著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.328-340, 2013-01-01

本研究ではオレゴン州スプリングフィールド市憲章,コロラド州憲法第2修正およびシンシナティ市条例という3つの同性愛差別法へのアメリカ図書館協会の反対運動に焦点を当て,図書館専門職団体としての協会の社会的責任をめぐる議論を検討した。差別法に対する協会の姿勢は明確であり,一貫して同性愛差別法への対抗的活動を行った。また同性愛差別を図書館専門職の問題として認識し,反差別に取り組むことが協会内で了解されていた。考察の結果,専門職団体としての協会は同性愛者保護を専門職の価値観に内包していたことが明らかになった。
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.2-15, 2009-05-01

本稿は建築史研究者で文化景観学,子どもの空間,図書館建築などに関心を持つアビゲイル・ヴァンスリックの図書館史研究を研究史的に取り上げたものである。本稿では代表作『すべての人に無料の図書館』を含めて,ヴァンスリックの研究の特徴を2つの側面から明らかにした。従来の図書館建築史研究やカーネギー図書館の研究史の中での斬新さと特徴,および図書館というスペースに注目しての女性や利用者からの視点による図書館の捉え返し。そうした特徴を指摘しつつ,いっそう盛んになってきている「場としての図書館」への歴史的研究の貢献の可能性と,この視点の重要性を指摘した。
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.328-340, 2013-01-01 (Released:2017-05-24)

本研究ではオレゴン州スプリングフィールド市憲章,コロラド州憲法第2修正およびシンシナティ市条例という3つの同性愛差別法へのアメリカ図書館協会の反対運動に焦点を当て,図書館専門職団体としての協会の社会的責任をめぐる議論を検討した。差別法に対する協会の姿勢は明確であり,一貫して同性愛差別法への対抗的活動を行った。また同性愛差別を図書館専門職の問題として認識し,反差別に取り組むことが協会内で了解されていた。考察の結果,専門職団体としての協会は同性愛者保護を専門職の価値観に内包していたことが明らかになった。
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.194-206, 2003-11-01

1977年にマサチューセッツ州ボストン市の近郊の町チェルシーで,教育委員会が学校図書館蔵書を除去した。それにたいして生徒,教師,図書館員,市民グループが,生徒や教員の修正第1条の権利を侵害していると提訴し,当該図書を図書館に戻すように訴えた。このチェルシー事件は1978年に判決が下され,原告勝訴となった。本稿はこの事件の経過,判決を紹介するとともに,判決の意義を考察する。そして学校図書館蔵書をめぐる諸判決なかで,生徒の知る権利を正面から認めた最も積極的な判決と位置づける。
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.328-340, 2013-01

本研究ではオレゴン州スプリングフィールド市憲章,コロラド州憲法第2修正およびシンシナティ市条例という3つの同性愛差別法へのアメリカ図書館協会の反対運動に焦点を当て,図書館専門職団体としての協会の社会的責任をめぐる議論を検討した。差別法に対する協会の姿勢は明確であり,一貫して同性愛差別法への対抗的活動を行った。また同性愛差別を図書館専門職の問題として認識し,反差別に取り組むことが協会内で了解されていた。考察の結果,専門職団体としての協会は同性愛者保護を専門職の価値観に内包していたことが明らかになった。
著者
久野 和子 川崎 良孝 吉田 右子
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、21世紀に入って評価が高まっている「場としての図書館」の価値とその展開を歴史的、実証的に解明している。すなわち、欧米の学際的、先進的な「場としての図書館」の先行研究と国内外における公立図書館、学校図書館、児童図書館における広範な実地調査、資料収集に基づいた統合的な研究である。これからの日本の図書館は、利用者の情報交流、生涯学習、市民活動、社会関係資本、豊かな日常生活を効果的に創出・支援できる「第三の場」となるべきことを提言した。
著者
川崎 良孝
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
no.59, pp.25-49, 2013

Library and information scholars have largely ignored researching, the American Library Association (ALA) Code of Ethics, especially from a critical historical perspective. However in today's digital post 9/11 environment, library ethics is even more important for library practitioners and researchers alike. This paper explores the history of the Code of Ethics which was formally adopted in December 1938 by ALA Council. In addition the author compares the Code of Ethics with the Library Bill of Rights (LBR) adopted in 1939. Although the two documents were approved only a year apart, this paper finds a major difference between the thinking behind them. In summary, we can call the LBR a forward-thinking plan for a new model of librarianship, whereas the Code of Ethics was built on an earlier model of professional expectations. Perhaps because of this frame, the 1938 Code of Ethics has been nearly forgotten compared to the attention lavished on the LBR.
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
図書館学会年報 (ISSN:00409650)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.49-60, 1977 (Released:2022-10-07)

This paper is divided into three sections. (1) The summary of the four types of libraries which Bray proposed “parochial”, “provincial”, “decanal” and “layman's” libraries. (2) The influence of his idea of lending libraries on the history of public libraries. (3) The expansion of his design by Kirkwood, “the father of free libraries”. Conclusion 1. Bray's idea of lending libraries open to the public is particularly important in the history of the public libraries both in England and America because it was accompanied by an increasing emphasis on public use. 2. Bray's Library was a significant step toward the development of the modern public library which began in the mid-nineteenth century.
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.200-214, 2016-09-01 (Released:2017-06-26)

本稿はウェイン・A.ウィーガンドが2015年に刊行した『生活の中の図書館』(Part of Our Lives: A People's History of the American Public Library, Oxford Univ. Press, 2015)を取り上げる。この本は研究にもとづくアメリカ図書館の通史であり,その視点,方法,解釈の点で,これまでにない斬新な業績になっている。本稿では,同書の内容,図書館史研究上の意義を明らかにし,第4世代図書館史研究の到達点を示す。そしてウィーガンドの図書館史解釈を文化調整論と名づけた。
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.206-223, 2014-09-01

本稿はフロリダ州で生じた絵本『キューバ訪問』をめぐる事件を取り上げて,経過,連邦地裁や控裁の判決を実証的に記述する。親からの除去の申し入れにたいし,教育委員会は除去を決定した。それを不服としてアメリカ自由人権協会が提訴し,控裁は教育委員会の措置を支持した。判決はピコ事件判決(1982)が示す除去の基準である「教育的適性」を梃子に,絵本の記述の誤りや省略を理由に原告の訴えを退けた。本稿は「教育的適性」という基準の曖昧さを指摘するとともに,プレジデンツ事件(1972)以降の学校図書館蔵書をめぐる裁判事件の系譜に照らして,本判決の思想的な意味を探っている。
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.174-188, 2019-09-01 (Released:2019-10-25)

第2次大戦後にアメリカ図書館協会が採択した1948年版『図書館の権利宣言』は,新たに2つの条を設け,検閲に反対するとともに,検閲には関係団体と協力して対抗すると宣言した。図書選択の原理を示した従来の『権利宣言』を乗り越え,憲法が保障する表現の自由の擁護を打ち出したという点で,1948年版は高く評価されてきた。1948年版の原案作成者はヘレン・E. ヘインズだが,ヘインズの原案から削除された部分があった。それは少数者の権利を重視するという内容の文言であり,この文言は1939年初版に盛り込まれてもいた。本稿は1948年版の作成過程を追求し,検閲にたいする明示的な積極面とともに,黙示的に広範な社会的問題を捨象したことを指摘することで,1948年版の理解に厚みを加える。