著者
鈴木 新太郎 遠山 信幸 川人 宏次 住永 佳久 小西 文雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.1534-1536, 2002-06-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は40歳,男性.平成11年12月頃より, 37度台後半の発熱と感冒様症状が出現した.市販薬にて対処していたが,発熱と解熱を繰り返し,体重減少を認めたため,平成12年5月,近医受診.感染性心内膜炎および僧帽弁閉鎖不全症と診断され,保存的治療を行うも軽快せず. 8月10日弁置換術目的で当センター紹介入院となった.術前待機中の8月16日,突然の腹痛,意識消失,ショック状態となり,腹腔内出血による出血性ショック疑われ,緊急血管造影検査施行.脾動脈瘤とその破裂所見を認めたため,同日緊急開腹手術となった.開腹時,約2,000mlの血性腹水と3cm大の脾動脈瘤(破裂)を認め,動脈瘤とともに脾摘出術を行った.術後経過は良好であり,その後の全身状態の改善を待って,二期的に弁置換術を施行し,軽快退院した.感染性心内膜炎に合併した感染性単発性脾動脈瘤は極めて稀であり,現在まで3例の報告をみるのみである.
著者
高澤 一平 川人 宏次 横田 彩子 西村 芳興 市田 勝 新保 昌久 野口 康子 清水 堅吾 茂呂 悦子 落合 久美子 中山 鈴子 関野 敬太 繁在家 亮 鳥越 祐子 上木原 友佳 新藤 靖夫 苅尾 七臣 三澤 吉雄
出版者
自治医科大学
雑誌
自治医科大学紀要 (ISSN:1881252X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.29-34, 2014

症例は51歳男性。感冒症状で発症し前医を受診した。心電図所見等から急性心筋梗塞を疑われ緊急冠動脈造影を施行されたが,有意病変を認めず急性心筋炎の診断で同日当院へ緊急搬送された。来院時循環虚脱状態であったため直ちに挿管し,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)と大動脈内バルーンパンピングを導入した。3日間のPCPSによる呼吸循環補助にもかかわらず心不全,多臓器不全が進行したため,両心補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)を導入した。以後,状態は安定し術後38日目に右心VADから離脱,術後64日目には血液透析からも離脱したが,左心機能は回復せず左心VADに依存する状態となった。術後7か月目に移植登録を行いVAD装着下での移植待機となったが,術後631日目(入院後634日目)に広範な脳出血で失った。本症例は当院で初めてのVAD導入患者であり,その治療過程で,担当医である心臓外科医,循環器内科医を中心として,CCU/病棟看護師,急性重症患者看護専門看護師,皮膚排泄ケア認定看護師,臨床工学士,理学療法士/理学作業士,精神科医/臨床心理士,社会福祉士,薬剤師,管理栄養士,感染制御部からなる治療チームが形成されてゆき,多業種間の垣根をこえたチーム医療の結果,長期生存を得ることができた。当院における今後の重症心不全治療の方針を具体化したという点で意義があると思われるので報告する。