著者
伊藤 友一 池田 賢司 小林 正法 服部 陽介 川口 潤
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.31, 2014 (Released:2014-10-05)

日常の学習場面では,学習直後の小テストや数カ月後な期末テストなど,時間的 距離の異なる目標が設定され得る。時間的距離の認識の違いは認知処理様式に影響することが示されているが,記憶への影響については検討されていない。そこで,本研究では時間的距離と記憶の関係について検討するために2つの実験を行った。 まず,参加者はテスト時期を1分後 (直後群),または3カ月後 (学期末群) と教示された。その後,実験1の参加者のみ,テストに向けた学習場面をイメージした。続いて,9リスト分の単語を学習した。最後に,両群に対してremember/know判断を伴う再認テストを行った。結果として,直後群に比べ,学期末群で虚再認・ 正再認時のremember反応率が統計的に有意に高いことが示された。これは,時間的距離の遠いテストを想定した場合に,より意味的関連性に基づく符号化処理が行われていたことを示唆している。
著者
川口 潤
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,過去の体験をありありと感じる状態であるノスタルジア(なつかしさ)との関係から明らかにしようとした。近年のエピソード記憶研究においては,単に過去の出来事を思い出すということではなく,自分が経験した出来事をあたかも再体験しているかのごとく思い出す(mental time travel)という意識状態(autonoetic consciousness)が重要であると考えられている。ノスタルジアを非常に強く感じた際には,そうでない場合にくらべて再体験感が強く感じられることが明らかとなった。
著者
川口 潤
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

人は,日常場面において, 過去の音楽や流行ったものと出会うと,単に過去の記憶を想起するだけでなく,「なつかしさ」という複雑な感情を伴った心的状態におちいることがある.本研究はこの点について,以下の側面から検討しようとするものである・ 「なつかしさ」はどのような心的過程を経て生まれてくるのであろうか・ 記憶の機能が深く関わっていることは確かであるが,記憶の進化から考えて「なつかしさ」どのような働きをしているのであろうか本年度は,以下の点について検討を進めた1) なつかしさ(nostalgia)喚起の時間的特性の検討過去約15年にわたるヒット曲を用いてなつかしさ感情が迅速に生起するかどうかを検討した.その結果,音楽提示から3秒弱でなつかしさ感情が生起すること,また自伝的記憶の詳細さ想起との相関は有意であったものの,その成分ですべてが説明されるわけではないことが明らかとなった2) なつかしさ感情生起の神経基盤に関する実験的検討なつかしさ感情生起の際にどのような脳活動が生じているかを明らかにするために,昨年度に引き続き実験参加者を増やしてfMRI実験を実施した.その結果,音楽提示によって自伝的記憶の想起と関わる部位の活動が高まること,またなかでもなつかしさを強く感じた場合と感じていない場合とで異なった領域の活動が見られることが明らかとなったこれらの成果について,Psychonomic Society大会において「Brain activity during feeling nostalgia and retrieving autobiographical memories : An fMRI study using music excerpts」と題して発表を行った.また,なっかしさがどのような心理的機能を持っているかという側面について,「ノスタルジアとは何か:記憶の心理学的研究から」という論文にまとめた