著者
野村 彰夫 森川 公夫 川原 琢也 斉藤 保典
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

局地気象情報取得のための昼夜連続観測可能な可搬型バイスタティックイメージングライダーの開発を行った.システムの基本構成として,送信系はNd:YAGレーザを用いた車載型とした.送信レーザ波長は532nm,繰り返し10Hz,最大出力200mJである.受信系は冷却型高感度CCDカメラに高速ゲート.イメージング・インテンシファイヤーを組み合わせ,高速シャッターを可能とした.高速ゲートとレーザ射出タイミングを同期させることにより,受信散乱光強度を減少することなしに背景光強度を1/5000にまで減少させることができ,昼間観測においても良好なSNRでレーザ光の散乱飛跡を画像として捉えることを可能とした.本システムを用いて4回のフィールド観測を行い,実用化に向けてのシステムの問題点と有用性について検討を行った.3日〜10日間の昼夜連続フィールド観測を実施し,その間,地上から高度3kmまでのエアロゾル,霧および雲底高度の鉛直プロファイルを時間分解能1〜2分でカラーコード化した時間変化をディスプレイ上に表示した.特に最終目標である長野冬季オリンピックのアルペン競技が行われた八方尾根会場におけるフィールド観測では,モノスタティックライダーとの共同観測を10日間実施した.連日の悪天候の中での気象予報が困難を極めていたが,昼夜連続観測を行っていたライダー観測データは,早朝に競技の実施を判断する気象担当官から多いに役立ったと高い評価を受けた.以上から,本研究は当初の計画を完全に実施することができ研究成果をあげることができた.フィールド観測から局地気象情報を得るための有用な観測手段になりうることも実証できた.
著者
津田 敏隆 川原 琢也 山本 衛 中村 卓司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、京都大学のMUレーダーで高感度の流星観測を行い、流星の大気への流入及びその時の中間圏界面領域の大気力学場を詳細に観測し、併せてナトリウムライダー観測や大気光観測による中層大気上部の大気微量成分の増減を測定し、中間圏大気の物質の変動と流星フラックスや大気力学場の関係を探る事を目的とした。特に、流星起源であるナトリウムなどの金属原子層の密度が突発的に増大するスポラディックナトリウム層などの現象にも焦点をあて、その成因を探った。また、その過程で種々の知見が得られた。1. レーダー観測から、群流星などの活動期であっても散在流星のフラックスが多く、群流星の活動によって顕著に流星フラックスが増加することはないと認められた。ただし、出現方向、出現高度、強度などを限定すると群流星でもかなりの増大がある。2. レーダーとライダーの同時観測によって、ナトリウム原子密度の周期数時間以上で位相が下降する変動は、大気重力波によると確認された。さらに冬季に見られる周期12時間前後の同様の変動も、半日潮汐波ではなく大気重力波と判明した。3. レーダーとライダーとの同時観測によって、スポラディックナトリウム層と流星フラックスの関連は見出されず、むしろ水平風速の鉛直シアや温度の局所的な上昇などが絡んでいることが解った。さらに統計的な解析からは、風速シアの強度と相関が高いことが解った。4. 大気発光層とレーダーおよびライダーとの同時観測から、流星フラックスの増大と発光層との関連は見られなかったが、大気発光層中の様々な大気重力波イベントの考察やその統計解析など、大気力学研究上貴重な知見が得られた。5. 1998年のしし座流星群観測では、大流星雨予想の約1日前に明るい流星の大出現がレーダー観測された。なお、当日は天候が悪く光学観測は翌日になったがこのときには中間圏界面に顕著な変動は見られなかった。
著者
川原 琢也 野村 彰夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.285, pp.31-34, 2000-09-07

我々は南極昭和基地において、2000年からナトリウム温度ライダーを用いて高度80-110kmの中間圏界面に存在するナトリウム原子層のドップラー温度を測定している。同種のライダーは現在世界で5カ所しか観測点が無く、昭和基地での観測は下層大気からのエネルギー伝達のみならずオーロラ活動に伴う擾乱を調べる点で非常に意義が大きい。天候の良い時期には連続した7日間に12時間ずつデータが取れた時期もあり、短周期長周期の波動活動を十分に調べられる価値のあるデータが取れている。現在データは徐々に解析がすすんでおり、南極域中間圏界面の温度が明らかになりつつある。