著者
川崎 興太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.25-33, 2008-10-15
参考文献数
33
被引用文献数
4

本研究は、都市計画決定の処分性と計画裁量に関する判例の状況について整理した上で、伊東市都市計画道路変更決定事件東京高裁判決に関する考察を行うことを通じて、今後の都市計画訴訟をめぐる議論に基礎資料を提供することを目的とするものである。本件判決は、基礎調査の結果が客観性、実証性を欠くために現状の認識及び将来の見通しが合理性を欠くにもかかわらず、これに依拠して都市計画が変更決定されたとして、その違法性を判示した。本研究では、本件判決につき、行政庁が都市計画変更決定に関する計画裁量を行使する上での判断過程について密度の高い統制手法を採ったこと、行政庁に適正調査義務とでも言うべき法的義務を義務づけたこと、行政庁に主張立証責任を要求したことに着目して考察した。最後に、本件判決を踏まえつつ、都市計画訴訟制度の再構築に向けた検討課題として、都市計画に関する策定手続を充実させた上で、都市計画決定又は変更決定自体を争えることにする代わりに、その後にはその違法主張を認めないという都市計画に特有の訴訟制度を創設することが検討されるべきであることを提言するとともに、都市計画制度の再構築に向けた検討課題として、基礎調査の充実と都市計画決定に至る判断過程の客観的明示の義務化が検討されるべきであることを提起した。
著者
續橋 和樹 川崎 興太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.215-223, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は、2017年9月に実施した訪問面接式アンケート調査の結果に基づき、避難指示解除後の浪江町中心市街地における生活環境の復旧・再生状況と帰還者の生活実態を明らかにするものである。本研究を通じて、以下のことが明らかになった。(1)浪江町への帰還率は非常に低い値であり、ほぼ全ての家屋が空き家である、(2)商業環境や医療環境は現在でも、十分に復旧・再生していない、(3)帰還者は高齢の夫婦・単身世帯が多い、(4)町にスーパーや総合病院を求める声が多い。以上を踏まえて、被災者支援策を打ち切ることで帰還を強いる単線型の復興政策を転換することが必要であり、帰還者と避難者の双方の生活再建に向けた複線型の復興政策を確立・充実することが求められていることを指摘している。
著者
川崎 興太 大村 謙二郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.271-276, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
23

本研究は、長期間未整備の都市計画道路をめぐる都市計画訴訟、具体的には都市計画制限に基づく建築不許可処分の取消訴訟及び都市計画制限に対する損失補償訴訟の判例について考察することを目的とするものである。都市計画の存立基盤は、原理的には、長期的安定性・継続性と可変性・柔軟性との緊張関係の上にありながらも、実際には建築自由の原則を尊重する観念の反対論理として、ひとたび都市計画決定を行って財産権に制限を課したならば、その後の都市計画の運用は慎重に行うべきだとの思考に固執するあまりに時間の観念が稀薄になり、いかに社会経済情勢や環境諸条件等が変化しようとも、既決のものは所与不変の事実として自明視され、適切に見直しが行われなかった場合が少なくなかったように思われる。これは、本質的には都市計画の効力が持続することについての実体的かつ手続的な合理性の問題だと考えられる。本研究では、こうした観点から、今後の都市計画道路の整備及び見直しを進める上での検討課題として、都市計画変更義務の的確な遂行と事業期間明示型都市計画制度の導入、都市計画基礎調査の内容の充実、都市計画提案制度の活用要件の拡充を提起している。
著者
川崎 興太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.50-61, 2012-04-25 (Released:2012-04-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は、平成12年に創設された市町村指定の準都市計画区域と平成18年の法改正後における都道府県指定の準都市計画区域の実績を分析し、都道府県の準都市計画区域制度等に関する認識を明らかにした上で、九州北部3県による構造改革特区の提案とこれに対する国土交通省の回答をもとに準都市計画区域に関する法制度上の問題点について考察することを通じて、準都市計画区域の指定実績と法制度上の問題点に関する知見を得ることを目的とするものである。本研究を通じて、(1) 市町村指定の準都市計画区域は、4区域(4市町村)の実績にとどまったが、都道府県指定の準都市計画区域は大規模集客施設の立地制限を主たる目的とするものを中心として44区域(9道県)となっていること、(2) 都道府県は、少なからず「土地利用規制が課されるばかりで、都市計画事業が行われないことなどから、住民の理解を得ることが困難であること」や「用途や規模の違いにかかわらず接道義務規定等の集団規定が一律的に適用され、既存不適格建築物などが発生すること」などを準都市計画区域制度のデメリットとして認識していること、(3) 準都市計画区域に関する法制度上の問題点は、(1)都市計画区域外における原初的な都市的土地利用規制の不在、(2)市街地外において緩くなる都市的土地利用規制の論理構成、(3)都道府県の全域を対象とした都市計画に関する基本方針の欠如にあることが明らかになった。