著者
川崎 富夫
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.42-50, 2012-09-19 (Released:2017-04-27)

法学および倫理学が使用する『意思』は、歴史的、言語的、そして法解釈的に見て「意志」のことである。インフォームド・コンセントとは、患者が様々に悩む「意思」に始まり、医師と患者の『共同意思決定過程』を通して、患者が「意志」を自己形成することである。医師と患者双方の行為や行動にあらわれる「意志」をよりどころに、相手が知らない情報(episode)を提供し合いながら相互信頼を得ることである。自己決定できない患者では、家族が患者の「意志」を思いはかって患者を説得し、あるいは家族自らが納得することにより、同意が成立する。その過程において医師が患者に配慮して手を尽くしたかどうかが問題となる。迷って自己決定できない患者では、権威への依存を通して同意が成立する。臨床現場では、権威によって変容したパターナリズムが、ここに存在する。
著者
前田 孝一 康 雅博 川崎 富夫 松江 一 澤 芳樹
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.571-574, 2007-04-25 (Released:2007-05-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

比較的稀な限局的動脈狭窄性疾患のひとつである膝窩動脈外膜嚢腫の 1 例を経験した.症例は63歳女性で右下肢の間歇性跛行にて発症した.右側ABIは0.93と軽度低下を認めた.下肢造影CTにて右膝窩動脈に高度狭窄と血管内腔に突出する嚢胞状病変の所見を認めた.下肢MRI長軸像では右膝窩動脈周囲に縦長の嚢胞様腫瘤を認め,膝窩動脈を狭窄させていた.同腫瘤はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号に描出されていた.短軸像では,花弁状に嚢胞状病変が膝窩動脈を取り囲んでいた.以上より外膜嚢腫と診断した.術前に血管エコーで嚢腫直上にマーキングを施した後,小切開にて外膜切開術を行った.膝窩部の可動域制限を心配することなく良好な経過を得た.本疾患の病態の理解が進み画像診断が向上したことにより,今後さらに低侵襲手術の対象となると考えられる.
著者
駒沢 伸泰 飯塚 徳重 筒井 秀作 川崎 富夫 杉原 勝子 松澤 佑次 門田 守人
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.193-198, 2003-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

現在, 日本の医学教育においては, 医学部の学生を低年次の間に何らかの形で患者と接触させ現実の医療現場を観察させるという早期臨床体験実習が行われ始めている. 高年次における臨床実習では, 医師の視点から見る医療現場という側面が強くなってしまうが, 医学的知識も少ない低年次においては, 医療現場を, 医療者でもなく患者でもない第三者の立場から観察することができる. 今回, われわれは全国数か所の大学の医学生にコミュニケーションを中心とした早期臨床体験実習に関するアンケートを行い, 医学生たちが実習で何を感じたかを調査した. また, 大阪大学で見られた実習後の学生達の自発的な探求活動についても報告する. 早期臨床体験実習は学生達に医療の現場のさまざまな側面を認識させ, 医療における問題意識を与えることができると言えるのではないだろうか.