録するとともに教員になるための準備としての理科教室のあり方や、今後の課題について述べる。
著者
藤崎 亜由子 廣瀬 聡弥
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.85-94, 2022-03-31

本論では、保育内容の領域「環境」の中で身近な自然(動植物)との関わりに焦点を当て、特に自然と関わる際にその促進要因とも阻害要因ともなる虫に注目した。まず、幼稚園教育要領等に示された「幼児教育において育みたい資質・能力」と領域「環境」の「ねらい」を踏まえて、保育者を目指す学生及び保育者が身に着けてほしい知識、技能及び態度を明らかにした。その上で、虫に注目する意義やその教育的活用の方法について整理し、虫との関わりを通して自然や生命の豊かさを実感し、生物多様性への関心と関わりを醸成する保育を目指し、その担い手となる学生に伝えるべき内容を含んだ実践プログラムを提案した。最後に提案した実践プログラムを授業として実施した上で、受講生からの感想を質的に分析し今後の課題を探った。
著者
豊田 弘司
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.2, pp.19-25, 2016-03

研究Ⅰでは、大学生を対象にして、努力して成功した場合、努力せず成功した場合、努力したが、失敗した場合及び努力せず失敗した場合を設定し、その際の感情及び次への動機づけを評定させた。その結果、自分が努力して成功した場合が努力しないで成功した場合よりも、努力しないで失敗した場合が努力して失敗した場合よりも,感情及び動機づけともに高くなることが示された。これらの結果は、努力と結果(成功,失敗)の随伴性の重要性を示唆した。研究Ⅱでは,参加者の個人差要因と,感情及び動機づけとの関係を検討した。その結果、努力して成功した場合は,随伴経験量,自尊感情及び内的統制傾向が高いと感情がより快に評定されることが示された。また、努力と結果の随伴場面においては、過去の随伴経験量が多いと動機づけも高くなることが示された。さらに、結果が悪い場面においては内的統制傾向の高さと動機づけが関連することが明らかになった。
著者
北村 直也 松川 利広
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.1, pp.245-255, 2015-03

「型」は様々な伝統文化の背景を持ちつつ、歴史的時空の中で醸成され洗練され作られてきたものである。オペレッタでも「型」は存在する。その「型」とは「腰」であり、「腰」は「からだ」によってオペレッタの構成要素・環境的なものを主体的・創造的に統合させ、収斂させていくなかで、それらを構造化させる働きを持つ。さらにその表現活動では、「からだ」を鋭敏にする自覚化された身体行為や内なる価値規範により、自分との価値葛藤の場であるオペレッタが、子どもに善き生き方を標榜させ、より高い価値の実現に向かわせる。また、「腰」は日本の伝統文化の粋であるがゆえに、そこで人格を陶冶させる大きな学びを伝統文化の力と共に付与する。
著者
葉山 泰三 谷口 義昭 薮 哲郎 古川 大和 佐竹 靖 市橋 由彬
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.253-258, 2016-03-31

これからの時代を担う子どもたちが生きていくために身に付けなければならないリテラシーは、自ら進んで課題を見つけ、探求し、解決する能力である。奈良教育大学附属中学校科学部は、この能力をロボット学習主体のクラブ活動を通して獲得することを目的として活動している。本報告は、2015年度に取り組んできた活動の中からロボットコンテストに焦点を当てて、その活動過程と成果を示す。本年度のロボットコンテストWorld Robot Olympiad(以下WROと略す)地方大会において、本附属中学校科学部は、レギュラーカテゴリーでは優勝し、全国大会でも準優勝を果たした。また、オープンカテゴリーでは、全国大会で優秀賞を獲得した。この2つの部門で世界大会(於:カタール)に出場した。世界大会に向けては、正確に、短時間にミッションを遂行するロボットの製作、人の指の動きを再現するロボットシステムの構築、奈良教育大学学生の指導による英語プレゼンテーション力の向上に努力した。世界大会では上位入賞を果たすことが出来なかったが、生徒は努力し続けることの意義、独創的なロボット開発の重要性、また大学生は生徒と一体となって目標に向かって活動する達成感を得ることが出来た。
著者
大辻 彩音 河本 大地
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.285-290, 2021-03-31

学校統廃合により学校区が広域化した十津川村の地域学習がどのように変化していったのかを、副読本の分析をもとに明らかにする。大きな変化は、説明文を中心とした読み物教材の形から、インタビュー内容の掲載や、子どもたちに自分たちで調べる、やってみることを促す記述の増えた教科書準拠型になったことである。また、内容の変化としては、歴史についての記述が減り、暮らしに関することや環境・災害に関する記述が増えた。さらに、学校統合前後でも、副読本の内容の変化が見られた。
著者
吉田 寛 中澤 静男 河本 大地 佐竹 靖 竹村 景生 市橋 由彬 新谷 太一 有馬 一彦 山田 耕士
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.249-254, 2021-03-31

奈良教育大学附属中学校ではESDの理念を軸に「総合的な学習の時間」を学びの系統性の中に位置づけて学校づくりを行っている。本稿では、コロナ禍のなか、10月に実施した地域フィールドワーク「奈良めぐり」で得た知見を紹介する。多様性・多文化共生を学ぶコースでは、ゲストティーチャーとの対話(ひととの出会い)を通して、外国人問題や障害者に対する視点の変化、さまざまな生き方に触れた。できないと嘆く前に「たくましく、できることを探し、一歩踏み出す人々」との出会いを契機に、まとめを経て「自分ごと化」していく生徒の変容を分析する。
著者
板橋 孝幸 岩本 廣美 河本 大地
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.161-168, 2021-03-31

