著者
川口 徹
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
pp.1-207, 2019

早大学位記番号:新8505
著者
三浦 雅史 川口 徹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1152-Cb1152, 2012

【目的】 シンスプリント(過労性脛部痛)は多くのスポーツ選手に出現する慢性スポーツ外傷の一つである。主な症状としては脛骨内側部の圧痛や運動痛が挙げられる。2004年、著者はこの脛骨内側部の疼痛軽減を目的に「シンスプリント用装具(以下、本装具)」を開発した(平成22年5月28日特許取得、特許第4520842号)。2005年~2008年、2010年~2011年(第40~43回、45~46回日本理学療法学術大会)には、本装具が疼痛軽減効果を有することを報告した。2005年の第40回大会では、本装具とテーピング療法について比較・検討し、同等の効果を有することを報告した。一方、テーピングは、一般にその効果の有効性は認識されてはいるが、コストがかかり過ぎるといった点を指摘されることも多い。本研究では治療コストに焦点を当てた。本研究の目的は、シンスプリントの治療として、本装具とテーピングをコスト面から比較・検討することである。【方法】 対象はA高校の男女バスケットボール部に所属する高校生とした。男子部員は32名、女子部員は36名であった。その内、シンスプリントと診断されている部員は6名(男子2名、女子4名)であり、本調査対象とした。この6名は薬物療法等の加療を受けておらず、多くが湿布やアイシングといったケアを実施している者であった。彼らに対し、シンスプリント用のテーピングの巻き方を事前に指導した。テーピングの方法は患部を非伸縮性テープで圧迫する方法とし、25mm、50mmのテープを使用した。また、ラッピングのために50mmの伸縮性テープも使用した。事前に一定量のテーピングを提供し、シンスプリント以外の目的で使用しないようお願いした。テーピングの管理は2名のマネージャーにお願いし、不足が生じた場合はすぐに補充できるようにした。調査期間は2011年5月~7月までの3か月間とした。練習日誌から、練習日数やテープの使用状況を1か月毎に調査した。なお、大会や練習試合については本調査から除外した。今回の調査はテープの使用状況から費用を算出し、本装具の価格と比較した。本装具の価格は5,800円であった。【説明と同意】 本研究を実施するためにA高校校長及びバスケットボール部顧問に対し、研究の趣旨を説明し理解を得た。また、調査対象とした6名の部員及び保護者に対し、文書にて研究の趣旨を説明し、同意を得た上で参加して頂いた。【結果】 調査開始1か月目の練習日数は17日でテーピングの費用は52,820円であった。2か月目の練習日数は20日でテーピング費用は51,200円であった。3か月目の練習日数は19日でテーピング費用は49,900円であった。3か月間の総練習日数は56日でテーピングの総費用は153,920円であった。テーピングの総費用を対象者数で除した場合、3か月間に使用した一人あたりのテーピング費用は25,653円となった。さらに、練習日数で除した場合、1回あたりの費用を算出すると458円であった。本装具の価格(5,800円)を1回あたりのテーピング費用で除した場合、12.6回分であった。【考察】 テーピングは多くのスポーツ現場や臨床現場において日常的に使用される。しかし、毎回、練習毎に使用されるため、常にランニングコストが問題となってくる。今回、3か月間の調査から、テーピングと本装具とを比較した場合、テーピングの使用が12.6回分(約3週間)を超えると、テーピングにかかる費用が装具の価格を上回ってしまう結果となった。すなわち、本調査のように仮に3か月間テーピングを使用した場合、約2万円近い費用が余計に支出することとなる。もちろん、テーピング、装具それぞれに利点・欠点があり、決してテーピングを否定するものではない。ただし、同程度の治療効果が期待できるのであれば、コストの低い治療法を選択することは当然である。特にシンスプリントの疼痛については慢性化によって難渋するケースも多く、治療の長期化や再発例が少なくない。よって、シンスプリントに対しては治療効果とコストの両者から鑑みると、本装具は有効な手段になるのではないかと考えている。【理学療法学研究としての意義】 これまで理学療法では「治療効果」に関する研究は多々存在するが「治療コスト」に着目した報告は少ない。今回調査したシンスプリントのように長期間の治療を要する疾患では、治療効果・コストの両者の面から検討することが重要である。本研究を通し、コスト面への意識を提言できた点は意義ある研究ではないかと考える。
著者