本稿では、2019年度学長裁量経費「地域に根ざした教育に関する研究-持続可能なへき地教育の構築を目指して-」の採択を受け、沖縄県のへき地教育について養成、人事、研修のシステムを取り上げてそれぞれの取り組みを明らかにする。2020年2月9日から12日に、沖縄県教育委員会学校人事課、沖縄県総合教育センター、琉球大学教育学部、そしてへき地校勤務教員および勤務経験者を訪問し、聞き取り調査と資料収集を実施してその成果をまとめている。
著者
河本 大地 邱 巡洋
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.277-283, 2021-03-31

奈良県十津川村と北海道の新十津川町は、遠く離れていても密な交流を保っている。1889年に発生した十津川大水害に伴う集団移住を契機とする「母子の村」の縁が、130年の長きにわたり続いている。本研究では、十津川村と新十津川町の交流の履歴について、第二次世界大戦後を中心に概要を把握し整理した。その結果、両地域の交流の歩みは、特徴や状況の異なる4つの時期に区分できることが明らかになった。また、交流は地方自治体どうしにとどまらず、民間団体や学校教育へと広がりを見せており、このことが両地域間の交流の持続可能性を高めている。
著者
増井 壮太 福本 悠人 中村 元彦
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 = Bulletin of Teacher Education Center for the Future Generation (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.6, pp.223-226, 2020-03

一条高等学校の数理科学科では、2年生を対象に課題研究を行っている。その訪問先の研究室一つとして、著者らの研究室も指名を受け、今回は分光光度計を使用した実験を行った。具体的には、様々な色の可視光部分の透過率を測定する実験、日焼け止めクリームの紫外線部分の透過率を測定する実験、ブルーライトカットの製品の可視光部分の透過率を測定する実験などを約1時間かけて行なった。その中で生徒たちは予想から測定、考察まで、活発に議論を行いながら、時に自問自答しながら主体的に実験に取り組んでおり、さらに実験の結果から新たな疑問を持ち、検証しようとする姿勢が見られた。まさに今回の取り組みにおいて、平成30年3月に告示された高等学校の学習指導要領で重視されている「主体的・対話的で深い学び」が実現されていたと考えられる。また、授業の実施後、今回の実験についての感想を述べてもらったところ、「普段見ている物の色についての考え方が変わった」、「もっと様々な色の組成について調べてみたい」という意見が多くみられた。
著者
阪本 司毅 中村 元彦
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.199-207, 2015-03-31

科学的概念の獲得を困難にする要因の1つに誤概念がある。誤概念を修正することは容易ではなく、学習後においても保持されることが知られている。本研究は、誤概念の修正に影響を及ぼす要因として学習者の考える力や自身の思考への態度、理科への関心・意欲・態度などの学習者の性質に関わる要因を取り上げ、これらの要因が誤概念の修正に影響を及ぼすかを調べることを目的とした。大学生を対象に、力学分野の誤概念を取り上げ調査した結果、上述した要因が誤概念の修正に影響を及ぼすことが示唆された。さらに、場合によっては、これらの要因が誤概念の修正を妨げるように働くことも示唆された。
著者
出口 拓彦
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-59, 2019-03-31

「授業中の私語」の伝播過程に着目しつつ,規範逸脱行動について考えるための授業案を作成した。さらに,大学生を対象に授業を実施し,その効果を実証的に検討した。授業案は,主として心理学に関する知見を基にしたものであった。また,個人間の相互作用が集団全体に及ぼす影響についての理解を深めるために,研究で用いられたシミュレーション用のプログラムも教材として利用した。受講者は心理学関係の専修に所属する学生と教員であった。授業の途中と最後に計2 回質問紙を実施し,受講者28名から質問紙を回収した。分析の結果,授業後の規範意識の方が高かったことから,本授業によって規範意識を向上させうる可能性があることが示された。ただし,授業を「難しい」と感じている者の規範意識はさほど変化せず,規範意識が向上するのは「普通」と考えている者のみである傾向も示唆された。また,自由記述の回答から,シミュレーションに関する事項について興味・関心を持った受講者がいた一方で,その詳細に関する理解が困難であった者もいた可能性が示された。これらのことから,「個人間の相互作用に着目して規範逸脱行動について考える」という授業内容自体は変えずに,その難易度を下げる方法を検討する必要性が考えられた。
著者
有馬 義貴
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.53-58, 2018-03-31

古典の学習においては、作品の内容理解ばかりではなく、その作品が古くから享受され継承されてきたものであるということへの理解もまた重要であろう。実際、現行の中学校教科書には、古典の享受・継承への着目を明確に促している教材や、享受・継承に関する学習に資すると思われる資料が少なからずみられる。それらの有効活用が求められよう。例えば、『竹取物語』について、教科書にみられる挿絵や写本・版本の写真等への着目を契機に、江戸時代における川柳など、後代の文化とも結びついた発展的な享受・継承のありようをおさえ、その上で映画や漫画、現代語訳等をみれば、現代においても引き続きそれがなされていることが理解されてくる。学習指導要領などのいう「言語文化を継承・発展させる態度」の育成のためには、そのように、現代に生きる自分たちも古典の「継承・発展」にかかわりうるのだということを実感できるような学習が必要なのではないか。