三浦 雅史 川口 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1306, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】着地動作はスポーツ外傷の受傷機転として多い動作の一つである。これまで我々は,この着地動作に注目し,前後左右4方向への片脚着地動作について解析してきた。過去の報告では着地動作の成功例についてのみ解析してきたが,失敗例については解析されていなかった。実際のスポーツ場面での受傷状況を考えると,失敗例にその原因を突き止める鍵があるかもしれない。そこで,4方向への片脚着地動作について,どの方向で失敗しやすいのか,またどのようなパターンで失敗しているのかについて検討した。【方法】対象は健常な女子大学生38名とした。対象を女性と限定したのは膝外傷の特にACL損傷は女性に多いとされているためである。片脚着地動作の解析にはデジタルビデオカメラを用い,台から5m前方に設置した。測定した着地動作は高さ30cmの台から前方・後方・右側方・左側方へ片脚着地することとし,測定肢は全て右とした。着地動作時には視線は前方に保ち,上肢によるバランス保持の影響を少なくするために両上肢を胸の前で組むように指示した。まず,対象者は台上で足部を肩幅に広げた立位から片脚となり,片脚立位が安定してから検査者の合図により落下し,着地した。着地方向は前方,後方,右側方,左側方に10回ずつ実施した。着地成功・失敗の判定基準は2秒以内に静止できた施行を成功例,2秒以内に静止できなかった施行や着地後に足部の接地位置が変化した施行,遊脚側である左下肢を床につけてしまった施行を失敗例とした。各着地方向での失敗回数をカウントし,失敗動作を足底接地後2秒以内に静止できなかった施行(静止失敗群),着地後右足底の接地位置が変化した施行(足底離床群),遊脚側である左下肢を床につけてしまった施行(両脚接地群)の3パターンに分類した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は演者が所属する大学の倫理委員会の承認を得て実施した。研究内容について書面で説明し,同意を得た上で研究に参加頂いた。【結果】解析対象とした施行回数は1520回であった(4方向×10回×38名)。このうち,成功回数は775回(全試行の51.0%),失敗回数は745回(全試行の49.0%)であった。着地の方向別の失敗回数は左側方が最も多く210回,次いで右側方200回,後方182回,前方153回の順であった。パターン別では全方向とも足底離床群が最も多く,合計586回(失敗回数の78.7%),前方119回,後方144回,右側方150回,左側方173回であった。次いで多かったのが静止失敗群で合計118回(失敗回数の15.8%),前方25回,後方23回,右側方38回,左側方32回となった。両脚接地群は最も少なく合計41回(失敗回数の5.5%)であった。【考察】これまで我々が検討してきた先行研究では成功例のみを解析対象とし,失敗例は解析対象から除外してきた。しかし,今回の研究結果からも示された通り,片脚着地動作は約半数近くの施行で失敗する動作であることが明らかとなった。このことは片脚着地動作がスポーツ外傷の受傷原因となり得る動作であることを改めて説明する結果ではないかと考えている。また,今回の結果から,前後方向に比べ左右側方への着地動作で失敗していることが分かる。着地動作,特にドロップジャンプに関する先行研究では,前方への着地動作に関する解析がほとんどであり,本研究結果を踏まえると,今後は側方への着地動作に関する解析が重要と考える。失敗パターンでは足底離床群が約80%を占めており,体勢を保持または立て直すための動作が実施されており,スポーツ外傷の発生に関連する可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】従来の動作分析では,解析にそぐわない条件,すなわち失敗例をデータ対象から除外する傾向があった。今回,改めて失敗例にスポットを当てたことで,今後の研究課題のヒントを得た点は非常な重要な意味を持つと考える。
著者
安田 友久 中村 正直 白石 茂雄 増田 麗子 三浦 雅史 川口 徹 和久井 鉄城
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0063-C0063, 2004

【はじめに】2003年2月「第5回アジア冬季競技大会青森2003」の開催に引き続き,3月に青森県と岩手県を会場に「2003ジャパンパラリンピック・アジア国際障害者スポーツ交流大会」が開催された。青森県ではクロスカントリースキー,アイススレッジホッケーの2種目が行われた。この大会において青森県理学療法士会では青森県内の会場に理学療法室を開設し,選手・役員への理学療法サービスを実施した。今回,演者らが直接関わった八戸会場を中心に,今後の対応について検討したので活動内容と合わせて報告する。<BR>【大会概要】八戸会場大会期間:2003年3月6日から9日まで,八戸会場:八戸市新井田インドアリンク,競技種目:アイススレッジホッケー,参加チーム:北海道,八戸,長野,東京,韓国(国際交流大会として参加)の計5チーム,大会参加選手数:74名。試合形式:日本国内4チームでのトーナメント方式,韓国チームは全3試合。<BR>【活動内容】活動期間は大会期間と同様で,競技会場内の一室を理学療法室として開設した。理学療法室には選手の応急処置,コンディショニングなどに対応できるよう,物理療法機器,テーピング材料一式,治療用ベッドなどを用意した。人員配置は5施設から計10名の理学療法士が常時2から3名となるよう配置した。<BR>【活動結果】利用者は全て選手で,利用者のべ人数および治療行為のべ件数は,それぞれ56名,81件であった。治療目的としては疲労回復(40%),リラクゼーション(24%),安静固定(17%),消炎鎮痛(14%)の順になっていた。治療手技としては,マッサージ(47%)が最も多く,次いで超音波(14%),テーピング(12%)の順で多かった。<BR>【まとめ】今大会では疲労回復・リラクゼーションを目的としたコンディショニングに対するサポートが多かった。また,コンタクトスポーツという特性からか,打撲に対するアイシングや安静固定・疼痛軽減を目的としたテーピングの処置も多い傾向にあった。今回の活動を通じて,特にテーピングやマッサージは理学療法士間で技術格差があり,技術面に対する事前の準備不足が考えられた。八戸会場では,試合会場内に理学療法室を開設したが,選手から宿舎での処置希望の声も多く,会場と宿舎で対応できる体制が望まれると考えられた。また,中にはオーバーユースからくる慢性疼痛を訴える選手もおり,超音波やストレッチングの治療手技も有用であった。近年,スポーツ現場に携わる理学療法士が増えつつあるが、障害者スポーツに関わるトレーナーや理学療法士の数は,健常者スポーツの現場に比べまだまだ少ないことが予想される。今後,障害者に対する知識を多く持つ我々理学療法士が障害者スポーツにも積極的に関わり,健常者と同様に理学療法サポートを行っていく必要性があると考える。
著者
長谷川 至 尾田 敦 三浦 雅史 川口 徹 山内 茂寛 村上 三四郎 中村 正直
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0062-C0062, 2004

【はじめに】青森士会では,「第5回アジア冬季競技大会青森2003(以下,アジア冬季大会)」での理学療法サービス提供について,(財)青森アジア冬季競技大会組織委員会(以下,AWAGOC)から正式な依頼を受け,ボランティアとして活動を行った。今回,アジア冬季大会における活動を報告するとともに,活動上の問題点を踏まえて,今後の課題について検討したので報告する。<BR>【事前準備】1999年に青森士会では「冬季アジア大会準備委員会」を設置し,研修会などの開催や,AWAGOCや関連自治体との事前協議を行った。また,プレ大会へ参加することによって実地研修も行った。<BR>【大会概要】期間:2003年2月1~8日。会場:県内6市町9会場。競技種目:6競技54種目。参加国/地域:29カ国/地域。エントリー数:選手,役員計1102名。<BR>【活動概要】期間:2003年1月30日~2月7日。時間:9時~21時,一部の会場では夜間または予約のみ。場所:全会場の各選手宿舎(全9カ所)内に設置されたマッサージ室。人員:青森士会員106名(全会員279名中)。<BR>【活動結果】全会場合計の利用者延べ数は162名であった。日別利用者は,活動開始日から徐々に増加し,競技開始後2日目(49名)に最も多く,その後徐々に減少した。国別利用者延べ数は,計11カ国の方が利用し,カザフスタン(40名),韓国(38名),台湾(20名)が多かった。競技種目別利用延べ数は,カーリング(26名),バイアスロン(26名),フィギュアスケート(24名),フリースタイルスキー(21名)が多かった。主にトレーナーが帯同していない国または競技・選手の利用であった。利用目的は疲労回復(76%)が多く,腰背部(31%)や下肢(30%)に対するマッサージ(57%),物理療法(22%),ストレッチング(14%)が多かった。外傷に対する処置や,練習・競技直前の対応なども数例あったが,活動時間の都合上,対応できないケースもあった。<BR>【問題点と今後の課題】当初の計画ではいくつかの会場に限定して活動を行う予定であったが,大会数カ月前に,急きょ計画を変更して全会場での活動を行うこととなった。そのため,人員や物品の確保に支障をきたしたことや,各会場の状況を把握しきれなかったことなどの問題があった。その他,コミュニケーション能力などの問題もあったものの,選手や大会関係者からは概ね好評を得て活動を終えることができた。<BR> 資質向上,職域拡大,社会貢献などの点から,このような活動に参加することの意義は高いと考える。今後は,個々の資質向上だけでなく,青森県内においても関連機関や団体との連携を深めるとともに,組織的なサポート体制を構築することが重要である。